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顔が青白いアシェルと一緒に庭に出ると、予想していたよりも庭に人がいた。


「え! 第二王子殿下。さすがに今日は池に入らないのでは?」


「いや、婚約者のご令嬢と一緒だから池には入らないだろう」


庭にはいい雰囲気のカップルが多かったが、そんな会話がちらほら聞こえてきた。

第二王子が夜会で池に入っているのはそこまで有名なことだったのかとエリーゼは思ったが、実はクロエが自分のお惚気と同様にアシェルとエリーゼの馴れ初めを行く先々で語りまくっているせいなのであった。



しばらく庭で風に当たり、アシェルの顔色が良くなった頃合いで会場に戻る。

すると、アシェルがエリアスに呼ばれてしまったのでエリーゼは一人で会場を回ることにした。今は第二王子の婚約者という立場であるし、アシェルが臣籍降下すると公爵夫人になるので社交は頑張っておかねばならない。


視界に入るブルーのドレス生地とゴールドの刺繍を確認して自信をつけて歩み出そうとしたところで、小柄なご令嬢がエリーゼの前に現れた。

彼女は学園では私達の下の学年だった覚えがあるのと、進路をふさぐように立っていたのとで仕方なく挨拶した。あまり友好的ではない印象を受けたが、第二王子の婚約者となったことで色々言われることは理解している。


「あなたではなくて、殿下はゼイン様と結ばれるはずなのよ!」


「あなたは婚約者にふさわしくない」と言われるだろうなと予想していたが、予想外の名前が相手の口から出てきた。


「まぁ。ゼイン様ですか」


びっくりしすぎてエリーゼはオウム返しをしてしまう。


「そうよ! あなたは所詮お飾りの婚約者なんだから。殿下のお心はゼイン様にあるわ!」


ゼイン様ってゼイン・ブロワ様よね? ゼインって家名のご令嬢はいたかしら?

頭の中が大混乱に陥ったエリーゼを目の前のご令嬢は軽く睨んでくる。彼女は小柄でエリーゼは平均より身長が高いので、上目遣いになっており睨みの効果はない。


「それはゼイン・ブロワ様のことかしら?」


混乱しつつも黙らず会話ができるようになったのは進歩よね。


「その通りよ。二人は思い合っておられるんだから。だからゼイン様はお誘いのあった騎士団を諦めて殿下が臣籍降下された後も公爵領に行かれるんだもの」


そうなのだろうか?

エリーゼは顔には出さないものの激しく混乱していた。


エリアスに「お義兄様と呼んでみてくれ! さぁ! さぁ!」と迫られた時よりも。アシェルに「う~ん。エリーゼが一人の時に嫌がらせが起きたら……ポケットにトカゲをいれておく? カエルは水が必要だからね」と提案された時よりも。ナディアから婚約祝いとして最高級のシルクが送られてきて「アルウェン王国のシルクは有名だからこれでドレスを仕立てない?」という手紙を読んだ時よりも。どの瞬間よりも混乱していた。


「まぁ。でしたら殿下とゼイン様に聞いてみますね?」


頭に大量の疑問符を浮かべながらもなんとか会話をした。黙ったら負けであり、変に返して肯定したと取られても困る。


「あらぁ、パーシル伯爵令嬢。お久しぶりねぇ」


ここでクロエの乱入である。いつもよりも甘ったるい話し方だ。こんな話し方を故意にしているのはクロエ曰く「バカだと思われた方がいろいろ便利」とのことだ。


「あなたの婚約者にダーリンと挨拶をしたいのに見当たらないの。どちらにいらっしゃるのぉ?」


目の前の小柄な令嬢、パーシル伯爵令嬢の婚約者が庭で他の令嬢とイチャついているのを知っていながら、クロエは相手の弱みを華麗に踏み抜いた。令嬢の表情が強張る。


「あら、エリー。殿下が探しておられたわよ。行きましょう」


ダメ押しでフライアまで登場した。おそらく不穏な雰囲気を見てわざわざ駆けつけてくれたのだろう。フライアの婚約者は遠方で話が長い伯爵夫人に捕まっているのが見える。


「お庭で涼んでいらっしゃるのかしら? 一緒に行きましょうよぉ」


「殿下はこちらよ」


クロエとフライアは見事な連携でエリーゼと伯爵令嬢を逆方向に引き離したのだった。


***


「ということを言われたの。ただ、あまり意味が分からなくって。二人には助けてもらって本当にありがとう」


「昨日もお礼は言ってもらったし、当然のことをしただけだよ~。その話を聞く限りなら受け答えは大丈夫なんじゃない? 本人達に確認するって若干煽ってる感じもするし良いんじゃない?」


「え、煽ってる?」


「あの伯爵令嬢を煽ってるって意味よ~。婚約者と信頼関係あるから聞けちゃいますよ!って感じでいいわ~」


「というか、まだいたのね。その勢力って」


「まさかね。アシェル殿下とゼイン様という男性同士の恋愛を推す勢力がまだいたのはびっくりだわ。何年か前に消滅したのかと」


「エリーが婚約者になったのに残党がいるなんてね」


「その勢力が多かった理由って、アシェル殿下にもゼイン様にも婚約者がいなかった上に女性に興味を示していなくて、二人でよく行動してたからでしょ?」


そんな勢力が存在したのかとエリーゼは皆の話を聞いていた。


アシェルに確認したところ「そんなことがあるの? 男性同士の恋愛の話は知らなかった。世界は広いね」と自分のことなのに完全に他人事であった。ゼインに至っては「吐き気と頭痛がし始めました」とうんざりした顔をしていた。


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