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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

転生したら悪役姉弟の姉でした。未来に処刑される予定なので義弟と協力して一流の魔法使いになって回避してみせます!

作者: 天の葉

「申し訳ございません!」

女の人の鬼気迫る謝罪の言葉。

一体何があったのか。昨今問題になっているカスハラかしら? 令和の時代にやめてほしい。

キョロキョロと辺りを見回すと見慣れない部屋の中にはこちらをみてニヤニヤ笑っている熟年の男性と女性。そして綺麗な顔をした男の子がテーブルに座っていた。

日本らしくない部屋と人々に戸惑っていると、

「どうか!お許しください!」

また女性の切羽詰まった声が部屋に響く。こんなに謝っているのだから許してあげればいいのに。

そう思い、ふと気付く。

謝っている女性はメイド姿で、私の真横に立っている。

さらに私の膝は濡れていて、床にはコップが転がっている。


あ、コレ。私が謝られてるんだ。


気付いて真っ青になる。

早く何か言ってあげなきゃ。

「い、いいのよ。誰にだって失敗はあるもの」

「え?」

「水をこぼされたくらい何とも思わないわ。そんなに気にしないで」

安心してもらえるように笑顔を向けると、涙と鼻水まで出してしまっていたメイドの女性が驚愕の表情で固まる。

「メルアディア、貴女どうしたの? メイドにどんな罰を与えるか楽しみにしているのに」

「全くだ」

不満そうな熟年夫婦の言葉になんてことを言うんだと反論しようとして、今度は私が固まる。

「メルアディア?」

「自分の名前が何かおかしい?」

「私がメルアディア?」

「そうに決まっているだろう。何を言ってるんだ」

「……」

私、乙女ゲームの悪役姉弟の姉になってるぅぅううう!

あまりのショックに私はその場で昏倒したのだった。


▲▲▲


気付くと今度はベットの中。

どうやら部屋に運んでもらえたらしい。

天井を見つめながら、どうしてこうなったのか考える。

私は日本で成人している大人だ。昨日無事に仕事を納めて待ちに待った年末年始の長期休みが始まってお酒を飲んで……そこから記憶がない。

え? 死んだってこと? お酒で? 

死因は分からないが、頬を引っ張ると痛い。どうやら夢ではなさそうだ。

お酒とゲームが趣味の私は今の自分が誰だか知っている。

メルアディア・エルザス。ハマっていた乙女ゲームの悪役令嬢。

未来に処刑が決まっているキャラクターだ。

私、日本でも寿命を全うできなかったぽいのに、別の世界でも死ぬの?

神様。私何か悪いことしましたか?

段々と実感が湧いてきて、じわりと目の端に涙が滲む。

すると、ドアが控えめにノックされた。


▲▲▲


「お、お嬢様、失礼いたします」

先ほど怯えきっていたメイドの女性が真っ青な顔で部屋に入ってきた。

「お水をお持ちしました」

また震えている彼女の気持ちが今なら分かる。

悪役令嬢メルアディアはメイドのちょっとしたミスですら許さず、見るに堪えない罰を与えていた。

メルアディアのせいで辞めさせられた使用人は数知れずだ。

その張本人になってしまっている私が言うのもなんだが、怖くてたまらないわよね。

「ありがとう。助かるわ」

お礼を言っても余計に怖がらせてしまうかもと思ったけれど、メイドの女性の震えが止まった。


▲▲▲


「お嬢様はお優しい方なのですね……噂と違って良かった」

「やっぱり噂はとんでもないわよね」

「すみません!」

「いいのよ。私自身ちょっと混乱してて、良かったら話し相手になってくれない?」

「わ、私でよろしければ喜んで」

メイドの彼女の名前はサラ。数日前にメイドとして採用されたばかりだそうだ。どんな職場でも雇われたばかりは緊張するうえに、就職先が悪役一家の屋敷だなんてブラック企業に違いないから大変よね。

それでもお給料の高さから就職したい人間は多いそうだ。

サラに確認したかったのは、今の私の年齢。

「メルアディアお嬢様は11歳とお聞きしておりますが、忘れてしまわれたのですか?」

「あ、あはは。そうなの。変よね。でも教えてくれてありがとう」

「変じゃないですよ。お力になれて良かったです」

今の私は11歳。

メルアディアが処刑されるのは18歳だから、まだ7年もある。もしかしたら処刑を回避できるかもしれない!



▲▲▲



次の日。少しは眠れることが出来た。それでも鏡に映る自分は赤い髪に紫の瞳のどう見てもメルアディアの少年期の容姿で目眩を覚えた。

休んでいる暇はない。早急に向き合わなければならないことがある。

それは義理の弟のことだ。


彼の名前はゼフィリヌス。

確か10歳の時にエルザス家に養子として迎えられたってキャラクター紹介に書いてあったからエルザス家に来たばかりなのではないだろうか?

彼もまたメルアディアに負けず劣らずの悪役で、未来には凶悪な魔法使いになり大勢の人を殺害する極悪人になり、最後は処刑される。

ただ昨日見た彼は大人しく、人畜無害に見えたのだ。

「よし。行くわよ」

ゼフィリヌスの部屋の前で気合を入れる。

ノックをすると小さな声で「はい」と返事があった。


▲▲▲


ゼフィリヌスは銀髪に赤い目の美貌の持ち主。悪役特有の危険な魅力に魅了された女性ファンが多かった。

しかし今目の前にいるゼフィリヌス少年は可愛らしさしかない。

「ゼフィリヌス。私と話したことってあったかしら?」

公式の乙女ゲーム内ではメルアディアとゼフィリヌスは共に行動はしていなかったけど実際はどうだったのかな?

