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「エリアス殿下の婚約者ってどんな方なんでしょう」
ウェセクス侯爵邸でのお茶会の次の日、王宮の庭を歩きながらエリーゼはアシェルに投げかける。
「気が強い人だよ。正妃の娘じゃなくて寵姫の娘だったから結構いじめられていたみたい。いじめから逃げてきたところに外遊に付いてきていた兄上と出会って『お前、私と結婚するのじゃ』って言われたって」
「……強い方ですね」
キャラも濃そうな方だ。
「兄上としては面白い女性枠なんじゃないかな? あの兄上だから気の強い女性じゃないとやっていけないだろうし丁度いいのかもしれないね」
夜会の疲れが抜けきらないのか「んしょ」と池のほとりの石に座るアシェル。
池にはオタマジャクシから順調に成長したカエル達がちらほら泳いでいる。
偶にカエル達にアシェルはエサをやる。そのエサを食べるのに口を開く様子やエサを食べた後の様子が案外可愛かった。個体によって個性が出る。
カエルってヌメヌメしている上にジャンプする動きが予測不能なので苦手だったが、よくよく見るとぼへーとした様子が意外にも可愛い。自分でも変化に「ん?」と思うが……。
後ろから「こんなんでデートなのか? カエルと池を見ているだけで!? 大丈夫なの? この二人?」と、日傘を持ってくれているメリーの視線がビシバシ飛んでくるがスルーした。
「母上にいじめられなかった?」
第二王子の婚約者ということで、外交の場に出る機会もあるだろうと王妃様から教わることがある。今日もそのために王宮にやってきていたのだ。終わったからアシェルと庭を歩いている。
「いじめられてはいません。自信がなさそうに見えてしまう私が悪いので……」
座学の勉強は学園時代に頑張っていたのだが、自信のない様子はふとした瞬間に出てしまう。
「もっと所作を優雅に」とか「目を伏せない」とか。王妃から注意されることはたくさんある。ただ、総合すると「あなたは自信がなさそうに見えて付け込まれる。芯をきっちり持ちなさい」ということだ。
自信のなさには自覚があるので、王妃からいじめられたとは微塵も思っていない。むしろ、なぜかエリアスが乱入してきて王妃とバチバチやり合っている方が怖い。
今日のエリアスはシャーシャー威嚇しているネコを持って部屋に乗り込んできた。やっと庭に出没するネコを捕獲したようだが、完全に敵認定されている。
「見てくれ。やっと捕まえたよ!」
なぜか王妃を完全スルーして私に黒ネコを差し出す。シャーシャー威嚇する見開かれた黄色の瞳と思いっきり目が合ったが、この状況で手を差し出すわけにもいかない。
「か、可愛いネコですね!」
こういった場面で声が震えてしまうところが自信なさげと言われてしまうんだろうなと思う。王妃は扇で顔を隠しながら若干眉間にシワを寄せただけだ。ここでどのように振舞えばいいのか正解が全く分からない。
カエルが跳び出してきた方が皆動揺するし良かったかもしれないなどと思ってしまった。
その場はネコアレルギーの王妃付き侍女のくしゃみが止まらなくなったことと、兄であるクリストファーがエリアスを「仕事しましょう」と回収しに来たことで終結した。