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43. 友達0人からのごめんなさい


 私が子供みたいにわんわん泣きじゃくりながら走ってきたから、カーラがひどく動揺していた。


「お嬢様?何がありました?また嫌がらせされましたか?」


涙が止まらないから首を横に振るしか出来なくて、困ったカーラが言った。


「言ってくだされば相手を消してきますよ?」

……冗談だと思う、多分。



 めそめそしながら帰宅して、着替えてベッドに寝転んだ。手にエリアスのハンカチを握り締めていたから、リラが「お返ししなかったのですか?」と質問してきた。私は「うん」と答えるので精一杯だった。いろんな事がありすぎた。もう何も考えたくない。



お母様に相談しようかな。でもお母様は「だめならさっさと身を引くのも大事よ」と言っていた。きっともう、エリアスの事は諦めろって言われるだろう。


「私はソフィアの友達だから!」とコラリィが言った時、私はソフィアが羨ましいと思った。ゲーム中、ココはヒロインの良き友人として登場する。恋愛に関しても攻略ヒントを与えるキャラクターで、明るくて可愛い。


私が友達と呼べるのは何人だろう?

味方だった人たち全員に、私は「大嫌い」と言い放って逃げてきた。


(ばーかばーか、知ってたけど私のばか!)


もう学園に行きたくない。教室に入りたくない。アレックスはすでに私を敵対視してるし、サシャとリュカは変な事言うし、エリアスにまで嫌いって言ってしまった。ばかだ……。


(弱気になるな、アリス……。もともと高等部では皆には近づかないつもりだったじゃない!独りになったって平気!……平気……だと思う、多分)


ベッドの上でため息をついて、ハンカチを胸にぎゅっと抱き締めた。


「とりあえず、このハンカチはもらっちゃおうかな~……」


「お嬢様……それはさすがに……」

私のナチュラルストーカー発言にリラがドン引きしていた。


「でも、もう……だめなんだもん……」


また、私がびえええと泣き出したから、カーラが無言でタオルを渡してくれる。存分に泣いてから二人に順番に説明した。



「ジュリアン様については、私がエミリーに聞いてみましょう」

ジュリアン付きの侍女エミリーと、リラは仲が良いらしい。それは素直にお願いすることにした。あんな風に会うのは何回目なのか、学外でも会ったりしてるのか気になってしまう。

そして、エリアスが手紙をちゃんと読んでくれていることは、カーラも喜んでいた。

……でも、なんだか気恥ずかしいから、ラファエル様からキスされたことは二人には言わなかった。




「殿下は『フランドル伯のもとへ直接出向いて約束した』とおっしゃったのですね? 」

カーラに質問されて私は頷いた。


「王太子殿下が伯爵様を呼び出したのではなく、赴いた……」

確認するようにカーラが呟いている。


「あ……確かになんか変。聞きたいことがあるなら呼び出せばいいのに。フランドル伯がもう引退してるからかな?」


「でも、フランドル伯爵様は、一昨年、国璽尚書を引退された後も、たびたび国王陛下のお召しで登城されてるようですよ。フランドル伯爵様は、国璽尚書になられる前は、外務卿もお勤めでしたし、内政だけでなく外務に関しても国王陛下にご助言されてるようです」

肩書はないけど、相談役のような事をしている、とリラが教えてくれた。


「今は好々爺だけど、とても仕事が出来る人だって、お父様も言ってたものね。若い頃のお父様は何度も厳しく叱られたとか」

でも、それで仲良くなって、個人的にも交流があったのだから、フランドル伯は良い方なんだろう。私も真面目で実直な方だという印象が強かった。だから嫌われてしまって怖かった。



「もう、修道院にいこうかな……」

「アリスお嬢様、そう悲観なさらず……」

「でも、みんなに大嫌いって言っちゃった。友達いなくなっちゃった」

「お嬢様、お友達と喧嘩した次の日は『ごめんなさい』が基本ですよ」

優しく笑ってるリラは、本当にお姉さんみたいだ。幼馴染の面々を許す気はないが、とりあえずエリアスには謝りたい。大嫌いじゃないと言っておきたい。


「そうだね……明日は早めに登校しようかな」

「では、早起きしなくてはなりませんね!」

「早起きはいやだ~~~」

そうベッドの上でバタバタしていると、何かを思い出しそうな気がした。


……ん……?

修道院……礼拝堂……。

王室礼拝堂!思い出した!『悪役令嬢』が『悪魔』を召喚するのは、王室礼拝堂だ!

