精神の世界にて
ろくでもない人生だった。
楽しそうに少女は言った。
「まぁ、良くある話しだろうけどね。
きっと僕以上に辛い人なんて星の数ほどいるよ。ただ、僕が弱かっただけ。でもね、」
僕は死んでも恨み続けるよ。
何も無いところだ。地面は乾いた砂ばかりで、草木の影さえも見当たらない。太陽は暴力的なまでに強く照りつけてくる。風も吹かず、停滞したせいか、やけにベタつく風のせいか、理由は分からないが、息の詰まるようなところだ。
「不気味なところだろう?太陽の光は強いくせに肌寒いし、生き物もみない。」
少女は、にこにこと、無邪気そうなえがおで言った。しかし、違和感の滲む笑顔だ。猟奇的な狂気が透けて見える。
きっとその白く細い腕や、薄い体を隠すような緩いつくりの白いワンピースにべっとりとついた赤黒い血のせいだ。それはまだ乾いて無いのかワンピースをしたたり落ちて地面を赤く染めている。あれは何の血だろうか。
「ねぇ、どうしてあの時僕と死のうと思ったんだい?なけなしの愛情?1人は寂しかった?弟や妹を誘わなかったのは、僕なら死んでもいい存在だからかい?」
一息に言い切ったその顔は笑顔のままで、何を思っているのか、さっぱり読めない。
「何を今更、私のことを知ろうとしているんだい?」
「あー、やだやだ。なんで泣いてるんだい。
鬱陶しいねぇ。」
足を乗せられた頭が軋んだ。体重を目一杯かけているのだろう。目の前が真っ赤だし、頭蓋骨はもう割れたのか、何かが首を流れるのを感じた。
辛い人生だった。
這いつくばった醜いそれは、そう嘯いた。
その頭に足を乗せて嫌々ながら問う、
「どうして?」
何もかもがろくでもなかった、
だなんて、笑わせてくれるね。
君にはあったのに。色んな選択肢が。
君には無かったのに。薄い膜で覆われた狂気が。
君には関係なかったのに。こんな辛さ。
健やかに。一般的な親の元で育って。愛が足りない。もっと守ってくれ。守ってもらえなかったから自分はこうなったんだ、私のせいじゃないだなんて。
精神の成長を阻まれ。歪な親の元で育って。狂気的な愛を打ち込まれて。守って欲しくても守ってくれと請われた。そんな私は私のせいだと自分で背負おうとしていたのに。
「テメェは…!私から未来さえ奪った!!!」
そんな傲慢、そんな横暴が許されるとでも思っていたのだろうか。