報われない人生
初めまして。來繰円絽と申します。
報われない男の地獄日記。
よろしくお願いします。
"努力は必ず報われる"
俺はこの言葉だけを信じてこの二十数年を生きてきた。
小学生の頃から真面目に勉強をしてきた。中学、そして高校と、学生としての義務を全うしてきた。
目立つ方ではなかったが、ある程度の友達と過ごし、悪行に手を染めることもなく、至って真面目に、平凡に生きてきた。
しかし、俺は容量が悪かったらしく、どれだけ勉強しても中の上に留まり続けた。
そのせいだろうか。俺には良くも悪くも「平凡」のレッテルが貼られていた。
友情も恋愛もそれなりに体験したが、「それなり」にすぎなかった。
真面目で、平凡で、平凡な日々だった。
そんな俺も社会人となり、大きく変わった環境に不安を感じながらも心を躍らせていた。
しかし、現実は厳しいものであった。
難なくして入社した会社は、俗に言うブラックであった。
この期に及んで真面目に努力すればきっと認めてくれると思っていた。
しかしその意に反して、俺が仕事を断らないのをいい事に上司は面倒事を押し付け、仕事量と給料が見合わないことは当たり前となり、常に疲労困憊状態であった。
容量が悪いことなんて自分で目に見えて分かっていたが、もうそんなことは取り返しつかなかった。
いつものように疲れきった帰り道のことであった。
時間は既に深夜。もう何を考える気力も無く、フラフラと帰路を辿っていた。
恐らく注意力も判断力も底に落ちていたのだろう。傍から見れば直ぐに分かるような看板に気づかなかった。
『工事中。マンホール開いてます。立入禁止。』
暗闇の中、ぼやっとした頭のまま、足を滑らせた。
重力に逆らえず、重い頭がコンクリートに強く落ちた。目の前が真っ白になる。
次の瞬間、
鈍い音と共に、俺の平凡な人生の幕は閉じた。
…努力なんて報われなかった。
でも、こんな真面目に生きてきたんだ。きっと天国で幸せに暮らせるだろう…。
………と、ここまでが俺が思い出せる記憶。
思い出せないのは、なぜ、死んだはずの俺が『受付窓口』にいるのかだ。
なんだここ?役所?フロント?
周りにはごった返すほどの人々。
まさかここが天国?…いやいやそんな訳ない。
受付窓口って…ここで天国に行く前に受付しなきゃいけないってことか?
現代社会と何ら変わらないじゃないか。あの世も大して変わらないってことか。
…ん?俺はもう死んでるからあの世っていう言い方はおかしいのか?
「…あの」
「!はっ…はいっ」
状況を飲み込めず話しかけられていることに気づかなかった。
係員のような人だ。ここの職員か?
「あの、ここにお名前と死因の記入をお願いします。」
「え、これ書いたら天国に行けるってことですか?」
「今お書きになられている資料から天国と地獄を決めさせていただきます。」
はあ…よかった…。ここまで真面目に生きてきたのだからきっと天国だ。
そう思いながらペンを走らせる。
天国の暮らしはどんなものだろう。雲の上で暮らすのだろうか。死んだ人に会えるのだろか……なんだか楽しみになってきた。
ふと周りを見ると、もう記入の済んだ人達が天国と地獄に分かれて列に並んでいる。
天国への扉に続く列に並ぶ人は皆穏やかな顔だ。それに反して地獄へと並ぶ人は絶望する者、発狂する者などカオスな状態だ。
悪行を働いた罰だ。自業自得。
俺みたいに真面目に生きてきた人が結局報われるんだ。
「終わりました?」
「あっはい。できました。」
「○○様ですね。今お調べします。」
やっと俺の平凡で報われない人生が終わり、天国での幸せな暮らしが始まるのだ。
「○○様は……
地獄行きですね。」
?
「……え?間違ってません?」
「いえ、○○様は地獄ですね。あちらの列にお並びください。」
「は?何言ってるんですか。現世での行いから決めるんですよね?」
「はい。ですから、○○様は地獄行きとデータが表示されていますので。」
「はい?!おかしいでしょなんで俺が地獄なんて行かなきゃならないんですか?!」
「大変混み合っていますので速やかにお並びください。」
は???俺が?この俺が地獄行き??
何故?意味が分からない。なんでだよなんで死んでまで報われねえんだよ!?おかしいだろ!!
職員が無理矢理俺の背中を押して地獄への扉に入れる。
おかしい。なんで。なんで。俺の中の理性が壊れた。
目の前に赤黒い世界が広がった。
悲鳴。嗚咽。耳を塞ぎたくなるような音。
ゴツゴツとした地面が足裏に刺さる。
俺は地獄に堕ちたのだ。
そう実感したと同時に、俺は絶望し、もう何も考えられなくなっていた。
よくある異世界ものの男主人公。
私が1番嫌いなタイプです。書きやすいんですけどね。
地獄のキャラ達かわいいので待っててね。
気が向いたら次話投稿します。
報われない男の地獄日記。どうぞ愛してやってください。
それではまたどこかで。