許可をもらって王室礼拝堂にも行ってみよう。きっと何か手掛かりがあるはず。




 翌日、私はジュリアンとは別行動して、かなり早く登校した。

そして、私以外誰もいない教室に一番に来たのはエリアスだった。寮からとはいえ、いつもこんなに早くに来てたんだ。


「……おはよう」

私が自席で挨拶すると、エリアスが真っ直ぐ私の方に向かってくるから(え、なんで?カッコイイ!)と思ったけど、席が前後だから、こっちに来るのは当たり前だった。記憶力が残念なポンコツ頭だと毎日が新鮮だわ!!!


「アリス……おはよう」

挨拶してくれたことに、私はほっとしていた。


「昨日はごめんなさい。色々ありすぎて混乱してしまって」

「いや、当然だ。謝るのは君の方じゃない。昨日、君が泣いて飛び出したあと、四人で話したんだよ」

席に荷物を置きながら、思い出したのかエリアスが少し笑った。


「話?」

「アリスを泣かせるようなことはしない、とね。君の気持ちを無視して勝手な事ばかり言って悪かった。……きっと今日は皆から、君に謝りに来ると思うよ」


私の頭にはぽこんと花が咲いたと思う。笑っているエリアスを見ていたら、ぽこぽこぽこと花が咲いた気がした。


誰もいない教室はいつもと雰囲気が違う。静かで空気が澄んでいる気がして、私は少し大胆になっていた。

ガルゴットで話してた時みたいに、自然と口から言葉が溢れてきた。



「エリアス……私はあなたが好き。あなたが私の事なんか好きじゃなくても、私はあなたが好き。ご両親に何があったかなんて知らない。むしろそんなのどうでもいいわ。あなたはあなたよ、エリアス」



エリアスの緑色の目が揺らいで、虹色に見えた気がした。

「どうでもいい……?」

眉間に皺を寄せて、エリアスが睨むように私を見る。


(あ、舞い上がって言い過ぎた……?無神経過ぎたかな?!)


そう思うと恥ずかしくなって、手をパタパタさせたが余計に挙動不審だったと思う。

「あ、ごめんなさい……あの、エリアスが何に困ってるかはわかんないんだけど、ほんと心底どうでもいいわ」


だって、本当にどうでもいい。今、そこにいるエリアスが好きだから、親がどうしたとか、過去に何があったかとか、どうでもいい。なんでもこい。どーんとこい。


そう思っていたら、エリアスが面白そうに笑いだした。

「……そんな風に言われた事も、考えた事もなかった。……そうだね、どうでもいいことだ」

エリアスがこんなにストレートに声を出して笑ってるのを、初めて見た。


(これは喜んでる……?)


「ありがとう、アリス。……きっといつか、君には話すよ」

緑色の瞳に、いまは琥珀色が混ざってやっぱり虹色に見える。朝陽の中で黒髪が艶々と輝いてる。綺麗に通る鼻梁、微笑んでるから柔らかくなってる口元。制服の上からでもわかる鍛えられて引き締まった肢体。え、これを間近に、只で見てていいんですか?投げ銭した方がいいですか?お賽銭箱ありませんか?


(こんなに優しく笑いかけられたら、惚れ直すに決まってるだろーーーー!)


か、かっこいい。かっこよくてしにそう……。

力が抜けて椅子にぽてんと腰を下ろして、しばらく私は動けなかった。



 リュカとサシャは二人で謝りに来た。

私が「初めてリュカを軽蔑した」と言ったらショックを受けた顔をしていた。優等生だからな、そんなこと言われ慣れてないんだろう。ただ「発言の撤回はしない」と言っていた。強情だ……。

サシャは髪を染めずに自毛の淡いブロンドで、タイをつけて真面目な顔して「ごめんなさい。でも本気だから考えといて。ラファエルがイヤになったらいつでも伯爵領(うち)に逃げてきてね」と言ってたからズルいと思った。

ラファエル様もわざわざ私の教室まで来たけど、手の甲にキスをして「昨日は気が急いてしまった。怖がらせてごめんよ、僕のアリス」とまた『俺の女』宣言をしたので、この王子様は全く謝る気がないなと思った。


そして、私のエリアスへの2回目の告白は、またもやスルーされたんだと気づいたのは、一時限目の授業が終わる頃だった……。


お読みくださり、ありがとうございました~!

次は【44. 王室礼拝堂探検隊】です。

金曜日更新予定です。よろしくお願いします~。

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