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いつもお読みいただきありがとうございます!

「これは一体、どういう状況なの。私が珍しく教会で祈ったから悪魔でも憑いたの?」

「教会で祈って悪魔が憑いたらまずいわよ。教会の威信に関わっちゃう」

「ねぇ、フライアはあの状況見て何も言うことがないの?」

「いや……まぁ……その……ねぇ」

「その歯切れの悪すぎる返事はどうしたの??」

「羨ましいんじゃない?」

「そんなわけないでしょ!」


ブルックリン、クロエ、フライアの三人の会話を聞きながらエリーゼはアシェルを何とか引きはがそうとしていた。


「えっと、お花摘みに行くので……」

「僕も行くよ」

「いえ、一人で行きますから」


エリーゼが起きて歩けるようになってから、アシェルがどこにでもついてこようとするのだ。正確には、妊娠できないかもしれないという話をしてからだが。

現在も三人が来ているが、普通にアシェルは一緒の部屋で仕事をしている。エリーゼが立って部屋を出て行こうとすると、必ずついてくる。


「あんなことがあったから……エリーゼと一緒にいなきゃ不安なんだ」

「お花摘みくらい大丈夫なので。すぐ帰ってきますから仕事を……」

「だめ?」

「ねぇ、ブルックリン。あれは背後霊かしら」

「それなら可愛いんじゃない? やけにしっかり見える背後霊ね」


後ろから腰に手を回してそんなしゅんとした顔で言われても困る。後ろで影のように控えているゼインに視線をやると頷かれた。


「殿下は通常ですと、やれカエルやイモリやヤモリやヘビやトカゲが見えると意識がそちらに行ってしまうので。むしろ、この部屋でエリーゼ様が視界にいることで他に意識がいかず仕事がはかどって助かっています」

「へ?」

「なので、私にはどうすることもできません。むしろ今の状況は好都合」


親指を立てて嬉しそうに言われてしまった。


「まぁ……あんな事件あったらああなるのも納得できるわね。一緒にいなきゃ不安よね」

「悪魔に憑かれたわけじゃないよ~」

「駄目だわ、殿下は誰かさんと違ってクズ男じゃないから怒るに怒れないわ。あんなに嬉しそうな顔されたら文句も言えない。逆に腹立つ」

「そうね、というかクズ男の処罰はどうなったのよ。アート様からいち早く情報来てるでしょ」

「もうちょっと声潜めて」

「え、あっちも処罰されてるんでしょ。王女殿下も国に送り返されたんだから」

「そういえばナディアにもいい加減手紙を送らないとね」

「ストレスかけたらまずいから今まで黙ってたけど、エリーが回復したならそろそろいいかも」

「あの王太子が絶対先にナディア宛の手紙読んでるから。いいと思ったら見せるでしょ」


フライアたちの会話を背にお花摘みに仕方なくアシェルをくっつけて行って、戻ってくる。お風呂とお手洗いの中と着替え、就寝時以外はずっとこんな感じだ。廊下でもアシェルが常に一緒にいるせいか生暖かい視線しか感じない。


「ねぇ、エリー。そういえばウェディングドレスのデザインは大丈夫なの?」


部屋に戻ると、さっきの話題は話終えたらしい三人が一斉にこちらを見た。


「え、あ! そういえば」


その言葉にさぁっと顔が青くなる。そういえば、すっかり失念していたが、ウェディングドレスのデザインは肩が開いたものにしていたのだ。つまり、今回残った傷跡が見えてしまう。


「忘れてた。変更しないと」

「なんで? あのデザイン気に入ってたよね?」


アシェルが後ろからぴったりくっついて聞いてくる。クロエがやっぱり背後霊よね!と言いたげな顔をしているのでもう少し離れて欲しい。


「肩の傷が見えるから」

「気に入ってるならデザイン変えることはないよ。あの傷はエリーゼが命を張った証拠だから」

「でも傷跡が目に入るとさすがにみんな不快な思いをするんじゃない?」

「結婚式なんだからエリーゼの好きなのを着ないとだめだよ。一回しか結婚式はないんだよ?」

「え、それはそうだけど。どうしよう。あれにもう決めてしまっているし」

「もし離婚したらもう一回結婚式はあり得ますが」


ゼインの小さな独り言には誰も反応しなかった。

アシェルが後ろから抱きしめてきて、右肩の傷跡のあたりをそっと撫でる。後ろから抱き着かれるのには慣れてきたが、肩を触られるのには慣れていないので思わず体がビクリと跳ねた。


「アシェル、こんなにくっつかなくても」

「油断したらエリーゼが離れようとするからね」


アシェルが今度は髪の毛をいじり始める。アシェルの髪とは違って柔らかくもなく触り心地もあまり良くない髪なのに!


「ねぇ、天気いいからお庭に出てみない?」

「なんかこの部屋、生暖かいのよね。そうね、ショコラを探しましょう」

「私、アートに会いたいからそっち方面通って行っていい?」

「池に落ちないでくださいね」


ゼインも含め四人はものの見事に違う方向を向いていた。


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