斬魔騎士団の帰還
——ヴァイスラント王国、王都シュネーヘイム郊外の森関所前。
精鋭部隊・斬魔騎士団と合流した煌矢たち。妖魔『槍火蛇』を討ち果たした煌矢は、斬魔騎士団の団長シュヴェルトより共闘を求められる。
煌矢がそれを快諾すると、騎士たちの顔は歓喜の色を帯びた。
それに続き今、彼はシュヴェルトよりヴァイスラントの王への謁見を持ちかけられていた。
「光の使徒殿、早速王宮へお出でください。救世主の降臨を、我らが王に伝えねば!」
「ええ、まあそれは分かりましたが……」
熱のこもった口調でまくし立てるシュヴェルトに煌矢は困惑し、苦笑しながらも頷く。
「失礼、申し遅れました。私はヴァイスラント王国軍少佐にして斬魔騎士団団長、シュヴェルト・バーンスタインと申します。そしてこちらは……」
やや困惑気味な煌矢の様子を察してかシュヴェルトは頭を垂れ自身の名と立場を明かしたのち、隣のシュナイダーを見て促した。
「ああ……俺は斬魔騎士団の一員で、ヴァイスラント王国軍少尉……レオン・シュナイダーってモンっす」
「おいシュナイダー、光の使徒殿に対してそれは些か無礼では……」
シュヴェルトに促され、砕けた口調で自らの名と立場を明かすシュナイダー改めレオン。
その軽薄な態度を諌めようとするシュヴェルト。それを見て、煌矢が小さく笑いながら首を振った。
「いいですよ。俺もあんまり堅苦しくされるの好きじゃないんで」
「ですが……」
「まあ団長、ここはお言葉に甘えときましょうや。つーわけで、よろしく頼んます」
戸惑うシュヴェルトに、レオンが諭すような口調で言った後、煌矢に小さく頭を下げた。
「光の使徒……コウヤ殿ご自身が良いと仰るのだから、あまり気にせんでもよかろう」
クロイツが諭す。シュヴェルトは未だ釈然としない様子だったが渋々納得し、煌矢に視線を戻した。
「そうか……ならばその通りにしよう。ではコウヤ殿。改めてお伺いするが、我々と共に王宮へお越し頂けるだろうか」
「はい、勿論」
シュヴェルトの申し出に快諾し、笑って左手を差し出す煌矢。その笑みは一見穏やかだが、その眼の奥には炎のように激しく燃える闘志が宿っていた。
「ありがとうございます……神官様と補佐殿も、ご同行願えますか?」
シュヴェルトがその手を握り返した後、ステラとヴァンに視線を移して尋ねる。
「元よりそのつもりです」
「どこの者とも知れぬ異世界人である彼を“光の使徒”であると確信させるには、神殿の者である我々の証言も必要でしょうしね」
シュヴェルトの言葉に頷くステラと、彼女の言葉に続くヴァン。
その答えにシュヴェルトは頭を深々と下げて感謝を示し、その後に王都を守る関門を開いた。
「では、行きましょう」
開いた関門から王都に続く道へ踏み出したシュヴェルト。
彼に続き、クロイツやレオンを始めとする騎士団員たちや煌矢、ヴァンとステラも王都を目指し歩き出した。