第七話:名前
ディルグロイクに追われ、谷底に落ちてから少し。
俺は比較的平坦な場所へとエリナを寝かせ、その治療に当たっていた。
その気になれば追うことは簡単だったろうが、ディルグロイクはまだ追いかけては来ない。
余談を許さないこの状況では、それは幸運であると言えた。
「な、んで、助けた……」
途切れ途切れに悪態を付くのはエリナだ。
治癒の魔術で浅い切り傷は治せたものの──既に失った血、折れた骨、傷んだ内蔵。それに加えて消耗した体力、失った魔力欠乏から来る疲労は、俺ではどうにもならない。
この世界の治癒魔術は、はっきりいって不便だ。浅い傷ならば直ぐに治せるが、骨折などになると治癒力を高めて治りを早くするくらいにしか使えない。それでも文字通り魔法のような効果は持っているのだが、こういうときはただもどかしい。
外傷を塞いで出血は止めたものの、正直言って、余談を許さない状況だ。そんな状況で悪態を吐くのはさすがと言うか……呆れる思いである。
「あまり喋るなと言っているだろう。本当に死ぬぞ」
半ば憎悪さえ混じり始めたエリナの目を塞ぐように、谷底に流れていた川で濡らしたハンカチを顔の上にかける。
「あ……」
発熱しているからだろう、心地よい冷たさにアリサの吐息が漏れた。
骨折が数カ所に、破裂寸前になるまでの衝撃を受けた内蔵。大の大人でも耐えられないような痛みを、よく耐えているものだ。その根底にザウル=エリンの教えがあることを考えると、空恐ろしさを覚える。
彼女が俺を咎めるような目をしていたのも、それが原因だろうから。
使えないものは切り捨てろ。黒曜庁では、その教えを徹底している。
重荷を背負って性能を落とすな、ということである。
シビアな実力至上主義の世界らしい標語だ。
ザウル=エリンに心酔するエリナもまた、その教えをかたく守っている。先程の憎しみ混じりの視線は、ザウル=エリンの手ほどきを一番長く受けている俺が教えを守らないことが気に食わないからだろう。
「なんでよ、なんで……」
今もそれを、うわ言のように繰り返している。
……本当に、凄い執念だ。十二歳の女の子がこうまでなるのは、異常と言っても差し支えない。
やれやれだ。このままだと本当に死ぬまで繰り返していそうだ。
思わず嘆息してから、俺はその問い掛けに答えを返す。
「仲間……は言い過ぎか。同僚を助けるのに理由が居るのか?」
「少な……とも、黒曜庁では、そうでしょう……? メリットが、ないわ……あなたも、わたしが、疎ましい、でしょうに……」
痛みに息を荒げながらも、エリナは抗議を続けている。
命よりも筋を通す事のほうが重要とでもいうのだろうか。
……融通が効かないんだろうな。もう少しちゃらんぽらんに生きても良いと思うのだが。
「別に、俺はお前のことが嫌いじゃない」
「……っ」
気がつくと俺は、素に戻っていた。
視線を交わさなかったからだろうか、それとも単純にユーリの部分に俺の部分が勝ったか、それはわからない。
……だが、自分でも少し驚くような言葉は、エリナにはより強い衝撃を与えたようだ。
「確かにいちいち喧嘩腰でいられるのは面倒だが、それも正直に自分の言葉を伝えているだけだろう。……お前が、融通が効かないのはここ数日でわかってる。けど今は少し休んでいろ。愚痴なら後で聞いてやるから」
『それ』が近づいてきているにも関わらず意識を切り替えきれないのは、少し困惑した。
常に平坦を意識してきた語調も言い聞かせるように、少し強くなっている。……多分、小さい女の子が自分を鑑みずに居るのが、我慢できなかったのだろうと思う。
しかしそれもここまでだ。小さい女の子が無茶をするのが気に入らないからこそ、今ここで黙らせる必要がある。語調が荒くなってしまったのは、そのためだ。
此方の世界に来てから一度も使っていないような言葉遣いの意外性が効いたのか、エリナはそれ以上喋ることはなかった。
息は未だに荒々しいものの、ようやく身体を休めてくれたのはありがたい。
ふと、空を見る。曇り空の僅かな光をも木々に遮られた谷間は暗かった。
おかげで意識が切り替わる。奴が姿を表す前にそれを行えたのは、幸運だった。
カシリ、と。爪を石に擦らせて、ディルグロイクが歩みを進めてくる。
その表情にあるのは──もう、憎悪ではなかった。失望のような、冷えた表情だ。
だからといって、怒りが収まったわけではない。むしろ、どす黒い泥をかき混ぜるように、渦巻いているのが判る。
それは明らかに野生には似つかわしくない感情だった。
と、言っても相手は複雑な魔術を使いこなす『天寵』持ちだ。その心は推し量れないが、縄張りを侵した、攻撃を加えたというだけで抱くような感情でも無いと思う。
……まあ、言っても仕方のないことだ。この脅威を片付けるのが、俺に与えられた任務だ。それに背後の少女を護衛しながら……という条件を付け足したのは、我ながらよくわからないことだったが。
「やるか」
だがもう、油断はない。
何故奴がエリナへ執着を持っているかは未だに分からないが、二度も不意は突かれない。
黒狼に、呟くように宣言すると、俺は闇の魔力をたぎらせた。
力を開放すると、口角がつり上がるのが判る。なんだかんだで──闘うのは、愉しい。日本で見たら失禁でもしてしまいそうな状況で心から笑えるのだけは、あの男に感謝しても良いかと思った。
