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生産体験.1

「はい!それでは!ガルナ生産指南所、受付嬢リーアが!生産の何たるかをお教えます!」


 案内されたのは木の温もりを感じる部屋でほわほわしたお姉さんもといリーアが大きな黒板の前に立って、まるで教師のように授業を始めた。


「では!起立!宜しくお願いします!」


「よ、よろしくお願いします!」


 なにぶんこちらは学生であるので起立と言われれば唐突な状況でも立って、挨拶をしてしまう。沁みついた学生根性は仮想空間でも発揮されてしまうか。


「着席。よろしい。では、授業を始めます!まずはご自分のステータスを開いて、装備欄というところを開けてください」


〈装備欄〉

頭:なし 胴1:初心者のシャツ 胴2:初心者のベスト 腰:初心者のパンツ


足:初心者の皮靴 左足:なし 右足:なし 左腕:なし 右腕:なし 


武器1:なし 武器2:なし


〈アクセサリー〉

1.初心者のウェストポーチ

2.なし

3.なし

4.なし

5.なし

6.なし


「開けました」


 今の俺の装備は初心者の衣一式だ。白いシャツの上にこげ茶のベスト、同色のパンツとしっかりめの革靴。腰には剣もさせるウェストポーチを下げている。


「よろしい。先程、受付で話した通り、生産には宝飾、木工、鍛冶、縫裁、薬品、魔道具、錬金術の7つがあります。ざっくり組み分けしてしまうと、宝飾と木工がアクセサリー、鍛冶、縫裁が装備、薬品、魔道具、錬金術はアイテム作りが基本ですね!それと装備とアクセサリー、一部アイテムには耐久値というものが存在します。生産職はそういった耐久値を元に戻すといったことも仕事になります。あとは改造とかね」


「成程。制作、修復、改造が生産職の仕事ってことね。そういう作ったものとかって、みんな、どこで売ってるんですか?」


「基本はみんなギルドに卸しているわ。上達してくると他の店に卸したり、バザーで売ったり、最終的には自分のお店を持って売ることとか」


「へぇー夢があるね」


 自分の店かそれはいいな。自分の作ったものが売れて、名が挙がるのはさぞかし気持ちいいことだろうな。


「そう!生産には夢がある!作ったものが売れるって快感よ!そんなわけで!モカミ様にはこれら7つの生産を体験してもらいます!その上で自分がどこへ行きたいか選んでね!最初は何をやりたい?」


「そうだな・・・最初は宝飾で木工、鍛冶、縫裁、薬品、魔道具、錬金術の順番で」


「OK!じゃあ!早速、始めましょう!」


 そう言ってリーアは総司の机を軽く叩くと、岩とノミ、ハンマー、大きめの針、青色の紐が現れた。おお、叩くとでるのか。打ち出の小槌みたいだと思った。


「今回はブレスレットを作ります!では、まずこの岩をノミとハンマーで割ってみてください!」


「何の岩です?これ」


ぱっと見、ただの灰色のごつごつした岩だ。


「この岩はシークレットストーンという岩で割ると宝石の原石が中からコロッと出てくる不思議な岩です!とりあえず割ってみてください!」


 言われるがままにノミを岩にたてノミの柄を金槌で何度か叩くと岩が何故か綺麗に真っ二つに割れた。普通はこんな割れ方はしないので困惑していると頭の中にシステムの通知音が流れる。


『スキル【カット】LV.1が追加されました』


「〈カット〉?」


 するとリーアが驚いたように説明してくれる。


「わぁ、こんな早く〈カット〉のスキルを取得する人は初めて見ました!それに岩の断面も凄い綺麗!モカミ様、もしかしてDEXにめっちゃ振ってらっしゃいます?」


 極振りっす。


「DEXの高さとスキルの取得のしやすさって関係あるんですか?」


「本来、スキルは何度か同じ工程を繰り返して取得できるものでなんですよ。あまり知られていませんがDEXにそこそこ振っているととスキルが他より取得しやすいということがわかっています。例えば、STRとDEXに振っている方がSTR関連のスキルを取得しようとするとDEXに振っていない方に比べると取得するまでの反復作業が短いという報告が挙げられているんですよ。」


「へぇーDEXにそんな力が!」


これは絶望的だった戦闘系のスキルも・・・!


