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ティナ先輩に聞いてみよう

 なんとか初めての初心者講習を終えた僕はあのおっさんのことが気になっていた。ソファーで寝ているだけならあまり気にならない。本部でも時たま酔っ払った冒険者がソファーで寝ていたからだ。しかし、あのおっさんの周りにはギルドの共用の道具や明らかに個人の持ち物と思われる道具が乱雑に置いてあった。普段なら注意しに行くが、先輩たちが注意しないということは何か特別な理由があるのだろうか。いくら考えてもわからなかった僕は先輩に聞くことにした。受付の横にある休憩室へと入っていく。そして、ちょうど休憩中であったティナ先輩を見つけると駆け寄った。


「あっ、ティナ先輩!ちょうど良かったです」

「あら、アレン君。どうしたの?初心者講習失敗しちゃったのかしら?」

「いえ、失敗のようなそうでないような。失敗ですかね?」

「?」


 ティナ先輩はギルド職員としては10年近く働いており、かなりのベテランだ。淡い茶髪をポニーテールにしており切れ長の目と眼鏡が知的な雰囲気を醸し出している。クールに見えるが後輩の僕が困っているとこのようにさりげなく聞いてアドバイスをくれたりする。実は僕のギルド職員の職員研修の講師だったのがティナ先輩だ。だから昨日着いたばかりの僕の技量も知ってるし、初心者講習も僕なら出来ると太鼓判を押してくれたのだ。ティナ先輩は僕がこうなりたいと言える尊敬する美人な先輩である。ちなみに年齢は今年で27歳。


「アレン君?何となくなんだけど、そうね、もう少し女心を理解した方がいいわね」

「はい」


 どうやら多くの女性と同じく年齢関係の話はタブーのようだ。まるで頭の中を覗かれているのではと時々思うほどティナ先輩の女の勘は鋭い。ティナ先輩は女の勘と言い張っているが、僕は一種の特殊能力なのではと疑っている。それくらいよく当たるのだ。

 20代のティナ先輩は未だに独身だ。美人受付嬢であったティナ先輩はかなりモテたらしく、毎日のように告白されていたという伝説もあるようだがそれと同時にそのすべてを断ったという伝説も残している。花の10代を過ぎ、20代半ば―


「アレン君、三度目はないわよ?」

「ごめんなさい」


 これでティナ先輩について少しはわかってもらえたと思う。この町に始めてきた僕にとってかなり頼りになる先輩なのだ。そんな先輩に気になったことを聞いてみることにした。すなわち、ギルドのソファーを占拠してるおっさんは何者なのかということを。


「そういうわけで今日の初心者講習のさなか、怪しげなおっさんがソファーで寝ていたんです」

「はあ、あの人は……。いえ、これは見てもらった方が早いわね。アレン君ちょっとついてきて」


 ティナ先輩についていき休憩室を出る。講習を終えた時点ですでに夕方になっており、ギルドの受付は疎らに依頼完了の報告をしている。もう少しすると依頼を完了した冒険者がわらわらと受付にやってくる。それまでギルド職員は交代で休憩をしていた。ティナ先輩は丁度その休憩中だったけれど、僕の疑問に答えるため貴重な休み時間を使ってくれていた。そしてティナ先輩についていった先にはすでに依頼を終わらせている人や今日は休みの人あるいは昼間から働かずお酒を飲んでいるクズ……いや、穀潰しなどがたむろするギルドに併設された酒場であった。

 

「酒場ですね。ここがどうしたんですか?」

「ちょっと待って。あっ、居た!あそこよ」


 いつもより若干テンションが高いティナ先輩が指差す先には今日の依頼の出来がよかったのだろうか、新人冒険者の依頼料に比べると豪勢な食事がテーブルに所狭しと並べられており、見たところ剣士と魔法使い、弓師の三人組が配られたエールで乾杯をし始めていたところだった。そんな彼らの所へふらふらとその食事とお酒の臭いに釣られるように寄ってくるのは初心者講習中にギルドのソファーで爆睡していたおっさんだった。ちゃっかり三人組の座るテーブルに寄る前に酔いつぶれた冒険者からエールをかっさらっていくのを僕は見逃さなかった。


「なんだか景気良さそうだねぇ。おや、赤髪の僕はルーキーとは思えない凛々しい顔立ち。まるで歴戦の勇士を見ているようだ。ややっ、紺色のローブが似合うお嬢ちゃんもかな~り賢そうな顔立ちをしてるねぇ。潜在魔力も凄まじいものがあるなぁ。はっ!まるで気配を感じなかった。これは天性のスナイパーか!はあ、おいちゃんも年を取るわけだ。新たな時代を担う若者がこのギルドにも現れるとは。ここから未来の英雄が巣立っていくのかもねぇ。そう思わないかい?おっと忘れるところだった。未来の英雄の依頼大成功を祝って、乾杯!」

「「「えっと……か、かんぱーい?」」」


 ここから未来の英雄が出てくる。って特例がない限り基本的にルーキーはこの始まりの町からスタートするから当たり前のことなですが。それによいしょがあからさま過ぎる。聞いてるこっちが悶絶しそうだ。しかし今日の依頼達成が自信になったのか、それともすでに酔っているのか。あのグループは困惑しながらも満更でない顔をしている。説明が欲しい。先輩はなぜこの光景を僕に見せるのだろうか。僕はこの光景を眺めているティナ先輩の意図が掴めず顔を覗く。こちらの視線に気づいたのかティナ先輩は僕を見るとこう言った。


「ね?」


 ティナ先輩、僕わからないです。


 





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