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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』  作者: 橋本 直
第二章 多額の『福利厚生費』を捻出できる理由
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第7話 昼休みの整備班の様子

 『特殊な部隊』は昼休みに入った。


 誠はいつも通り仕出しの弁当を取りに、パイロットの詰め所を出てシュツルム・パンツァーが格納されているハンガーへと向かった。


 そこでは金に余裕の無い整備班員達と、節約志向の高い管理部のパートのおばちゃん達が整備班員最年少の西高志二等陸士から仕出し弁当を受取っていた。『特殊な部隊』御用達の仕出し弁当屋はこの基地がある『菱川重工豊川工場』近辺に数ある弁当屋でも一にの安さと旨さを誇る弁当屋だった。


 『菱川重工豊川工場』は斜陽の工場だった。内陸部に位置し、専用の貨物船を国鉄の路線に連結しているものの、ほとんどの物資輸送をトラックでの輸送に頼る時代遅れの物流システムがこの東和共和国建国以来の伝統を誇るこの工場の寿命を縮めていた。今では大型機械の製造など、この『特殊な部隊』のシュツルム・パンツァー、『05式』愛称『ダグフェロン』の製造を行うくらいで、大概の業務は運ばれてくる建設重機の整備やこの工場でしかできない金属の表面加工、そして重工業の工場とは思えないこまごまとした部品製造位のものだった。


 そんな工場の縮小により弁当屋の需要は減り淘汰が進んだ。高くても不味くても量さえあれば売れる時代は終わり、安くて旨い弁当屋だけが生き残った。そんな弁当屋の一つがこの『特殊な部隊』で頼んでいる弁当屋だった。


「神前曹長じゃ無いですか!今日はから揚げ弁当ですよ。250円になります!」


 元気よく誠に声をかけてくる西に誠は小銭入れから取り出した百円玉二枚と五十円玉を手渡した。西は手際よく弁当を誠に渡し、後ろの整備員からまた金を受け取り弁当を渡す。その手際の良さに誠は感服していた。


「島田先輩にこき使われていつも大変だね。たまには他の人達も代わってあげればいいのに」


 誠は弁当を持ち直しながら昼休みだと言うのに一生懸命働いている西にそう言った。人がいい割に気が利く西は首を振ると嬉しそうな表情を浮かべる。


「そんな。僕が好きでやっていることですから。僕の国『甲武国』では僕は平民ですから。あの国は貴族主義の国で階級が全てなんです。年が一番下で階級も最下位の僕がやるのが僕にとっては自然なんです。班長もその点は分かってくれています」


 きびきびと働いて並んでいる整備班員に弁当を配りながら西はそう言った。


「そう言えば島田先輩は?」


 いつもは班長特権のプリンを片手に倉庫の片隅に置かれた手のかかったバイクのわきで弁当を食べている技術部部長代理にして整備班班長、島田正人准尉の姿はどこにも見えなかった。


「第三倉庫じゃ無いですか?今度始まった『プロジェクト』が第二段階に入ったとか言ってましたから」


 サボることなく弁当を配りながら西はそう言っていつもの笑顔を誠に向けてくる。


「じゃあお仕事頑張って!」


 そう言うと誠はそのままシュツルム・パンツァーが並べられているハンガーから武装などを置いている倉庫に足を向けた。


 倉庫の扉を開くと両脇の壁にシュツルム・パンツァー専用レールガンやそのマガジンなどが積み上げられていた。薄暗い倉庫の中をどこから顔を出すか分からない気まぐれな性格の島田を探して誠はきょろきょろと周りを見回しながら歩いた。


「島田先輩!何処ですか!」


 弾薬の格納されたラックが邪魔で見通しがきかない倉庫だが、9メートルの大きさを誇るシュツルム・パンツァー向けの武器を置いてあるだけあって、あちこちに人が入れる程度の隙間がある。島田は時々気まぐれを起こしてそこで眠っていることもあるので油断ならなかった。


薄暗い倉庫の向こう側に光がさすのが見えた。


「おう!俺を呼んでるのは神前か!ここだここだ!」


 最後のラックの向こう側の広くなっているあたりで島田の叫ぶ声が響いた。


「今行きます!それと『プロジェクト』って何ですか?」


 手に弁当を持ったまま誠は島田の声のする場所を目指した。誠は島田が始めたという『プロジェクト』の内容に興味を惹かれて自然とその足取りは早まった。




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