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第31話 面倒な『マネージャー』

「そう言えば……今回の旅行は菰田が来るんだな。アイツは一応野球部のマネージャーだから」


 ラム酒を口に含みながらかなめはそう吐き捨てるように言った。そこには菰田に対する嫌悪の情があふれていた。


「本当に来るんですか?あの人『野球をやらないために産まれた男』だって島田先輩が言ってましたよ。確かにマネージャーが雑事をしてくれると便利なのは分かるんですけど……本当に来るんですか?僕はあの人が苦手なんで……」


 かなめの言葉を聞いて誠達の『特殊な部隊』の管理部門のトップである主計曹長の三白眼が誠の脳裏に浮かんだ。


「どうせ島田君には逆らえない整備班所属の部員が雑用をしてくれるからいつマネージャーをクビにしても良いんだけど、そんなことをしたら彼、首を吊りかねないわね。それに菰田君は……カウラちゃんの担当でしょ?」


 アメリアは苦笑いを浮かべながらカウラの表情を窺った。カウラは訳が分からないというように、ただ烏龍茶を飲み、串焼きを頬張った。


「そう言えば管理部って……普段何をしてるんですか?今日、顔を出したんですけどパートのおばちゃんしかいませんでしたよ。中でも白石さんは工場とのコネがあるから色々役に立ってくれてるとは思うんですけど……軍籍のある菰田先輩が部長代理を務める意味が有るんですか?」


 あてずっぽうでそう言った誠に、三人の女上司は大きくため息をついた。


「あのなあ……うちは『組織』なんだよ。誰がうちの経費の計算した結果の押印とかするんだ?誰がオメエの残業手当を計算結果のゴーサインとか出すんだ?正規の隊員じゃねえとそんなことできねえだろ?それとも何か?白石さんを隊員として雇えってのか?あの人もう六十だぞ。普通の会社だったら定年の年だ」


 かなめはあきれ果てたというようにラム酒をあおった。


「でも……事務仕事なら、アメリアさんの『運航部』でやってますよね?菰田先輩じゃなくっていつも暇してるアメリアさんが書類に判子押せばいいじゃないですか」


 誠は馬鹿にされて少し怒ったようにそう言った。


「うちはあくまで管理部の『下請け』だから。経費の計算は本当は『管理部』の担当なのよ。名目上だけでも『管理部部長』の存在が必要なの。それに彼、簿記とかの資格はたくさん持ってるから偉いさんの評判もすこぶるいいし。まあ……確かに嫌な奴よ。今回の旅行もしっかり来るみたいだけど……それこそ彼を置いてけぼりにしたら首を吊りかねないわよ」


 そう言うアメリアの表情にはあざけりの色が見て取れて、誠は少し菰田と言う先輩に同情していた。



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