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第3話 『近藤事件』の顛末と誠の地位

「まあ神前が『光の(つるぎ)』で近藤の野郎を処刑した後だったからな……カウラが少し誠を頼もしく思ってそんなことを言わせる気分になったのかもしれない。アタシはそんな気がする」

挿絵(By みてみん)

 かなめはニヤついた顔を真顔に戻すと思い出したかのようにそう言った。


 先月、配属になったばかりの誠はすぐに実戦を経験することになった。


 遼州星系第四惑星を領有する国家、『甲武国』の貴族主義者の過激派、近藤貴久中佐によるクーデター未遂事件。遼州同盟司法局実働部隊隊は奇襲作戦を仕掛け、数に勝る決起軍を撃破した。


 誠の中に眠る『法術』を使用しての一撃必殺の剣。通称『光の剣』それが決起部隊の旗艦であった巡洋艦『那珂』のブリッジを首謀者である近藤中佐ごと消し飛ばした。結果、鎮圧部隊である誠達を自力で壊滅させて、同じ思想を持つ貴族主義者が同調して決起することを狙っていた近藤中佐の目論見を叩き潰した。


 誠はその作戦中の緊張感を思い出しながら誠はカウラの横顔を眺めた。


 気丈な性格、それでいてどこかはかなげで、目を離せばどこかへ消えてしまいそうな印象のあるカウラとの約束。思い出すと恥ずかしくて身もだえてしまうような気分になる。


 満足げに誠の隣まで歩み寄ってきたアメリアの姿を見ると、時々思い出したように将棋盤のわきに置かれている書類の束にハンコを押していた小学校低学年にしか見えない実働部隊副長、クバルカ・ラン中佐はそのまま立ち上がった。


 そんなランを無視してアメリアは話を続けた。


「実はね、これは先週の私達運航部が豊川駅前でやったコントのゲリラライブの慰労会も兼ねてるわけよ。あの時に客寄せに配った誠ちゃんが描いた『萌え萌えビラ』が大好評で……そっち系のオタク達がひそかに私達の情報を拡散してくれているのよ……まあ、ネタが下品すぎて、客が携帯端末で撮ってネットで流した映像が動画サイトの運営から削除されちゃったのが残念だけど」


 アメリアが出張に行く前に『女芸人集団』の異名を持つアメリア麾下(きか)の運用艦『ふさ』の運航を担当する運行部が暇を見つけてはやっているコントや落語、漫才の練習の笑い屋を誠は務めさせられていた。


 ここは『特殊な部隊』なのである。常識人などアメリアの尻拭い担当のパーラぐらいのものだった。 


「海か?夏と冬のいつものことだ。行ってこいや。どうせ9月まで海水浴場やってんだから。それに西園寺がもう練習用のグラウンドとか抑えてるんだろ?今更キャンセルも効かねーだろ」 


 ランがいつも通り隣に置かれた将棋盤から目を離さずにそう言うと、アメリアは大きく頷いて周りを見回した。


「じゃあ、機動部隊は全員参加でいいわね!まあ四人とも野球部員だしね。かなめちゃんは監督、カウラちゃんは正ショート、誠ちゃんに至っては秋になってリーグが再開したらサウスポーのエースになってもらうんだもの!当然名誉監督のランちゃんも参加よね?」 


 そう言うとアメリアは機動部隊詰め所を後にしようとした。


「ああ、アタシはパス!仕事だかんな!それに名誉監督はあくまで『名誉職』だ。アタシまで一緒に言って一々指図なんてしたら、監督の西園寺の顔が潰れるだろ?アタシなりの配慮って奴だ。楽しんでこいや」


 ランが軽く手を挙げながらつぶやく。


「えー!ランちゃんいないの?」


 いかにも残念そうなアメリアの叫びが部屋に響いた。誠はこの『特殊な部隊』でアメリアを制御できる稀有な存在であるランが旅行に同行しないと言う事実に一抹の不安を覚えた。




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