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生産体験.2

木工だけで終わらすつもりなんてなかったのに・・・。よ、予想外・・・!

「次は木工ですね。護符(アミュレット)を作ります。ですがモカミ様が宝飾の際に使うスキルをほとんど取ってしまったので成形まではあっという間でしょう。今回はお手本をもとに作ってみてください。モカミ様はどの護符(アミュレット)がいいですか?」

 

 リーアが机を二回叩くと先程まであった宝飾の道具が消えて、彫刻刀と鉛筆、木の板、それぞれ形と意匠の違う6枚の護符(アミュレット)が現れた。右から鷹の意匠のひし形、蛇の意匠の正方形、犬の意匠の五角形、馬の意匠の台形、兎の意匠の三角形、梟の意匠の円形の護符(アミュレット)がある。

 どれも緻密で美しいが何か効果とか違うのだろうか?


「形とか意匠って何か効果とかと関係あるの?」


「ええ!もちろんですとも!形、意匠、木材によって得られる効果は様々です!木材は特に特別なものではありませんが、右からSTR、VIT、DF、DEX、AGI、INTに対応している形と動物なんですよ。なので、護符(アミュレット)を作るときは形や意匠の組み合わせを考えて作るんです。これ以外の形や意匠もあるので気になるならガルナの街の図書館で調べてみてください。モカミ様は何か上げたいステータスはありますか?」


「INT。INTを爆上げしたい」

 

 即答だった。

 俺の切実な悩み。DEX以外にSPが振れないこと。レベルアップによるステータス上昇は恐らく微々たるものなのでであまりにあてにならない。種族特性のSP獲得量アップによる成長のしやすさなど【極致】前ではDEX以外全くの無意味。これから始まる生産ライフでの一番の敵は話を聞く限り恐らくINT。先程の龍翡翠のブレスレットで分かったことだが足りないINTは装備とアクセサリーで補えばいい。つまり!INT極振り装備&アクセサリーさえ手に入れば俺の生産がど安定するというわけだ。極振りしかできないなら身に着けるものを極振りにすればいいじゃない。


「INT爆上げか・・・なら円形に梟だね。それに星の意匠を付け足してみたらどうかな?星もINTが上がるよ」


「よっしゃ!それで!まずは【カット】で円形にするであってます?」


「あってますよー。できたら彫刻刀で梟と星の意匠を彫りましょう。お手本修正しといたから」


 いつの間にかリーアがお手本の梟の背後に五芒星が輝く意匠に変更したようだ。

 そこまで目を離していたわけではないのに・・・もしかして、【彫刻】みたいなスキルがあるのかもな。にしても早すぎだが。


「【カット】、できたら集中・・・・」


 目の前のほわほわした茶髪のお姉さんがただものではないと思いつつスキルを発動させる。円形にカットされた厚さ1cmぐらいの木の板に彫刻刀を構えつつ、お手本をよく()()する。細い彫刻刀で二重に縁どられ、中心には緻密で貫禄あるワシミミズク、背後には太めの彫刻刀で掘られた五芒星が縁に収まるように彫られている。

 まずは鉛筆で薄く下書き。DEXともしかしたら【観察】のおかげか現実よりすらすら描ける。縁の線に細い彫刻刀をあて、絶妙な角度で滑らせる。時折、木を回転させながら彫っていく。


『スキル【彫刻】LV.1が追加されました』


 2本目の縁どりが終わった頃、システムの通知音が流れた。一度、肩の力を抜き、深く息を吐く。


「はぁー、あっ、【彫刻】が取れたみたいです。これも【カット】同様イメージですか?」


「正解です!いやぁ、本当に早いですねぇ。それに手彫りも上手ですし・・・DEXの補正があったとしても素人ならまずこんな綺麗に円は彫れませんよ。異界の方で何かやっていらっしゃってたんですか?」


 異界・・・。ああ、そういう設定ね。つまり現実(リアル)か。

 BGO内でのプレイヤーはNPCの間で異界からきている旅人という共通認識がされている。


「まぁ、向こうでも器用な方だったと思うよ。模型作りとかチマチマしたの好きだし。わりと美術系、工作系の才能はあったのかもしれない」

 

 こんなに褒められるのは慣れていないのでつい遠回しな言い方をしてしまう。

 これは自慢だが中学時代の美術の成績は5だった。姉が大雑把すぎる反動だと思う。


「納得です。【彫刻】は【カット】同様イメージをするんですがお手本を見るだけじゃ、どうしても平面的になってしまってうまくいかないんです。ですので、お手本を触りつつイメージすると、上手くいきやすいですよ。【彫刻】の上達法は触ることです!」


