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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』  作者: 橋本 直
第四十六章 新しい日々

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第197話 出勤風景

「早く開けろ。暑いんだから」 


 カウラの『スカイラインGTR』の前でかなめが呟く。またため息をついたカウラはロックを開いた。カウラは助手席のドアを開き、シートを倒すとそのまま後部座席に滑り込む。


「こっち来い!」 


 そう言うとかなめはサイボーグならではの強い力で誠を後部座席に引きずり込んだ。


「そんなに強く引っ張らなくても……」 


「がたがた言うな!カウラエンジンかけろ、それから窓も開けるんだぞ!」 


 かなめの言葉に少し不愉快そうな顔をしながらカウラはエンジンをかけ、そのまま窓を開けた。


「今の時間だと駅前に向かう道は全部ふさがってるわね。裏道で行きましょ」 


 アメリアはそう言いながらナビを設定している。


「そうだな。引越しした直後に遅刻と言うのもつまらないからな」 


 そう言うとカウラの『スカイラインGTR』はすばやくバックし、そのまま切り替えして駐車場を出た。


「狭いなあ。カウラ、車変えろよ。パーラみたいにでかい奴に」 


 かなめの言葉を無視してカウラはアクセルを吹かす。後ろを覗き込んでかなめと誠が密着しているのを見てアメリアは気に入らないというようにこめかみを振るわせながらバックミラー越しに二人を凝視していた。


「あら、かなめちゃんは良いんじゃないの?このままのほうが。誠ちゃんとラブラブごっこが出来るじゃない」 


 一瞬、アメリアの言葉が理解できなかったかなめだが、その視線でアメリアが何を言おうとしているのか理解すると誠の足を踏みつけた。


「痛いですよ!西園寺さん!」


 誠は痛みの叫びをかみ殺してそう叫んだ。


「空が高いや。空気は夏の気温だがもう秋かねえ」 


 痛みにうずくまる誠を見ながらかなめは外からの風に短めの髪をなびかせていた。カウラは誠に同情するようにバックミラーの中で笑みを浮かべている。


「じゃあクーラーは要らないな」 


「おい、風情ってモノの話をしただけだ。ちゃんとつけろよ、クーラー」 


 かなめに言われなくてもカウラはもうすでにクーラーを動かしていた。


「こんな道あったんですね」 


 住宅街の中。大通りなら渋滞につかまって動けなくなる時間だと言うのに確かに回り道とは言えすいすいとカウラの銀色の『スカイラインGTR』は走る。


「このルートの方が早いのよ。まあ、誠ちゃんは原付だから渋滞とか関係ないものね。中央大通りを走れれば確かに一番早いんだけど渋滞があるから……」 


 アメリアは涼しげな目を細める、細い路地、他に車の姿は無かった。そして住宅街を抜けると一面の田んぼが広がっている。


「ここから先はどう行っても大丈夫よ。まあ、最後は菱川重工の正門で工場ラインの出勤組みの渋滞につかまるでしょうけど」 


 アメリアが伸びをする。カウラはそのまま細い農道を飛ばしている。


「そう言えば今日はおせっかいな甲武海軍の面々とかもついてこないな」 


 大きなあくびをした後、かなめはそうつぶやいた。


「ああ、それらしい連中なら駐車場を出て住宅街の中で捲いたぞ」 


 あっさりとカウラはそう言った。


「カウラ、お前なあ。せっかくの甲武の税金使って護衛してくれるって言う連中捲いてどうすんだよ」 


 至極もっともなかなめの突っ込みにカウラが笑みを浮かべた。車は菱川重工豊川の正門へと続く通称『産業道路』に出た。トレーラーが次々と走っていく中、カウラはタイミングを合わせてその流れに乗った。


「何とか間に合いそうね。カウラちゃんこれ食べる?」 


 アメリアはガムを取り出し、カウラを見つめた。カウラはそのまま左手を差し伸べる。


「アタシも食うからな。誠はどうする?」 


「ああ、僕もいただきます」 


 ガムを配るアメリア。片側三車線の道路が次第に詰まり始めた。


「車だと通用門の検問でいつもこれだもんね。どうにかならないのかしら」 


「ここじゃあシュツルム・パンツァーや飛行戦車なんかも作ってるんだ。セキュリティーはそれなりに凝ってくれなきゃ困る」 


 工場前での未登録車両の検査などのために渋滞している道。ガムを噛みながらかなめは腕を組む。しかし、意外に車の流れは速く、正門の自動認識ゲートをあっさりと通過することになった。


 車は工場の中を進む。積荷を満載した電動モーター駆動の大型トレーラーが行きかうのがいかにも工場の敷地内らしい。


「誠ちゃん、よく原付でこの通りを走れるわね。トレーラーとかすれ違うの怖くない?」 


「ああ、慣れてますから」 


 アメリアの問いに答えながら、すれ違うトレーラーを眺めていた。三台が列を成し、荷台に戦闘機の翼のようにも見える部品を満載して大型トレーラーがすれ違う。四人の顔を撫でるのはトレーラーのモーターが発する熱風ではなくクーラーから出る冷気だった。カウラは工場の建物の尽きたはずれ、コンクリートで覆われた司法局実働部隊駐屯地へと進んだ。


「身分証、持ってるわよね」 


 アメリアがそう言いながらバッグから自分の身分証を出す。


「それとこれ、返しとくわ」 


 アメリアに彼女の愛銃、スプリングフィールドXDM40を渡した。



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