「まぁ、DEXだけ高くてもあまり意味はないんですけどね!要はバランスってやつです」


「・・・・・・・さいですか」


 ぬか喜びさせおってからに・・・・。だが良いことを聞いた。基本、DEX中心の生産系スキルならば俺は最速でとれるということだ。それに【極致】の効果を考える限り、俺は本来のDEX以上の能力があると推測する。これは要検証だな。


「・・・おぉ、めっちゃ綺麗な緑。磨けばもっと凄いかも。翡翠か?」


 気を取り直して、割った岩を見ると中からラグビーボールぐらいの緑の原石が出てきた。素人目から見ても良い品物だということが理解できた。


「ええ!大変、珍しいものですよ!ラッキーですねぇ!☆5の龍翡翠ですね!質も大きさも申し分ないです!あ、ちなみに宝石のランクは☆1~10がありまして、ランクの高い宝石ほどアクセサリーにしたとき高い効果を発揮しますよ。他の生産で使う素材も同じです!じゃあ、これを〈カット〉のスキルを使って拳ぐらいの大きさにカットしてみてください。大きさをイメージしてカットと唱えてみてください」


 イメージ・・・・今が歪なラグビーボールだとすると・・・その端を横10cmぐらいのところ切り落とす・・・感じで・・・・。

 龍翡翠を様々な角度で見たりペタペタ触って感触を確かめて、イメージを高めていく。


「【カット】」


 イメージが高まりきったところでスキルを唱える。するとイメージ通りに原石がカットされた。


「おぉ!これがスキル!」


 BGOでの初めてのスキル発動に感動する。【極致】のスキルは常時発動型だからあまり使った気がしなかったので、任意発動型のスキルを使えたのは嬉しかった。


『スキル【観察】LV.1が追加されました。』


【観察】?見た感じ常時発動型だけど、まぁ、後でいいや。


「うまく出来ましたね!では次はこれを輪切りでにしてください。幅はそうですね。ブレスレットのデザインをご自分で考えてもらって、それに沿って切ってみてください!終わったら玉にするのでサイコロ状に切ってください!サイコロの大きさもモカミ様が考えてみてください」


「うーん・・。大きい玉から小さい玉のデザインがいいなぁ・・・だから・・・少し大きめに1.3cm、1cm、0.8cmで三枚・・・10cmは切りすぎたかもな。残りは適当は何か、でっかい玉作りたいから8.3にカットしよう・・!だから・・・・だいたい・・・よし!【カット】」


 思い通りに切れた翡翠の輪切りを見て、気分が良くなる。別のゲームで敵を自分の力で倒せた時の達成感に似ている。生産も同じなんだな。


「次はサイコロ状にカットすると・・・四角に当てはめて格子状に・・・立方体に・・・・【カット】!」


 原石はたちまちサイコロ状になって山となる。


『【カット】がLV.3になりました』

『【観察】がLV.2になりました』


「やった!」


 スキルのレベルも2も上がって、きれいなサイコロの山。断面から覗かせる少し青みがかった緑色がとても美しい。


「すごい上手です!初めての方はイメージがうまくいかなくて歪になってしまったりするんですが・・・しっかりサイコロ状になっていますし、もしかして、もともとそういった適性が高いのかもしれませんね!大きめに切っておくのもグットです!では次は横に置いてあるヤスリで角をとって丸くしてください!モカミ様は恐らくすぐに【研磨】がとれると思うので取れたら、【カット】と同じようにやってみてください」

 

 ヤスリのザリザリとした音が俺を刺激する。

 思えば小学生の図工の授業はかなり好きだった。木を使って物を作る授業ではつやつやになるまでずっとヤスリ掛けをしていた子供だった。この作業はそんな在りし日の自分を思い出させる・・・