「はい。やってみます・・・・」

 

 言われた通りお手本を手に取り、中心の梟に触れた。羽の凹凸、厚み、足の彫り、目の丸み、お手本の梟を余すところなく見つめ、触り切った。積みあがったイメージを実行すべく、円形の板に手をかざした。


「【彫刻】!・・・・・・・どうかな」


『【彫刻】がLV.3に上がりました』


 リーアも総司も固唾をのんだ。今はスキルレベルより無事に彫れたかどうかが気になった。確認すべくかざした手をどける。そこにいたのは貫禄あるワシミミズク・・・・ではなく、目がクリっとしたメンフクロウだった。


「は・・・・」


「ふっ、ふふ、ふ・・・違う梟だ、ね!くっくく」


 必死に笑いをこらえるリーアに総司は言い訳をする。


「ち、違うんです。よく、わからないけど突然イメージの中にメンフクロウが割って入ってきたんです!それに彫刻はばっちりですし・・・ダメですか・・・・?」


「ううん!大丈夫。それだけできてればお手本もばっちりだろうし。続けちゃっていいよ」


 どうやら落ち着いたらしいリーアは手をひらひら振って、続きを促す。俺は恥ずかしさで顔を赤くして五芒星の彫刻に移った。ただ、五芒星は梟と違って線をまっすぐ引いて繋ぎ合わせるだけだったので簡単だった。あとはざらつきや細かいところを【研磨】して微調整。最後に紐を通す穴を開けて完成だ。


「おぉ、これもまたうまく出来ましたねー」


 リーアさんは褒めてくれるが俺はどうも完成とは思えなかった。

 足りない・・・何かもっとよくできるのではないか・・・・?

 メンフクロウの目が俺にそう語り掛けてくる気がする。この天啓に何を返すか・・・。

 メンフクロウからの確かな天啓を形にすべく俺はとある提案する。


「リーアさん、このメンフクロウの目にさっきの翡翠の玉つけられませんかねぇ?」


 このメンフクロウの目の大きさ・・・ちょうどさっきの翡翠玉が入りそうなのだ。


「成程!いいですね!翡翠にはDFとINTを上げる効果があるのでこの護符(アミュレット)にピッタリです!瞬間接着剤を貸しますので!」


「よしきた!【彫刻】!あとはイベントリから0.5cm玉を二つ出して、目の窪みに接着剤を薄く塗って翡翠をはめ込む・・・・完成だ!」


 そうしてできたのは翡翠の目をはめ込まれたミステリアスなメンフクロウの護符(アミュレット)。 これはINTも爆上がりしそうな予感・・・。


「☆5の翠木梟の護符(アミュレット)ですか!ご希望通りINTが100も上がるみたいです。それに精神防御耐性(中)、金銭アップ(小)もあります!体験でここまでやってしまうなんてもうこれは生産職に大変むいていらっしゃいますね!」


「お、おぉ!と、ところで精神防御耐性とは?」

 

 早速、装備しようとすると装備するより先にリーアが先に驚いた。それに俺も驚き、戸惑いながら返事する。

 何でこの人俺が装備するより先に効果とか名称がわかるんだ?


「精神防御耐性とはいうのは、魅了、恐怖、幻覚などの精神異常攻撃を受けにくくし、それらの状態を直しやすくしてくれるんですよ。まぁ、このガルナにはそんな絡め手を使ってくるモンスターはいませんが」


 成程ね。俺がそこまで行けるかどうかは分からんが量産できれば儲かりそう。それになにはともあれついにINTがDEXを越した!あとはレベル上げをするだけ・・・・だけど果たして俺はこれで戦えるのか?

 偏りが激しい自分のステータスを思い出し、不安になる。


【モカミ】LV.1 人類種(ヒューマン)

職業:生産職(仮)


HP  1050/1050

MP  2700/2700(1050/1050)

SP   0


STR:105

VIT:105

DF:105+70

DEX:105(+100)

AGI:105

INT:105+165


【極致】LV.1【カット】LV.3【観察】LV.2【研磨】LV.5【貫通】LV.1

new【彫刻】LV.3

〈称号〉

【最後の人】【運営からの餞別】【挑戦者】


〈装備欄〉

頭:なし 胴1:初心者のシャツ 胴2:初心者のベスト 腰:初心者のパンツ


足:初心者の皮靴 左足:なし 右足:なし 左腕:なし 右腕:なし 


武器1:なし 武器2:なし


〈アクセサリー〉

1.初心者のウェストポーチ

2.龍翡翠のブレスレット

3.翠木梟の護符(アミュレット)

4.なし

5.なし

6.なし





 


 

次回、鍛冶!できれば縫裁まで

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