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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』  作者: 橋本 直
第十二章 かなめの『荘園』のホテル

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第42話 カオスなバスの旅を終えて

 続く緑の松の並木。瓦屋根の張り出すみやげ屋が続く海沿いの道を抜けてバスは進む。誠は逆流する胃液を腹の中に押し戻した。


 あれからアメリアのアニソンワンマンショーは続いた。


 誠の乗り物酔いを危惧してアメリアが気を利かせてプランニングしたパーキングに必ず止まる度に、カウラ達の誰かがアメリアからマイクを奪おうとするのだが、アメリアは口八丁でそれをかわして、この三年で放映されたアニメのオープニングとエンディング、そして主挿入歌やキャライメージソングまでアニメ好きの誠すら知らない曲を延々と歌い続けた。


「全くオメエはだらしねえなあ!もうすぐ着くんだから大丈夫だよ。それにしてもアメリアの奴。よく喉が持つな。もう六時間は歌ってるぞ。まあ、運航部のお笑いゲリラライブでは毎回1時間の漫談を延々とやるからな。喉はそれで鍛えてるのか」 


 かなめは青ざめた誠を見ながらフラスコに入ったラムをあおりながら、まだ熱唱を続けているアメリアに感心していた。


 アメリアのアニソンリサイタルが始まると、彼女のアニソンを聞き飽きた隊員達の間で酒の瓶が車内に回された。ハイテンションな歌ばかりが流れるバスの中はもはや無法地帯状態になっていた。


 昼飯時には、しらふなのは運転していた島田、黙ってウーロン茶を飲みながら通信タブレットでスロットに夢中だったカウラ、そして給仕に明け暮れる家村親子と周りの景色に見とれていたひよこだけだった。ドライブインでアメリアのアニソンの嵐にすっかりやられていた島田に代わり午後は金の動かない携帯端末でのスロットに飽きたカウラが運転を続けている。


 誠はアメリアの独壇場を阻止するものだと思っていたかなめはと言えば、サイボーグの利点を生かして一人脳内に響くお気に入りの歌声を聞きながらラムをラッパ飲みしていた。


「もうすぐ着くから大丈夫よ」 


 脂汗を流している誠にようやく知っている限りのアニソンを歌い尽くしたアメリアがいたわりの声をかける。繁華街を抜けたところで街道を外れ、バスはどこまでも続く平野に入り込んだ。


 ブロック作りの道のもたらす振動で、誠はまた胃袋がひっくり返るような感覚に包まれる。


「吐く時はこれにお願いね」 


 また酔い始めた誠を見て気を利かせたパーラがカウラが用意してきたエチケット袋を誠に手渡す。


「大丈夫ですよ。これくらい……前回の『ふさ』の母港への移動の時に比べたらバスにはかなり慣れてきました」 


 とりあえず強がっている誠だが、口の中は胃液の酸が充満し、舌が苦味で一杯になるのを感じていた。



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