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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』  作者: 橋本 直
第四十二章 入寮前祝の飲み会

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第178話 『特殊な部隊』の一番落ち着く場所

「それにしてもいつ来てもここ、落ち着くわね」


 突然そう言いだしたのがパーラだったので一同は彼女の顔を見つめた。


「おい、パーラ。何か悪いもんでも食ったか?」


 かなめが驚いたように口にしていたトリ皮串を落とした。


「パーラちゃんがそう言うなんて意外よね」


 かなめとアメリアがまったりとした表情のパーラを見て驚いたようにそう言った。


 パーラは初めて自分のこの自己主張が意外過ぎるものと受け止められている事実を知り、グラスをカウンターに叩きつけた。


「何よ!私が落ち着く場所があるのがそんなにおかしいの?隊ではいつもアメリアの尻拭いばかり。出動すればしたで他の()が休憩を取りたいと言えば半舷休息中でも呼び出されるし……本当に『特殊な部隊』では私ばかり損しているわ!その点この店ならやることはすべて春子さんと小夏ちゃんがやってくれるし、焼鳥はおいしいし……良いじゃないの!私がそう思ったって!」


 ムキになってパーラがそう言い返す。パーラの言う通り、『特殊な部隊』で唯一の常識人であるパーラは損をすることが多かった。暴走する隊員達の尻ぬぐいはすべて彼女に押し付けられることが通例となっていた。誠もその事実には同情の念を禁じえなかった。


「分かった分かった。少しは落ち着け。でも、パーラの言うことに間違いは無いぞ。同じここでは酒が飲めない私もそう思う」


 烏龍茶を飲んでいたカウラはそう言ってパーラをかばった。


「確かにな……他の店はバイトがすぐに変わったりとか時間制で二時間経つと追い出されたりとか……ろくな店が無いからなこの辺りは」


 酒好きのかなめはここ豊川近郊の飲み屋を飲み歩いたのだろう。その指摘は正確なものなのだろうと誠は思った。


「そんな、かなめさん。うちを褒めても何にも出ませんよ。本当はうちも小夏には勉強に集中してもらうためにバイトを雇いたいんだけど、これって子が来ないのよね。ネットに求人はいつも出してるのに」


 春子はかなめの誉め言葉に気を良くすると自分もビールをコップに注いで飲み始めた。


「俺もこの店好きだな。まず、変な焼鳥屋は変なこだわりで豚串を出さねえ。俺、豚串が一番好きだ。だからこの店が好きなんだ」


 そう言うと島田は目の前に山と積まれた豚串を頬張った。


「そんな理由?ヤンキーの考えることは浅いわね。私は春子さんの人柄だと思うの。私がこの中では一番春子さんと年が近いからなんとなく分かるんだけど……春子さんって若いころ相当苦労してるでしょ?」


 結構飲みすぎているようでふらふらしながらアメリアがそう春子に語り掛けた。


「昔話は湿っぽくなるだけ。それにそう言う話を私がしないから皆さん来ていただけるんでしょ?」


 春子はアメリアの質問をそうはぐらかすと空いたグラスに再びビールを注いだ。


「そうねえ……この店が一番落ち着く場所なのは事実だな。実は叔父貴の野郎がここに来たがっているんだ」


 何気ないかなめの言葉に全員が彼女の方を見つめた。


「あの貧乏人が?ランちゃんがおごってくれるから?」


 アメリアはかなめの言葉が意外だというようにそう言った。


「ちっちゃい姐御は『駄目人間に払う金はねー!』って言って止めてるんだ。ここだけの話だが……実は春子さんに気が有るらしい」


『エー!』


 意外なかなめの一言に一同はあっけに取られてそう叫んだ。


「でも、考えられるわね。隊長の女好きは今に始まったことじゃないし……そう言えば休みになると休日の昼間にこの付近を隊長がうろうろしてるのを見たって運航部の通信担当の娘が言ってたけど……春子さん、隊長と会ったことあるの?」


 アメリアがいやらしい目つきをしてビールを飲む春子にそう語り掛けた。


「さあ、どうかしらね」


 年齢の分春子の方がアメリアより一枚上手でアメリアの問いを再びかわすと笑顔で源さんが焼鳥を焼いている調理場に姿を消した。


「でも、僕も初めて来た時からこの店は気に入っています。お世辞にも綺麗とは言えないけど清潔感はあるし、焼鳥はおいしいしビールはすぐ出てくるし。それに毎回出てくる突き出しが凝っていて何が出てくるか毎回楽しみなんです」


 誠は心に思った本心を口にした。


「やっぱりここは良い店だ」


「落ち着くよな」


 テーブル席の男子寮の住人達もそう言って頷きあった。



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