無

箱

寂れてしまった、この島の

朽ちてしまった、この家の

時が止まった、あの部屋の

使わなくなった、引き出しに

削れなくなった、鉛筆と

壊れてしまった、この鍵と

吠えなくなった、鶯と

笑わなくなった、君の顔。

はいはい皆さん時間です。

隅から順に並んでね。

慌てないでも順番は、

夢と違って逃げやしない。

壊れてしまった君たちを、

小さな箱に入れてみた。

小さな小さなその箱を、

大事に抱えて目を閉じる。

そしたら君のこの顔は、

あの時みたいに笑うかな。