プロローグ《絶望少年》
――つまらない。
通勤中なのかスーツ姿で歩きスマホをしながら足早に歩く人達、これから店開きを始める老夫婦。登校時に見るいつもの景色だ。煩わしい。
――つまらない。
朝のHR前の教室ではいつものように喧騒に包まれていた。朝だというのに放課後カラオケに行こうと話し出す男子、昨日撮ったプリクラで盛り上がる女子。五月蝿い。
――つまらない。
授業中。いつも授業も受けずに昨日夜遅くまで遊んだ疲れを癒やすため睡眠に勤しむ生徒。それを注意する先生。鬱陶しい。
――つまらない。
放課後、家に帰ると叔父がいる。どうせまたパチンコで負けて不機嫌なのだろう。暴力を振るう。お前みたいな欠陥品、引き取るんじゃなかったと。それを見る叔母もまた腫れ物を見るような視線を注ぐ。何も喋らず気味が悪い。こんな子だとは思わなかった。と。
つまらない。つまらない。つまらない。
部屋に戻りベッドに座る。掌の上には明らかに適量とは思えない夥しい量の睡眠薬があった。もういい。こんな人生、諦めよう。
こうして全てに絶望した少年は人間として最初から持っている権利である生を放棄した。