15. 校舎裏に呼び出される公爵令嬢
ギリギリ月曜日だ!と思って投稿したら、前書き・後書きが抜けておりました……。失礼しました。
あくる日、私は上機嫌で学園に向かっていた。
昨日はエリアスに会えた。文通もしてくれることになった。その日のうちに10枚位書いたあたりで、リラから「いきなりこの量は驚かれるのでは」と止められた。5枚に短くしたけど、カーラから「前半部分の愛の言葉が重いです」と添削され、結局、用件のみの簡潔な手紙を書いた。今日の夕刻、カーラが届けてくれる。返事はもらえるだろうか。それが楽しみで私は浮かれていた。
「ラファエル様のエスコート、とても素敵でしたね」
「ドレスの色もお揃いで」
「エメラルドもとてもよくお似合いでしたわ」
私の周りにいるご令嬢方が色々話しかけてくるので、私は舞踏会のお礼を言いつつとりあえず微笑んでいた。
(エリアス格好良かったなあ~)
(御者の鞭を断ち切った時とか超かっこよくない?すごくない?)
(伸びた背筋、真剣な目、落ち着いた声で「お怪我はありませんか」って振り返った時、「かっけー」って思って心臓とまりそうだったわ)
あまり話を聞いてなかったが、私がニコニコしていたので、皆様もニコニコしていた。いつものように笑顔で誤魔化して逃げ出し、自席に戻るとオスカーがいない。またバルコニー?と思って外を見たが、そこにもいない。
「今日は来てないみたいだね」
アレックスにそう言われて、席に着いた。
「そう、話したいことがあったのに……」
そのうち来るかと思っていたら、結局今日はお休みだった。
放課後、アレックスがグレーの長い髪を揺らしてこちらを見ている。アレックスが何か言いたそうにしてるな、と思っていたら、私の視界は人影に遮られた。
「ルテール公爵令嬢アリス様」
仰々しく呼ばれ、違和感を感じつつ顔を上げると、見知らぬご令嬢方が立っていた。いや、もしかしたら舞踏会で会ってるような気もするが、物覚えが悪いので思い出せなかった。
(誰だっけー?全然わからないし。見たことあるような無いような。高等部の方???)
髪を結い上げて、豪華な宝石の髪飾りをつけた金髪のご令嬢が、私を睨みつけるように見下ろしながら言った。
「少しお時間よろしいかしら?」
(これは!もしかして校舎裏に呼び出されるヤツじゃない?!)
本当にあるんだ、こんなイベント……もとい、こんな出来事。
でも、アリスは呼び出す側じゃない?大丈夫かな。まあ、どんなものか体験しておこう。
私はあまり危機感を抱くことなく、のこのこと付いていった。
「あなた、オスカー様を侮辱なさったそうね」
「王太子殿下からの覚えがめでたいからって調子に乗ってるのではなくって?」
「王太子殿下にもオスカー様にも良い顔をして、図々しいにもほどがありません?」
「公爵令嬢の肩書きがなければ相手にされませんわ」
……お、王太子殿下ファンクラブだと思っていたら、オスカーファンクラブのお姉様方だった……。
ひとしきり喚いて疲れたのか、例の金髪のご令嬢が「何とか言ったらどうなの」と凄んできた。多分何を言っても、生意気ねって反論されるんだろう。そう思って私は黙っていた。
すると、その態度が気にくわなかったらしい。
「何なの、その生意気な目は!」
(えっ、理不尽ーー!目は伏せていたのにーー!)
そう言い、彼女は手を振りかぶる。
(打たれる!避けなきゃ痛い!)
そう思って後ずさりしたが、いつの間に回り込んだのか、仲間のご令嬢が背後から私の肩を掴んでいた。
殴り返そうかと思ったが、もう一人が腕を掴んでいる。さすがにひどくない?!
(打たれる!)
目をぎゅっと瞑った。が、しばらく耐えても衝撃は来なかった。おそるおそる目を開くと、冷ややかな水色の瞳が見えた。
「アレックス!」
アレックスは、私を叩こうとしたご令嬢の腕を掴んだまま言った。
「何の真似でしょう、ダンピエール伯爵令嬢ロアンヌ様?」
「あっ……」
ロアンヌと呼ばれたご令嬢は、顔を真っ赤にしている。怒りなのか恥じらいなのか。それとも両方か。
「演劇の稽古なら他でなさるがよろしいかと」
ダンピエール伯爵令嬢……?
ルイーズ嬢の姉妹?
そそくさと逃げ出したご令嬢方を見送って、私は大きくため息をつく。
「ありがとう、アレックス。どうしていいか、わからなくて……」
そこまで言って、私はアレックスに抱き締められた。
「えっ!えーーっと、アレックス?ちょっと……」
「アリス、あまり心配させないでくれないか。呼び出しに簡単についていくからびっくりしたよ」
「はい、ごめんなさい」
腕をほどかれたので、体を離す。
(ハグする程度はこっちの常識だと普通なのかな。私だってびっくりしたよ)
じっと見つめてくる水色の瞳。無駄な筋肉のない、均整のとれた体躯。
アレックスは色素が薄く細面で、どちらかと言うと線が細く見えてしまうが、いわゆる『脱いだら凄いんです』系だ。さっき抱き締められた時、私は「ええ体しとるのぅ兄ちゃん」と思っていた。
ぼやっとしていたら、アレックスに怒られた。
「君はさっき、傷つけられそうになったんだよ?もっと自分の立場を理解しないとだめだ」
「アレックス、ごめんなさい。もうしません!知らない人についていきません!ごめんなさいー!」
「そうだね、よく言えました」
若干のSっ気が見え隠れする笑顔でアレックスが言う。
「ただ、オスカーの件に関しては、君は反省すべきだと思うよ」
「そうね……」
そう、私とオスカーは何となく気まずいままだった。
舞踏会の夜、オスカーが来たらもう一度謝ろうと思っていた。そして、社交界デビューしたから、これから何度も舞踏会があるだろうから、次はオスカーにエスコートを頼みたいと考えていたのだ。
でも、あの日、オスカーは最後まで、私をダンスに誘ってくれなかった。
いつもありがとうございます。次は【16. 昼休みに水をかけられる公爵令嬢】です。タイトルが不穏ですね~。水曜日更新予定ですが、今週は若干予定通り投稿できないかもしれません。のんびり更新ですが、よろしくお願いします~。




