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17. 生徒会長のお悩み相談室


「リュカ、忙しい所申し訳ないんだけど、相談にのってくれない?」


 私は放課後の生徒会室を訪ねた。ここに辿り着くまでも、階段から落ちそうになったり、ゴミが降ってきたりした。地味に鬱陶しい。


「この三日程で急に嫌がらせされるようになって」


「とりあえず全部話せ」

そう言われたので、私はリュカの隣に座って、ロアンヌ嬢に呼び出された所から、さっき通りすがりに受けた仕打ちまでの全てを話した。



「反撃するのも疲れちゃった……。なんだかエスカレートしそうな気がするのよね」

罵詈雑言は聞き流せばいいが、物を壊されたり、粗末に扱われるとさすがに腹が立つ。舞踏会以降仲良くなったカミーユやジュリエットが巻き込まれるのも怖い。

これまで穏やかに過ごしてきただけに、対処の仕方がいまいちわからない。


「交友関係からみて、首謀者はロアンヌなんだろうな。王太子殿下が公務でしばらく王都を離れてるからな。反ルテール公爵派はいまのうちにやりたい放題なんだろう」


ああ、そうだ。ラファエル様がいないんだった。サシャのお父様の領地、コルベール伯爵領の港町ベルドゥジューの視察に行かれてるんだった。このアルジャン王国に港町はいくつかあるけど、租税を軽くしたベルドゥジューがこの数年で一気に栄え、同時に治安維持にも力を入れており、コルベール伯爵の有する海軍は、諸国の中でも抜きんでた力を持つようになっている。その海軍の訓練の様子を視察なさる国王陛下に、ラファエル様も同行されているんだった。気にしてなかったから忘れてた。ごめんなさい。


私はリュカに質問した。

「反ルテール公爵派ってどれくらいいるの?」


「それは、さすがにわからない。貴族は腹の探り合いで本当に何を考えてるかは見せないからな。ただ、明らかなのはエヴルー侯爵の一族だろう」


「それってリュカも、って事だよね、リュカ・アクセル・エヴルー?」


リュカは少しだけ私を見て、顔を傾ける。また髪で表情を隠している。

「そうだな。だが、私は……」


続きの言葉を待ったが、沈黙が続いたので私は言った。


「『だが、私はアリスの味方』?だとしたら、とても嬉しいのだけど」


弾かれたように顔を上げたリュカが一瞬明らかに照れた顔をしたから、こっちが驚いた。でも、すぐにまた俯いて、中指で眼鏡を直す。


「友人は大事にしたいと思っているだけだ」


「ありがとう。リュカは優しいね」

私が笑うと、リュカがわざとらしく腕を組んで、いつもの表情に戻って顔を上げた。


「……そもそも、ルテール公爵家について話そうか」


 ルテール公爵家は建国の祖、アルジャン大王の弟が公爵に叙せられたのが始まり。代々発言力も強く、また婚姻による王家との結びつきも強いため、王家に継ぐ権力を持つ。

王国の北半分は公爵領。内乱の際には領都が一時的に王都機能を持ったこともある。領都リエーは芸術の都とも呼ばれ、治安もよくとても栄えている。

そして、そのルテール公爵領の隣が、エヴルー侯爵領だ。


「ルテール公爵領と、エヴルー侯爵領が隣り合っているのも、軋轢の原因の一つだとは思う」


しばしばもめていて、それで歴代、ルテール公とエヴルー侯は敵対関係にある。それは、政権が中央に集中した現在も変わらず、宮廷内での権力争いとして残っている。

領地については、私には今更どうしようもないし、歴史も変えられない。


「エヴルー侯は自身が年を取り、焦りが見えているように感じられる。私にも何度も養子の話が来ている」


「そういえば、その噂は耳にしてるわ」


「侯爵の子供は何人もいるが、はっきり言って凡庸だ」


 子供たちが凡庸なので、エヴルー侯は特に秀でた能力を持つリュカを養子にして侯爵位を継がせたいらしい。ただ、長男のダンピエール伯爵をはじめとした実子の反対で実現していないそう。

そういえば、以前リュカは「アリスを政争の道具にするな」と怒っていた。リュカ自身も侯爵家の跡継ぎのことで振り回されてうんざりしてるんだろうな。私たちの意志なんか関係ないところで、大人たちに勝手に話を進められている。


「ルイーズ嬢は、自分の立場をどう思ってるのかしら?」

私と同じく王太子妃候補と呼ばれている彼女は、どう思ってるんだろう。そう思って隣のリュカを覗き見るように首を傾げて聞いてみた。


「ルルは……ルイーズは何も考えてないんじゃないかな」


「えっ?」


「幼い頃からお妃教育をされて、王家に嫁ぐよう言い聞かされて育って、当たり前のように受け入れている」


「私みたいに反発しないの?!」

私がそう言うと、リュカは面白そうに笑った。


「幼馴染とはいえ、殿下に対してあんなにきっぱり断れる君の方が変わってるんだ?わかってるのか?」


リュカが、滅多に見せない笑顔をこちらに向けるから、私はちょっとドキッとした。


(ごめんなさい、エリアス。今少しあなた以外にときめいてしまった……)

ごめんなさいと言われても、悲しいことに多分エリアスは無反応だろうけど、私は心の中で謝った。



次は【18. 生徒会長のお悩み相談室2】です。水曜更新予定です。よろしくお願いします~。

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