地獄
報われない男なんてどうでもいいから早くかわいい女の子書きたい
フラフラと列に並んで歩く。
岩が足裏に突き刺さる。
遠くで怒号が聞こえる。
俺は絶望していた。
冤罪で処刑された者もこんな感情だったのだろうか。
周りを見ると人々が悲鳴を上げて苦しんでいる。
案内板には、「針地獄」「熱湯地獄」などよく言い伝えられているような地獄の数々。
先程職員が言っていた。
地獄では刑期のように罪の重さによって決まる。俺は人間界でいう5千年らしい。
はっ5千年…もうどうだっていい。
現世で二十数年しかいきてないのに。
なんとでもなれという感じだ。
自暴自棄になり、わけも分からないまま列に並び、何かの順を待つ。
これは何の列なんだ…?
ゆっくりだが前に進み始めた。背伸びしてみると、前にいる者は皆震え慄いている。
まさか、この列…
「はい次。」
職員の指示で俺は最前列に立った。
目の前には大きな座卓。いかにも地獄をイメージして造られたような煌びやかでおぞましい椅子。
そこに鎮座しているのは…
閻魔
…ではなく…よ、幼女?!
「え…あ、幼女…」
「おい!そこのお前!閻魔大王様になんて口を聞くのだ!」
「なんすかこれ…え?閻魔…様?」
閻魔と言われても、どこからどう見ても黄金の髪に丸い目をした小さな子供だ。
言われてみれば閻魔…っぽい服を着ているが…。
どう見ても5歳女児だろ…。
「おいそこの人間はよせぇ」
「!?」
閻魔が口を開いた。
「その通りだ!早くしろ!」
続けて職員が怒鳴る。
「あなたが…閻魔様なんですか…?
これから何をするんですか?」
「何言ってんだ。さてはお前、最初の説明聞いてなかったな?」
最初の説明…ああ確かに職員が説明していた。しかし地獄行きのショックで何も聞いていなかった。
「私が説明する!閻魔大王様に説明させるな愚かな人間!」
隣にいた側近のような職員が割り込む。
「此処では閻魔大王様が地獄での刑期や、内容をお決めになられる。人間界での行いを、この鏡に映し出してな。
勿論嘘をついても無駄だぞ。その際は舌を抜くからな。」
!?なんだって。それなら俺が悪人じゃないことが証明されるのでは!?
「お、お願いします閻魔様!俺は本当に真面目に生きてきました!地獄なんかに居ていい人間じゃありません!」
必死に弁明した。
「うるさいな…そういう奴に限って嘘つものだ…まあ待っておれ。今鏡に映し出す。」
大きな鏡が一瞬歪み、生きていた頃の俺の姿が映し出された。
必死に勉強する姿。真面目に仕事する姿。
「…?人間。お前なんか悪いことやったからここにいるのではなないのか?」
「な、何もやってません!なのに連れられたんです!」
「…まじか」
閻魔がボソリと呟いた。
その瞬間、周りの職員がザワついた。
「まさか不具合?」
「最近は全然無かったのに…」
「この人間天国行きだったのか」
??どういうことだ?不具合?え?俺は天国行きだったのか?
「はあ…面倒事を増やしおって…」
閻魔がやれやれというように肩を落とす。
「人間。疑って悪かったな。お前は何も悪いことをしておらん。」
「…!!閻魔様…!分かってくれたんですね!」
俺は嬉しくてたまらなかった。ようやく天国に行けるのだ。
「最近は現世での人口爆発に伴って、あの世の人口も増えておる。それで今回のように時々サーバー不具合で天国と地獄を間違えて送り出してしまうことがあるのだ。」
サーバー不具合…。そんなことで…。
段々あの職員にムカついてきた。
でも天国に行けるのならそれも許そう。
「それで…俺は天国に行けるのですよね?」
「ああ、それがだな…」
?なんだ?行けるよな?
だってさっきあの扉から…
?!
無い。振り返っても先程来た扉は何処にも無かった。
「事件防止の為1度地獄に来たらもう戻れなくなっているんだ。」
は…そんなのありかよ…。
俺は膝から崩れ落ちた。
こんな不憫な人間がいていいわけない。
「まあそう落ち込むな人間。地獄と天国では数年に1回、解放日を設けておる。
その時に地獄での刑期を全うした者は天国に行ける。
その時にお前も天国に行けばいい。」
「その解放日は…いつなんですか?」
「444年後と言ったところだな。」
よん…ね…は…終わっ…た……
俺は…四百四十四年…地獄で暮らすことになった……
「はわ…あ、あの人間さんどうしたんだろう…?」
まだつまらないですね。私もそう思います。
その世界線の地獄観については次話以降説明が補われていきます。
またどこかで。