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いつもお読みいただきありがとうございます!

エリーゼは声がした方に背を向けてクリストファーと話していた。そのため、声を発したのが誰かを判断するのが遅れた。


「げ。ドナドナキノコ」


その遅れの間にクリストファーは聞こえていたら大変マズイことを言う。後できっちり問い詰めなければと思いつつ、身を翻す。


「騒がしくして申し訳ございません。スチュアート殿下」


方向転換してやっと分かった。道理で声に聞き覚えが無かったわけだ。不機嫌そうに立っているのは本当に久しぶりに見るスチュアート殿下だった。


「母上の部屋が近いのだから気を付けろ」


スチュアートはそう言うと、そのままお付きの人々と一緒に庭を出て行ってしまった。もっと何か言われるかと想像したのに拍子抜けだ。それに、今のは親切? お節介?


「お兄様、ドナドナキノコとは一体何ですか?」


「俺達側近はそう呼んでるんだよ。だって同僚にアートがいるじゃないか。スチュアート殿下って呼ぶと気にするんだよ。名前一緒だから」


フライアの婚約者のあだ名はアートだが、本名はスチュアート・ハウゼンだ。


「それは分かりますが……」


「最初は『やらかしドナドナキノコ頭』って呼んでたんだ。長いからドナドナキノコになった」


「聞かれたらマズイでしょう」


「大丈夫だろ。今回は聞こえてない。それに聞かれてたとしても、もうすぐドナドナだ」


こそこそ喋っていたがもう何をいってもダメだろう。兄達はブレスレット騒動の後、とても忙しかったからこう呼んでしまうのも無理はないのかもしれない。


ちなみにドナドナとは北の隣国であるケイファ王国への婿入り(出荷)を意味する。あの国は珍しく女王が治めていて、しかも女王は複数の夫を持つことが許されている。スチュアートは3番目の夫として婿入りするはずだ。さらに言うと、あちらの国は金髪碧眼が少なく非常に好まれる。


「まぁスチュアート殿下もあれ以上何もおっしゃらなかったのでいいですよね。とりあえず、お兄様。目下の問題はサンドラ様のことです。エリアス殿下のところへ行きましょう!」


***


エリアスの執務室に行くと、殿下は不在で側近達だけだった。


「そんな! この時期にクリストファーがいなくなるとか!」

「俺達に死ねと!?」

「俺にも休みをくれ!」


側近達に休みが取れるか聞くと非難轟々、というかパニックが起きた。


「これでは兄まで婚約解消になるかもしれません」


「いや、手紙がこないくらい大丈夫だろう」

「手紙と言えば。おいあの件、手紙の返事あったか?」

「まだ来てない。あの家は期日を守らないからな!」


パニックの中でも差し込まれる仕事の話。


「では兄が労働環境のせいで婚約解消になってもいいと?」


「そうではありません。でも俺達もなんとかやってるし。アートはこんな中でも婚約したし!」

「クリストファーだけ休めるのは不公平だ!」

「私達も仕事が多く……王女殿下がいらっしゃるまでほとんど休めないのです」


「その件で疑問なのですが……王女殿下がいらっしゃった後は忙しさが落ち着くんですか?」


私の疑問に側近達はピシリと固まる。


「エリアス殿下の婚約者である王女殿下にお会いしたことはありませんが、あのエリアス殿下が選ぶ方です。普通の方ではないでしょう。エリアス殿下と王女殿下が似ているならば……簡単に言うとエリアス殿下が王宮に二人いらっしゃる状態になったとします。忙しくなくなるんでしょうか?」


「あぁ、なるほど。殿下も劇物だけど、王女殿下も劇物かもってことか。劇物と劇物合わせて中和されるのか、さらに劇物になるのかってあたりだな」


クリストファーはエリーゼが言いたいことを理解したようだ。そんな明け透けな物言いをエリーゼはしていないのだが。


「まじ? 俺達、王女殿下がいらっしゃるまでって頑張ったのに」

「いや、でも確かに。王女殿下は破天荒だとウワサがある。お淑やかとは聞かない」

「やばくないか? それ。殿下一人でも制御不能なのに」


「兄の婚約者であるサンドラ様はワイマーク王国に何年も留学されています。彼女が兄の婚約者としていらっしゃれば、王女殿下の話し相手やもしもの時はストッパー役になってくれる可能性がありますよね」


「別に帰ってきてから王女殿下の話し相手として来てもらっても良いんじゃないか?」

「話し相手として雇ってもいいし」


「それはサンドラ様が帰国される場合のお話ですよね? 兄と婚約を解消してもしかするとワイマーク王国に嫁がれるかもしれません。それに、帰国されたとしても兄の婚約者でないならば他の方と婚約・結婚されて王都から遠くに行かれるかもしれません。それでは意味がないでしょう」


「なぁ、王女殿下もエリアス殿下みたいな方だったら……俺達だけじゃ無理だよな?」

「いやでも……この時期にクリストファーが抜けたら……」

「王女殿下を制御できる人材は必要だろう」

「クリストファー、俺はエリーゼ様の意見に賛成だ。行ってきた方がいい。」


今までパニックにならず、じっと考え込んでいたフライアの婚約者であるアートが賛成してくれた。

★既刊情報&特設サイトについて★

2月14日に発売された「憧れの公爵令嬢と王子に溺愛されています⁉婚約者に裏切られた傷心令嬢は困惑中」の特設サイトができました。


https://www.cg-con.com/novel/publication/09_treasure/02_dekiai/


こちらでWEB限定SSも公開中です。

本をぜひお手に取って頂ければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

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