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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』  作者: 橋本 直
第十九章 アクシデントだらけの練習開始

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第81話 古びたピッチングマシン

 ユニフォームに着替えた野球部員達は思い思いに素振りやキャッチボールを始める。真新しい芝の外野の本格的なグラウンドでの練習は部員の誰もが楽しみにしているところだった。


「誰か!こいつをマウンドまで運べ!」


 かなめの叫び声がグラウンドに響いた。その背後にはワゴン車に乗ったままの古びたピッチングマシンが鎮座していた。


「本当にそれ使うんですか?仕方ねえなあ……じゃあみんな運ぶぞ」


 島田が整備班員の部員達に声をかけるとそれまでの笑顔を消した部員達はノロノロとピッチングマシンに向って歩いていった。


「なんだよ、せっかくのマシンだぞ。もっと嬉しそうな顔しろよ」


 一人ご満悦のかなめに恐怖を感じて島田達はサビだらけの古びたピッチングマシンをマウンドの手前まで運んだ。


「本当に動くんですか?これ」


 部員の誰もがマシンに近寄ろうとしないので仕方なく誠がピッチングマシンに歩み寄るのを見て、他の野球部員達ものろのろとその後ろに続く。


「動くんすか?本当に」


 さびたスプリングを見ながら島田がそう言ってマシンを押し始める。


「一応140キロゾーンに有ったマシンだぞ。そんだけのスピードが出なきゃあのおっさんが詐欺師だったことになる」


 かなめは自慢げにそう言うとマウンドの前に設置されたマシンを眺めていた。


「じゃあ、試運転だ。アメリア!テメエが受けろ!まずは試験運転だ」


 指名されたアメリアも明らかに不服そうな目でかなめをにらみつける。


「かなめちゃんそれは無いんじゃないの?確かに私が一番キャッチングは上手いけど私は四番サード以外はやらないって言ってるじゃないの!それにそんな旧式のマシン。どこに球が行くか分からないわよ」


 突然かなめから指名されたアメリアがめんどくさそうに抗議する。


「アメリアさんキャッチャーもできるんですか?」


 誠は隣でパチンコをあきらめて屈伸をしていたカウラに声をかけた。


「西園寺としてはクラウゼに正捕手を務めてほしいらしいがな。確かにキャッチャーとしての腕はクラウゼが一番上だ。しかし、アメリアが野球部は四番サード以外のポジションを頑として受けようとしない。したがってうちのキャッチャーは日替わりで、アメリアと比べるとどうしても格落ちになる」


 アメリアがそういうところはわがままなのは誠も知っていたのでなんとなく納得できた。


「はあ……四番サードですか。確かに響きがいいですからね、それ」


 キャッチャーが野球では重要だと知っていて自分の球を受けるにはちゃんとしたキャッチャーを用意してもらいたい誠はアメリアのわがままが許されるのかと腑に落ちない様子でため息をついた。


 アメリアは仕方なくレガースをつけてキャッチャーの姿で本塁後ろに座った。


「じゃあ行くぞ!スプリングは最強出力……」


 かなめは容赦なくマシンを操作して最大球速が出るように調整する。


「ちょっと待ってよかなめちゃん!こんなサビだらけの古いのフルパワーで動かして大丈夫なの?そんなの受ける身になってよ」


 最高時速に設定しようとスプリングをいじるかなめに向けて呆れたような調子でアメリアが抗議する。


「大丈夫だって!オメエの技術なら捕れる!じゃあ行くぞ」


 そう言うとかなめは軟球をピッチングマシンに投入した。


「まともな球が出るんですかね。まあバッティングセンターの荒れ球は中古の何球を使ってるから滑って変なところに球が行くのがほとんどですから。あまり使ってないうちの用意した球なら大丈夫でしょ」


「西園寺のことだ。期待しない方が良い。それに何かが起きそうな気がする」


 野次馬を気取る誠とカウラはアームに軟球が装填される様を静かに見守っていた。


 やがて鈍い作動音と共に高速の軟球が発射され、ど真ん中にミットを構えるアメリアの手に軟球は捕球された。


「ほらな、ちゃんと動く。サビてるのと機能は関係ねえ」


 得意げにかなめはそう言って笑った。


「一球だけじゃ分からないでしょ……カーブを投げてみて」


 納得できないアメリアは捕球した軟球を何かあった時の為に隣に立っていた看護師のひよこに渡すと再びミットを構えた。


 またピッチングマシンはうなりを上げ、見事な軌道を描いて落ちる球をアメリア向けて発射する。


「できるわね……動くんだ……へー」


 感心したようにアメリアはそう言うと再びミットを構えた。


「だから言っただろ?サビと機能は関係ねえって。じゃあ十球ぐらいは慣らしをやって、そこからは誰か打席に立ってもらうからな!期待しとけよ!」


 かなめは快調に動く古びたピッチングマシンを自慢げに眺めながらそう言ってこのマシンを侮っていた野球部員達を眺めた。




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