サイキック達の戦い
2 サイキックの力
ゆっくりと悠賀は目を開く。太陽の眩しさによってまともに空模様が見れなかった。目を半開きにして、手で太陽の眩しさを遮る。指の隙間から空を覗き見する。そして悠賀は気付いた。自分は死んだのか?反射的に起き上がって辺りを見ると、さっきまでの惨劇とは違い平和な風景だった。謎の隕石による影響が一切ない平和な世界。
悠賀はだだっ広い野原で寝転がっていた。しかも、そこは家畜されている動物の檻の中。
悠賀『あれ?どうなったて…。ここは、天国?』
そう思わせるような風景なので自分は間違いなくあの時の災害で死んだんだと思い込んでいた。すると、誰かが小さな古びた小屋の中から出てきた。大きな袋に何か詰め込んであり、重そうに持っているその人はここの住民だろうか。悠賀はとりあえずその場で立ち上がりスボンとタンクトップについた野の草をパンパンと払って住民らしき人物のところへ向かう。
悠賀『あの〜。すいませ〜ん』
そして住民らしき人物が声のする方へ顔を向けると悠賀を見て思わず驚き、大きな袋をとっさにその場に落としてしまった。
悠賀『す、すいません。あのー、突然で申し訳ないんですけど、ここってどこですか?』
住民『き、君は誰だ!勝手に人の敷地に入り込んで。ここはわしが動物達を家畜として育てている農家だぞ!』
悠賀『で、ですよね。すいません。今ここから出ます』
檻から出た悠賀は何も分からないままなのでその住民の人にいろいろ質問をした。さっきまで起きていたことを全部話し、改めてここはどこなのかと聞いた。
住民の名前は『弦』さんという。
弦『は?世界が滅亡!?まだ寝ぼけとんのか?あんた』
悠賀『いや、さっきまで本当にあったことなんですって。巨大な隕石が空から降ってきて辺りが壊滅状態が続いて多くの人達が死んでいくんです。俺はそこから離れよう必死に逃げて行ったら建物が俺のところで壊滅してその下敷きになったんだよ』
弦『夢…じゃろ。あんたこの辺じゃ少し見ない顔だし、とりあえず少しあんたのことをいろいろ聞かせてもらいたいんじゃ。中に入って休んできたらどうだ?』
弦さんは悠賀を精神的に異常な人間だと判断しているのか、その後も病院に行きなさいなどと説得してくる。
弦さんは見た感じ50前半のおじいさんという感じだが、それでも元気に働く人だった。さっきの重そうな袋も軽々持ち上げるほどである。ちなみに中に入っていたのは牛にやる餌だという。
しばらくして、悠賀は弦さんに色々なものを食べさせていただいた。その食べ物はこの農家で飼育している動物や野菜で作ったものである。美味しかった。ご馳走いただいた後、弦さんに色々話を聞いて、この街には何があるかを教えてもらった。一見聞いたところ自分のいた世界と何も変わらないような感じだった。
ただ、弦さんからある注意事項を教えてもらった。
弦『いいか。この辺にはサイキッカー達がうじゃうじゃいてのぉ、もうそいつらを退治するためのバスターズ達が異常なくらい張り込みをしとるんじゃ。お前さんもサイキッカー達には注意していくんじゃぞ』
悠賀『サイキッカー?霊能力者のこと?そんなのがうじゃうじゃといるの?ゲームやアニメの世界じゃん』
弦『なんでもな、サイキッカーはわしらのように見た目は普通の人間と変わらない姿をしとるんじゃ。わしは見たことないんじゃが、実際被害にあった人たちはみんなサイキッカー達の仕業によって外を出歩くのを怖がっとる。それでな、噂ではバスターズの一員がやられており、住民の被害が多発しとるらしい。だから手ぶらで外を出歩くのは危険という噂じゃ。だからもしバスターズに出会ったら保護してもらえ。特にあんたは居場所がないらしいじゃないか。くれぐれもサイキッカー達に出くわさんようにするんじゃ』
悠賀『あのー。もう一つ聞いていいですか?バスターズって…誰ですか?なんか退治してくれるとかおっしゃってたから気になって』
弦『バスターズを知らんのか?特殊部隊じゃよ。サイキッカーから住民を守ってくれる戦闘部隊で、今ではどの街にも組織が存在しておるんじゃ。緊急時には一斉にバスターズが現場に駆けつけサイキッカーを見つけ出し排除する。それが仕事なんじゃが、最近は人員不足であまり活動にも支障がでとる。サイキッカーのせいでな』
