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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』  作者: 橋本 直
第十三章 危険な香りの甘い誘惑

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第52話 女達の『企み』

「わかったわよ……誠ちゃん!飲み終わったらお風呂行かない?この部屋の専用の露天風呂も結構いいのよ。大浴場の広々した雰囲気もいいけど、せっかくのお姫様専用の浴室に入れるなんて……果報者よね」


 輝いている。誠はアメリアのその瞳を見て、いつものくだらない馬鹿騒ぎを彼女が企画する雰囲気を悟って目をそらした。


「神前君。付き合うわよね?」 


 誠はカウラとかなめを見つめる。カウラは黙って固まっている。かなめはワインに目を移して誠の目を見ようとしない。


「それってもしかしてこの部屋専用の露天風呂に一緒に入らないかということじゃないですよね?」


 誠は直感だけでそう言ってみた。目の前のアメリアの顔がすっかり笑顔で染められている。 


「凄い推理ね。100点あげるわ。お姉さん達の貴重な裸が拝めるのよ……男冥利に尽きるでしょ」 


 アメリアがほろ酔い加減の笑みを浮かべながら誠を見つめる。予想通りのことに誠は複雑な表情で頭を掻いた。


「私は別にかまわないぞ。神前になら見られても別に恥ずかしくはない」 


 ようやくグラスを空けたカウラが静かにそう言った。そして二人がワインの最後の一口を飲み干したかなめのほうを見つめた。


「テメエ等、アタシに何を言ってほしいんだ?」 


 この部屋の主であるかなめの同意を取り付けて、誠を露天風呂に拉致するということでアメリアとカウラの意見は一致している。かなめの許可さえ得れば二人とも誠を羽交い絞めにするのは明らかである。誠には二人の視線を浴びながら照れ笑いを浮かべる他の態度は取れなかった。


「神前。お前どうする?アタシもあえてアメリアの意見に反対する理由はねえが」 


 かなめの口から出た誠の真意を確かめようとする言葉は、いつもの傍若無人なかなめの言動を知っているだけに、誠にとっては本当に意外だった。それはアメリアとカウラの表情を見ても判った。


「僕は島田先輩とあの菰田先輩と同部屋なんで。『純情硬派』が売りの島田先輩の前でそんなことしたら殺されますよ。それに菰田先輩……僕がカウラさんの裸を見たなんて知ったらそれこそ殺されますよ!」 


 誠は照れながらそう答えた。その声には照れと共に恐怖の色が混じっていた。


 誠は島田と菰田と同部屋である。この一晩を一緒に過ごすことになるのである。もし、アメリア達と一緒にふろに入ったなどと言うことがバレれば命は無い。


 たとえこの場でバレなくとも、口の軽いアメリアが隊でこの事実を口にして確実に二人の耳に入る。そうなれば誠はその住まいである男子下士官寮の寮長の島田と副寮長の菰田から『男女交際は硬派であれ』と言う寮則に背いた咎で処刑される。


「だよな。島田はともかくカウラ命の『ヒンヌー教徒』の菰田がその事実を知ったらタダじゃあ済まねえだろうな」


 感情を殺したようにかなめはつぶやいた。アメリアとカウラは残念そうに誠を見つめる。誠は自分の軽い好奇心から命を失う危機をどうにか回避できたことで安堵のため息をついた。


「このの裏手にでっかい露天風呂があって、そっちは男女別だからそっち使えよ。このホテルの部屋にはそれぞれ洋式の風呂があるが、あれはたぶん誠には入り方がわからないだろうからな。オメエは下町生まれだから銭湯ぐらい言ったことがあるだろ。入り方は同じだ」 


 淡々とそう言うかなめを拍子抜けしたような表情でアメリアとカウラは見つめていた。


「西園寺さんありがとうございます……おかげで住まいと命を失わずに済みます」 


 そう言うと誠はそそくさと豪勢なかなめの部屋から出た。いつもは粗暴で下品なかなめだが、この豪奢なホテルでの物腰は、故州四大公家の当主と言うことを思い出させた。そして彼女が島田と菰田が誠に与えるであろう制裁について考慮に入れていてくれたことに感謝するしかなかった。



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