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19. お茶会なんて許せない

申し訳ありません。遅くなりましたが投稿いたしました~。

 

 ダンピエール伯爵令嬢ルイーズから、マクシムお兄様へのお茶会の招待状が届いた。

それを聞いて、私は自分への嫌がらせなんかどうでもよくなるくらいに動揺した。


 「は?……何で……ルイーズ嬢がお兄様に……?」


(わ、私の推しに何をしようとしているの?!ダンピエール伯爵家!やっぱり滅ぼしてやるー!!!)


また、とても口に出せないことを心の中で叫んでいたら、リラが言った。


「ダンピエール伯爵家の真意はわかりません。ですが、この招待状のせいで奥様が登城なさるくらい屋敷中、大騒ぎでしたわ」


 年頃のご令嬢から、未婚男性へお茶会の招待状がくるとは、つまりそういうことだ。

―――つまり!ちょっと貴方に興味があるからお話しませんか?って事だ。


「いやああああ!!私もお城にいく!!!!お兄様!!!!!」


玄関先でぎゃあぎゃあ騒いでいたら、つかつか歩み寄ってきた侍女頭マーゴにこっぴどく叱られた。




 夕食時に両親はいなかった。お兄様もいない。今日はジュリアンと二人。


「ねえ、お兄様が結婚するって本当?」

ジュリアンが突然、爆弾発言する。


「けけけけけ結婚なんかしませんよ、ねえ?」

私はそばにいる執事のルベンに呼びかけたが、あいまいな返事しかしてくれなかった。


「なんか、みんながコソコソ話してるんだけど、何があったの?」

ジュリアンは招待状のことを知らないらしい。私の口からは説明したくないし、そもそもお茶会に行ったからって気があうとは限らないし。……もし、気があったらどうしよう。だって、あんなに格好いいお兄様。大好きな優しいマクシムお兄様。


「いやああああ!!!!!お兄様!!!!!」

食堂でぎゃあぎゃあ騒いでいると、壁際に立っていたマーゴがさっきより足音を立てて近づいてきて、またこっぴどく叱られた。


(許さない……お茶会なんて許せない……)



 許せない、と私一人が言ったところで、どうにもなるわけでなく、翌朝、お兄様から「招待を受ける」と聞かされて、私は倒れそうになった。なぜなら、あのおしとやかな深窓のご令嬢と、優しいお兄様が一緒にいるところを想像したら、とてもお似合いだったからだ。


 お父様から見ても、「もうひとりの王太子妃候補」が王太子殿下ではなく、別の(この場合はそれが自分の息子だったわけだが)男性と結婚するかもしれないとなると、娘に有利に働くと思ったらしい。

若干の抵抗を感じつつも、お茶会への参加自体には反対しなかった。それにマクシムも成人しているし、実際適齢期ではあるのだ。相手が伯爵令嬢であれば身分は申し分ない。


「これはもはやバッドエンドでは……」


 私は、自分宛のエーメ男爵夫人からの招待状について、両親に相談する事などすっかり忘れて、どんよりと落ち込みながら学園へと向かった。



 いつもより遅い時間に着いたので、隣の席にはオスカーがいる。例のごとく私からは目を反らしているので、机の前に立った。


「オスカー、ちょっと来てくださる?」


面と向かって呼び出されるとは思ってなかったらしく、驚いた顔で私を見上げると、またふいっと横を向いた。


無視を決め込むらしい。

私は横を向くオスカーの頬に指で触れた。

教室内がざわつくのがわかる。


「こっちを向いてくださらない?オスカー……」


涙声にオスカーが慌てて振り向く。

私は頭の中で(お兄様の結婚式)を想像して涙を浮かべていた。


(うっ……マクシムお兄様……。推しが家にいることで、どれだけ癒されていたことか……。もし結婚したら公爵位を継ぐまでは別宅か離れに住むだろう。今みたいに会えなくなるだろう……つら……)


「アリス……」


すっかりほだされたオスカーを、私は廊下へ連れ出した。その際、アレックスにも付き添ってもらう。証人がいた方がいい。

隣の教室に行き、リュカも呼び出す。

このままだと授業に遅れるが、我が家で別問題が発生したので、早急にこちらを解決しなければならない。

そのための非常手段、と自分に言い聞かせた。


(みんなごめんなさいー!)




「なんだよ、話って」


「まず、エスコートの件を謝りたいの。ごめんなさい、オスカー」


「別に怒ってない」


「じゃあ、どうして私を避けてたの?」


「それは……」

オスカーが言い淀む。


「教えて欲しいの。このまま無視されるのはいや」


「アリス、お前が遠くに行ってしまう気がして」

オスカーがぽつりと呟くように言った。


「ラファエルのエスコートにも堂々と応えて、臆することなく社交界デビューして。ああ、アリスは王妃様になるのか、と思ったら遠い存在に感じてしまって」


「私は王太子妃にはなるつもりはないわ」


「そう言っても、周りがそう扱うだろう」


確かに、オスカーの言う通りではある。子供が喚いても、簡単には聞き入れてもらえない。するとリュカが急に口を開いた。


「これは独り言なのだが……、私は王太子殿下とアリスとの婚約には反対の立場をとろうと思っている」


アレックスもオスカーも、驚いたようにリュカを見た。

そしてオスカーが言った。


「何……?お前、アリスの味方になってやらないのかよ」


リュカは、オスカーの視線を無視してさらに『独り言』を続けた。



次は、【20. お姫様と騎士】です。月曜日更新予定です。よろしくお願いします~。

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