私はおにぎりを持って1人山に登る
年が明けて3日目の午前1時、私は暖かいベッドから抜け出し目覚めの熱いシャワーを浴びてから台所に向かう。
昨夜寝る前にスイッチをオンにしていた炊飯器の蓋を開ける。
米農家の友人から購入した新米が美味しそうな匂いを漂わせ炊き上がっていた。
ボールにご飯を移し少し冷ましてから手に塩をつけおにぎりを握る。
1度食ってみたいと思っていた私の顔くらいある大きなおにぎりを握った。
握ったおにぎりに最高級の海苔をご飯が見えなくなるように張り付ける。
おにぎりをバスケットに入れる、おかずは米農家の友人に分けて貰った自家用の大根で作った沢庵。
部屋の戸締りを確認し、同棲していたパートナーが正月はお母さんと過ごしたいと急遽元旦に帰省したので、1人寂しくマンションの駐車場まで歩く。
駐車場から車を出し太陽が良く見える山に向けて出発した。
街の中では大晦日の夜から騒ぎ続けている若者達が、大量に動員された警察官補助アンドロイドに次々と逮捕されている。
若者達の行動には顔をしかめるが、2昼夜以上騒ぎ続ける事が出来る彼等の体力には逆に感心するね。
山の麓にある駐車場に車を止め、バスケットを持ち懐中電灯を片手に登山道を登る。
登山道を登ること約2時間、やっと頂上に着いた。
今の時間は午前6時、まだ太陽は顔を出してない。
山の頂きに腰掛け、持ってきたおにぎりにかぶりつく。
美味い!
やっぱり新米のおにぎりは美味いな。
おにぎり約半分と沢庵を腹に納め水筒に入れて来たお茶を飲んでいたら、地平線の彼方から太陽が顔を覗かせた。
顔を覗かせどんどん空高く昇る太陽の隣には大晦日の朝に突発的に発見された、地球衝突コースに乗る巨大な隕石が刻一刻と大きくなっていくのが見える。
あと1時間もするとあの巨大な隕石は地球に激突し、人類は月面都市や太陽系の惑星観測基地にいる極僅かな人たちを除き全滅するのだろう。
隕石が地球に接近している影響だろうか? 風が強くなってきた。
ポケットから以前不眠に悩んでいたとき医者に処方して貰った睡眠薬の残り20錠程を取りだし、お茶で喉に流し込む。
意識が朦朧となってきた今、私は天高く昇る太陽に向けて手を合わせ呟いた。
「今年も良い年になりますように」