『スキル【研磨】LV.1が追加されました』


 在りし日の工作少年だった自分を思い出しているうちに【研磨】が取れた。俺は手作業をやめ小さいサイコロを一つ取り出して両手で包むように閉じ込める。そして、イメージする。イメージするはヤスリ掛けの工程と綺麗な球体にされていく翡翠。


「【研磨】」


 そっと両手を開くと手は研磨された翡翠の粉で白くになっていた。その白に映えるような美しい球体の翡翠が手に乗っていた。一つできたら箱に入れて、今度は同じ大きさのキューブ状の翡翠を一気に掴み取り研磨した。結果は成功。そして、残りのキューブを全て研磨しにかかる。


『【研磨】がLV.5に上がりました』


 気付いた時にはスキルレベルが5になっていた。玉がいっぱい、粉もいっぱい。


「はい!惚けていないで!ラストスパートですよ!最後に穴をあけて紐を通したら完成です!あ!粉は捨てないでくださいね!龍翡翠の粉は薬にもなりますから!イベントリにしまっておいてください!針でつついて【貫通】のスキルを取得しちゃったら!必要な分をガンガン開けましょう!」


「はい!」


 ひたすらに作業ゲーだが凄い楽しい!ゲームで簡略化されてる分楽だけどちゃんと大変さが伝わってくるこれが生産!一つしか体験してないけど何かつかめちゃってる気がする!


『スキル【貫通】LV.1が追加されました』


「来たー!」


 謎のハイになっている俺は【貫通】のスキルを駆使して玉に穴をあけまくった。途中で調子に乗って玉を並べてスキル発動をしたら成功した。必要分揃ったのでデザイン通りに玉を紐に通して、結ぶ。


「おめでとうございます!完成です!」


「いやったー!」


 両手を上げて勝利のポーズ。

 戦闘に勝るとも劣らないこの快感!悪くない・・・!


「お疲れ様です。できたものは・・・おぉ、品質、最高、☆6の龍翡翠のブレスレットですか!もとの素材も良かったのもありますし、作り手の腕が良いからかランクが上がっていますね!素晴らしい効果です!是非、着けてみては?」


【モカミ】LV.1 人類種(ヒューマン)

職業:生産職(仮)


HP  1050/1050

MP  1700/1700

SP   0


STR:105

VIT:105

DF:105+50

DEX:105(+100)

AGI:105

INT:105+65


【極致】LV.1【カット】LV.3【観察】LV.2【研磨】LV.5【貫通】LV.1

〈称号〉

【最後の人】【運営からの餞別】【挑戦者】


「な、なに?」


 画面を操作してブレスレットを装着してみるとなんとDFが50、INTが65も上がっていた。俺は信じられずアクセサリー欄にある龍翡翠のブレスレットの解説を見る。


☆6龍翡翠のブレスレット 品質:最高 製作者:モカミ

龍の渓谷で育つ良質な翡翠でできたブレスレット。制作者の腕が良いためもとのランクより上がっている。DF+50、INT+65


「驚いてますね!宝飾は今取ったスキルの他に【彫金】というものもあるから、身に着ければさらに効果が上がりますよ。あと宝石によって効果も違うから面白いんですよ」


「へぇ~!成程。宝飾に関連するステータスってわかります?」


「宝飾は基本DEXだけ。魔法効果をつけるとなるとINTもいるわね。他の生産も同じ。鍛冶はある程度のSTRもいるけど100もあれば足りると思う。でも生産の魔法効果って結構重要だからINTも上げておくと便利ですよ。あとINTが高いとレシピ開放しやすいの」


「レシピって何ですか?」


「レシピっていうのは生産するときの設計図。一度、レシピを開放すると効率よく量産できるようになるんですよ」


 それは生産して稼ぐなら重要だ。量産は金儲けの第一歩だしな。そうなると、俺の敵はINTか。だが、今回の体験で打開策は見えた気がする!





 









次回、木工、縫裁、鍛冶

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