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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』  作者: 橋本 直
第十四章 大浴場での『出会い』

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第55話 女公爵の威光

「あら、神前君じゃないの?やっぱりお風呂?」


 そう声をかけてきたのは水色のショートカットの髪をなびかせている浴衣姿のパーラだった。隣には一緒に入ったらしいひよこの姿もあった。


「そうです。菰田先輩が言うにはかなり大きくていいお風呂らしいんで……パーラさん、女風呂はどうでした?」


 誠は他意も無くそう尋ねた。


「本当に良いお風呂よ。お湯も良いし、全く生き返るわ。それがこのホテルはね普通のホテルとは逆なのよね。普通のホテルって男風呂の方が広いじゃない?まあ気を利かせて時間を決めて女風呂と男風呂を入れ替えてるところもあるみたいだけど」


 あの可哀そうな西と同じく面倒ごとを押し付けられることが多く、隊員達にはあまり心を開かないパーラだが、彼女もこの『特殊な部隊』では常識人とされる誠には心を開いてそう言った。


「はあ、そういうもんなんですか……僕は旅行に行った経験がないんでホテルについてはあまり……」


 その持ち前の車酔い体質から旅行と言うものをしたことが無い誠はパーラの言葉にただだあいまいな返事をするしかなかった。


「それがね、なんでも男風呂の倍の広さがあるらしいのよ、女風呂は私も連休とかに温泉に行くこともあるんだけど、こんなに広いお風呂は初めてよ。ああ、男風呂は普通の大きさらしいけど」


 少し呆れたような調子でパーラはそう言った。


「なんでもここのオーナーさんが主君の西園寺さんに気を使ってそうしたらしいんです。このホテルは本当に西園寺さんが東和に勤務するためだけに作られたホテルらしくて。だから少しわがままなところがある西園寺さんが入っても怒られないように女湯を大きく作ったらしいんですよ」


 驚きの表情を浮かべながら語られるひよこの言葉に誠はかなめの『お姫様ぶり』に言葉が無かった。確かに自己中心的なところがあるかなめが男湯より狭い女湯に入るなどと言うことを許すはずがないことも容易に想像がついた。


「でもかなめさんを気遣ってのことだったら隊からもっと近いところに作ってくれればいいのにねえ。移動に一日がかりなんて、思い立ったらすぐ来るって訳にはいかないじゃないの。私もかなめさんの顔で安く泊まれるなら連休の度にここを使うのに」


 パーラは旅好きらしくそう言って旅とは無縁の誠に愚痴った。


「じゃあ、僕の行く男風呂は狭いんですか?」


 誠は少しがっかりして湯上りの髪を整えているパーラにそう言った。


「女湯は岩づくりだったけど、男湯は檜造りの渋いお風呂らしいわよ。そう言うのが好きなお金持ちの客層を狙ってるんでしょ。まあ、いいお湯だったから私はどうでもいいけど。それじゃあ私達は部屋に戻るわね」


 パーラはそう言うと残念そうな表情を浮かべている誠を置いて廊下を歩いていった。


「檜のお風呂か……初めてだから……狭くても我慢しよう。きっと実家の近くの銭湯よりは大きなお風呂のはずだ。なんと言っても名前が大浴場なんだから」


 誠は先ほどのアメリアの提案を断った残念さを引きずりながら男風呂へと足を向けた。




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