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「あ~疲れた~。ねぇゼイン、なんか面白い話して~」
「無茶ぶりしないでください」
ルルとの面会を終え、案内された応接室らしき部屋にて。他の研究員達からも話を聞き終わったところで、エリアスの無茶ぶりが始まった。
「だってぇ~、あの女と話すのほんとストレスなんだよ」
「それは分かります。後ほどネコと存分に戯れてください」
にべもなく告げてゼインは紅茶を飲む。啜ってもいいくらいの気分だが、マナー的にそんなことはできない。
「ゼインが冷たい~。アシェル~。あ、そういえば気になってたんだけどさ。アシェルってエリーゼちゃんともうキスした?」
ゼインはあやうく紅茶を吹きそうになった。
「してないよ」
せっかく我慢できたのに、あっさり答えたアシェルのせいでゼインは飲んでいた紅茶が変なところに入ってむせた。吹き出さないようにするのが精一杯だった。
「げほっ」
「えぇ~、意外! まだなの?」
「結婚式までしないものなんだよね?」
「え。うちの弟がピュアなんだけど。いやむしろ世間知らずというかやばいレベル? ね、ゼインも思うよね?」
「げほっごほっ」
「だよね~、お年頃ならキスくらいしてるよね。ね、アシェル。もしかして嘘ついてるのかな? おにーさんに言ってごらん?」
「え、兄上はしたの?」
「いやいやいや、俺と婚約者は物理的に離れてるんだから無理でしょ」
「だよね。びっくりした」
エリアスはルルの前では「僕」にしていた一人称を「俺」に戻している。
「う~ん、キスはまだっぽいね。俺の方がびっくり」
「僕からしたら兄上がまだあの女性を生かしていたのがびっくりだよ」
「仕方ないよ。不明点がまだあったからさ。国外に出すわけにもいかないし」
「てっきり処分したか、修道院に送ったのかと思ってた。スチュアートは国外に出すんだし」
「そうできたら良かったんだけどね~。殺すのもお金かかるんだよ。スチュアートは訳アリでも外見さえあのままならOKって向こうが言ってくれるからさ。鑑賞用の愛玩動物的な?」
二人の口調はそのままにガラッと変わった話題。ゼインの背中に再び冷たいものが伝う。
「アシェルはあの女の子、今後どうするのがいいと思う?」
「もう大体決まってるんでしょ」
「アシェルも考えてよ~」
恐ろしい。まるで手紙の便せんを選ぶかのように、ルルの今後を決める様は。
「隠れ蓑にちょうどいいんじゃない? 王家や貴族の不祥事とかマズイことが起きた時に目くらましとしてあの女性をどうにかするとか」
「やっぱりそうだよね~。なんかあれば、あの女の子がスパイだったとかで処刑すればいいよね。スパイだったって発表だけして処刑せずに、加虐趣味のある貴族に嫁がせてもいいんだけどさ」
「だから彼女に母親が死んだこと言わなかったんでしょ?」
「そうそう。死んだって知ったらあのタイプは嘘だと思ってここを抜け出そうとするだろうし、面倒かなって思って。母親も馬車の事故で亡くなってるし、これはもう陰謀の臭いしかしないよね」
むせた余韻で喉に違和感がまだある。
ゼインはこの二人がどれだけふざけていても王族なのだと改めて認識した。
この会話の後は各々、ネコと戯れたり(基本的にネコには嫌われているようで逃げ回るネコを追いかけていた)、池をのぞきこんだり(ほとんど水面に顔がくっつきそうだった)して過ごしていた。