とりあえず行ってることを抽象的に理解した悠賀は弦さんのところを出てバスターズという組織のところに向かう。
弦さんの家はあまりにも田舎のようなところにあったが、およそ2時間半歩いていくとさっきまでとは全く違い住宅街に入った。
悠賀『どこへ行けばいいか分からんぞ。地図かなんか貰えばよかった。あ、そうだ携帯で調べるか』
そして悠賀は携帯でマップ検索を開き自分の居場所を突き止めようとした。すると悠賀は携帯を見て驚くべきことを知った。
悠賀『は?け、圏外?いや、おかしい…だろ』
ここは住宅街の中であるため少なからずどこかに電波は届くはずなのに圏外と表示されていることに少し苛立ちを覚える。
圏外なんてありえないはずだ。だったらここの住民はどうやってネットなどを使っているんだよ。今時ネットがない時代じゃないのだからこんなことはありえない。悠賀は何度も電源を切って入れてを繰り返し続ける。
そして、だんだん苛立ちがピークに達していたその時だった。
悠賀『ふざけんなよ!』
そう言葉を発すると急に近くにあった電柱の線がいきなり弾ける音を響かせちぎれた。しかもそれだけでなく、近くにあった自動販売機の空き缶入れもいきなり倒れ出す。
悠賀『え?な、なんだよ。何が起きたんだよ』
するととある住宅に住んでいた男の人が悠賀の姿を見てカーテンを急に閉めた。それを見た悠賀は何もやってないのに自分が悪者になったような不安に襲われた。その男の人だけでなく、ほかの住宅の人も何か家の鍵を閉める動作をしている。
悠賀『え?お、俺がなんかしたのかよ』
不安が増していくため気味が悪いと思った悠賀はその住宅街を意地でも外に出るため急いでその場を走り出す
悠賀『な、何がどうなってんだ?ここは?なんでみんな俺を見た瞬間にあんなことすんだ』
そしてなんとか住宅街を出ていくとそこにはとある電車の駅があった。とりあえず駅周辺で誰かいたらここはどこかを聞こうとした時だった。後ろから何台ものワゴンカーが悠賀の元へ走ってきた。そしてそのワゴンカーから大量の戦闘服を着たトルーパーと呼ばれるにふさわしい人たちが悠賀を囲い出した。
悠賀は反射的に両手をあげる。
悠賀『ちょ!なに!え?勘弁してよ。どうなって…』
そしてトルーパー達の服の背中部分が見えたためそこに書いてある文字を読んだ悠賀。
悠賀『え?バスターズ?』
大きくBASTARSと書いてあった。
あの弦さんが言ってたサイキッカーとやらを退治する組織のことだ。
トルーパーの一人『大人しくするんだ!サイキッカー!君の身柄は我々が包囲した。サイキック能力の使用を辞めるんだ!抵抗すれば我々の手で今すぐ貴様を始末する』
そう、これで悠賀はわかったことがある。さっきの電柱の件や自動販売機の空き缶入れの件と住民の人たちが避けようとしたのは、自分が関わっていることを。住民を怖がらせたことによって誰かが通報したのだ。そして自分はサイキッカーと間違えられバスターズによってこれから処分されるのだ。
トルーパーの一人『貴様は我々バスターズの手によってこれから殺処分する』
悠賀『え?なんだよ。俺はなにもやってない。別にサイキッカーなんかじゃない!俺にそんな能力ないんだよ』
しかしトルーパー達は話を聞かない。
トルーパーの一人『お前にサイキックサインが出てる。今さっき能力を使ったことによってしっかりと出ているんだ。間違いなくお前はサイキッカー』
別のトルーパーの一人『さぁ、白状してもらう』
そしてトルーパー達はどんどんと悠賀に迫ってきた。そして強引に悠賀を抑え込む。
悠賀『待てーー!俺はなにもやってない!なんでだ!どうしてだー!やめろぉぉぉ!』
そして頭を地面に抑えつけられた悠賀はとうとう身動きが取れなくなった。
すると、悠賀は自分の渾身の力でトルーパー達に抵抗しようとしたその時!
トルーパー達が一斉に吹っ飛ばされ中にはトルーパーの首が180度ひねり回されたものもいる。
そして、トルーパー達はみんなその場で倒れこみ動かなくなった。
その光景を目にした悠賀はその場を急いで逃げる。