恐る恐る質問をするとゼフィリヌス少年は首を横に振った。

「話したことない」

ハッキリ告げられた事実に頭を抱える。いやいや迎え入れた時くらい挨拶もなかったってこと? 酷くない?

「挨拶しなくてごめんなさい」

今更だけど謝る。

公式の情報では彼は両親を亡くし、身寄りがないところをエルザス家に引き取られたそうだが、それもこれもゼフィリヌスの魔力目当てであの強欲そのもののエルザス夫婦が目を付けただけのこと。決して慈善事業ではない。

「ご両親を亡くして心細いわよね。少しは慣れた? ご飯は食べれてる? 眠れてる?」

この屋敷にきてどのくらい経っているかも私には分からないがゼフィリヌスを質問攻めにしてしまった。

案の定、俯いていたゼフィリヌスは顔を上げてきょとんとした顔をする。

「……どれも出来てない」

戸惑いつつも答えてくれた少年はやはり今は少しも悪役じゃなかった。


▲▲▲


初めてゼフィリヌスと話した時から数カ月。私はゼフィリヌスとなるべく一緒に行動するようにしていた。

「美味しい!」

「良かった」

時間があればパンケーキを作り、ゼフィリヌスに振る舞っている。

メイドのサラの力を借りてだけれどもね。両親や他の使用人に見られると面倒だからサラに厨房に人のいない時間を教えてもらいこっそり作っている。

パンケーキを食べ終えると、今度はゼフィリヌスを連れて屋敷の書物庫に移動するのが決まりになってきていた。


「ゼフィリヌス先生。今日もよろしくお願いします」

「先生って、姉さんの方がしっかりしてることも多いのに」

「とてもじゃないけど勉強も魔法もゼフィリヌスには敵わないもの」

ゼフィリヌスは私のことを姉さんと呼んでくれるようになってくれた。そして話していけばいくほどゼフィリヌスが天才だということが分かった。大人でも読むのが難しい魔導書を軽々と読み、魔法を使えるのだ。

私とて転生者だからもしかして、私も負けないくらいすごい力があったりして? とか思っていたのだが魔力は平凡だった。

しかし根気よくゼフィリヌスが教えてくれているので初級の魔法は少しずつ使えるようになった。

黙々とゼフィリヌスに読み方を教えてもらった魔導書を読んでいると、ゼフィリヌスに声をかけられる。


「姉さんって、魔法の勉強は特に一生懸命だよね? 魔法が好きなの?」

「魔法は好きだけれど、それだけじゃないわ。一流の魔法使いになって独り立ちしたいの」

「独り立ち? エルザス家のお嬢様なのに?」

不思議で仕方ないと言った様子のゼフィリヌスに向き直る。

「ゼフィリヌス。賢い貴方なら分かっているだろうけど、私達の両親は良くない人間よ。未来にエルザス家はなくなると思うの」

実際エルザス姉弟が処刑されると同じく、あの強欲夫婦も公式で処刑され、エルザス家は消滅するのだ。

「だから、私達は独り立ち出来るように力を身につけましょう。自分の力で生きていけるように。ね?」

「……僕は姉さんと一緒にいたいよ」

「っ」

キューンと胸が締め付けられる。

「ゼフィリヌス!」

堪らず可愛い弟を抱き締める。

心細い顔をするゼフィリヌスが可愛くて仕方ない。天才魔法使いでもまだまだ子供なのだ。

「大丈夫よ。何があっても私はゼフィリヌスと一緒にいるから。あ、でもいつかゼフィリヌスに大切な人が出来たら離れるけどね」

「僕は姉さんさえいてくれたらいいよ。姉さん以外に大切な人なんて出来ないよ。だから、ずっと一緒にいて」

「うふふ。そう? じゃあゼフィリヌスからもう一緒にいなくていいよって言われるまでは一緒にいることにするわ」

「約束?」

「ええ。約束よ」

ゼフィリヌスと指切りをし、子供同士の可愛くて優しい約束をした。


▲▲▲




あれからまた時が経ち、いよいよ公式が動き出す直前まで来た。

公式の乙女ゲームではヒロインは転生してきて、この世界の魔法学院に入学してくる。

そこで私達エルザス姉弟や、攻略対象者と出会うのだ。

魔法学院への入学は回避出来ない。何故なら一流の魔法使いになる条件が学院の卒業なのだ。


「必ず一流魔法使いになってみせるわ」

「姉さん。僕が入学するまで無茶しないようにね?」

「ええ。分かっているわ。ゼフィリヌスこそ少しの間離れるけどあの親達から嫌なことを言われたらすぐに連絡して来て。お姉ちゃんが飛んで来るからね!」

「もうそこまで子供じゃないよ」

すっかり背も高くなり、公式に近い姿になってもゼフィリヌスは可愛い弟だ。

公式と違い、良好な姉弟関係を築けたのだ。義弟と協力して必ずや一流魔法使いになって処刑を回避してみせます!



悪役姉弟書いてみたくて書いて見ました。

読んでくださってありがとうございます。

続き読みたいお声ありましたら続き作成してみたいとも思っております。

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