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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』  作者: 橋本 直
第四十章 女大公殿下の住まい

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第169話 家事とは無縁な女

「西園寺さん。掃除したことあります?」 


 埃まみれの床を見た誠の言葉に、かなめは思わず口にしたウォッカを吹き出しそうになる。そしてそのまま照れたような笑みを浮かべて語りだした。


「……一応、三回くらいは……」 


「ここにはいつから住んでるんですか?」 


 かなめの顔がうつむき加減になる。たぶん部隊創設以来彼女はこの部屋に住み着いているのだろう。寮での掃除の仕方、それ以前に実働部隊の詰め所の彼女の机の上を見ればその三回目の掃除から半年以上は経っていることは楽に想像できた。


「掃除機ありますか?」 


「馬鹿にするなよ!一応、ベランダに……」 


「ベランダですか?雨ざらしにしたら壊れますよ!」 


「そう言えば昨日の夜、電源入れたけど動かなかったな」 


 誠は絶句する。しかし、考えてみれば甲武国の四大公の筆頭である西園寺家の当主である。そんな彼女に家事などが出来るはずも無い。そう言うところだけはかなめはきっちりと御令嬢らしい姿を示して見せる。


「じゃあ、荷物を運び出したら。掃除機借りてきますんで掃除しましょう」 


「やってくれるか!」 


「いえ!僕が監督しますから西園寺さんの手でやってください!」 


 誠の宣言にかなめは急にしょげ返った。彼女は気分を変えようと今度はタバコに手を伸ばした。


「それとこの匂い。入った時から凄かったですよ。寮では室内のタバコは厳禁です」 


「それ嘘だろ!オメエの部屋でミーティングしてた時アタシ吸ってたぞ!」 


「あれは来客の場合には、島田先輩の許可があれば吸わせても良いことになっているんです!寮の住人は必ず喫煙所でタバコを吸うことに決まっています!」 


「マジかよ!ったく!失敗したー!」 


 そう言うとかなめは天井を仰いでみせた。


「そうだ……神前。ついて来い」 


 かなめはそう言って急に立ち上がる。誠は半分くらい残っていたビールを飲み下してかなめの後に続く。誠が見ていると言うのに、かなめはぞんざいに寝室のドアを開ける。


 ベッドの上になぜか寝袋が置かれているという奇妙な光景を見て誠の意識が固まる。


「あれ、何なんですか?」 


「なんだ。文句あるのか?」 


 そのままかなめはそそくさと部屋に入る。ベッドとテレビモニターと緑色の石で出来た大きな灰皿が目を引く。机の上にはスポーツ新聞が乱雑に積まれ、その脇にはキーボードと通信端末用モニターとコードが並んでいる。


「なんですか?これは」 


 誠はこれが女性の部屋とは思えなかった。運用艦『ふさ』のカウラの無愛想な私室の方が数段人間の暮らしている部屋らしいくらいだ。


「持っていくのは寝袋とそこの端末くらいかな」 


「あの、西園寺さん。僕は何を手伝えば良いんですか?」 


 机の脇には通信端末を入れていた箱が出荷時の状態で残っている。その前にはまた酒瓶が三本置いてあった。


「そう言えばそうだな」 


 かなめは今気がついたとでも言うように誠の顔を見つめた。



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