笑った俺を見て、黒狼はまた牙を見せる。再びその表情には怒りのようなものが見えた。
ぞわり、とディルグロイクの毛が逆立つ。
魔力を開放したのだろう。その周囲には幾つもの暗黒球が浮かんでいた。
天に哭くように顔を上げ、振り下ろすと、それを合図に数十個の暗黒球が向かってくる。
同じ轍は踏まないし──もう、油断もない。言葉を伝えられぬ黒狼にそれを教えるように、俺は剣を軽く振るう。
今度は先ほどとは圧倒的に違う。それを、叩き込むように。
剣を振るうと、俺の身体からは黒い風が吹き荒れた。心の弱いものならば発狂する、とさえ言われるような闇の魔力の波動が、数十の暗黒球を触れる端からかき消していく。
そう、最初から本気で行く。二度は出し抜かれないという意思を示すため、俺は全ての魔力球を最も力の差を知らしめる形で振り払ったのだ。
挑発するような笑みを向けられるも、ディルグロイクの顔には驚愕のようなものが浮かんでいた。
それも一瞬のこと、表情は直ぐに怒りへと書き換わる。
しかし──
「解せんな。何故その小娘を守るような真似をする? 貴様はそのようなモノではあるまい」
黒狼の口から出たのは威嚇の唸り声ではなく、問いかける形の抗議であった。
……人語を喋れたのか。今度驚くのは、俺の番だった。
だが言葉を話すからといって戦闘には関係がない。
すぐに冷静さを取り戻すが──少し、興味が湧いた。俺は、その問い掛けに返答する。
「数少ない知り合いの一人でな、死なれるのは目覚めが悪い」
理由は単純、死なれたくないから、それだけだ。
半ば投げやりな答えに、再び黒狼は牙を剥く。
だが解せないというのならこちらも同じだった。ディルグロイクは、俺を知ったような口を利いている。先程の明らかに警戒する様子といい、俺をよく知っているかのようだった。
あいにくと獣に知り合いは──と、そこまで考えて、かつて見逃したディルグロイクがいた事を思い出す。
まさか、と思うのと、ディルグロイクが攻撃を仕掛けるのは同時のことだった。
左右へ尻尾を振り、魔力刃を生み出す。二発の魔力刃は弧を描くように俺へと向かってきた。
俺はそれを首を振ることで躱す。最小限の動きで躱したのは、それが布石だという事を知っていたからだ。
「芸がない」
そう呟く頃には、ディルグロイクは眼前へと迫っている。
尻尾に集中した魔力は黒い剣となり、宙返りの要領で振るわれた。
避けるのは簡単だったが、俺はあえてそれを右手の剣で受け止める。背後にはエリナがいたからだ。衝撃を受けながらも、開いた左腕の剣を振るう。が、これは躱された。
『学習』している様だ。
俺がしたのは、かつて見たオディウムルスとディルグロイクの戦闘の再現──向こうも、それは意識していただろう。
「そうか、お前は……」
あの時見た、ディルグロイク。
まだ成体には成りきっていない体躯、そして俺のことを知っているような素振り──考えれば、その可能性に気付くことは出来たろう。
ザウル=エリンの、そして俺の気まぐれによって生かされた、赤子のディルグロイク。目の前の黒狼は、俺を知っているような、ではなく事実『知っていた』らしい。
「あの時、巨熊を倒した貴様を見て、憧れた。その深き瞳に、圧倒的な強さに。纏う闇の深さは仲間達よりもより黒く、暗く見えた」
天を見上げるように紡ぐ言葉は、何処か陶酔的にも見えた。
……しかし、その声には依然として怒りが混じっている。
「絶対の強者に憧れた私はいずれ貴様に並び立たんと牙を磨いた。いつしか私は同族を超える強さを身につけていた。少し学べば、ヒトの言葉も覚えた……」
黒狼が語るのは、俺への憧れであった。理由はどうあれ、命を救われた時の事が焼き付いていたのだろう。過酷な自然に生きる者達だからこそ、より強くそう感じるのかもしれない。
語っていたのは恐らく天寵を得た時のこと。だがそれも直ぐに移ろいゆく。
荒々しい怒りは、過去から現在へと移りゆくに連れて、人語を喋りながらも吠えるような音へと変わっていく。
「数多の地を巡り、数多の地で王として君臨した。やがて私に敵はいなくなっていた。この山など、ひどく退屈だった。少し凄めば、立ち向かってくる者は殆どいなかった。……そんな取るに足らない辺境の地で、貴様の姿を見た時には私と貴様はやはりそういう『運命』の中にあると思ったよ……だが、貴様はどうだ!?」
……変わっていく、のだが。
なんだか話が変な方向に向かってきているような気がする。
運命という言葉が、何故だか浮いて思えたからだ。いずれ並び立つというのは、てっきり『奴を超える』的なモノかと思っていたが、どうも違うような……?
浮かぶ冷たい汗はディルグロイクの怒りに圧されたからではない。冷たい汗は、困惑で素の滲み出てきた素の『俺』の象徴だ。
「一途に貴様を思い続けて来たというのに、あろうことか貴様は番を連れていた……! 」
そこまで聞くともう、頭痛さえ感じていた。
ディルグロイクと出会ったのは、過酷な環境故に人が寄り付かない辺境の地。俺は修行の途中に魔物を見ただけと、出会いとさえ思っていなかったのだが、ディルグロイクは俺に憧れ、強さを求めるため流れに流れた。
そしてこのグリーナの街付近で運命の再開をしたと、伝説の魔物はそうのたまったのだ。
確かにエリナに対して、そしてエリナをかばう俺に対して異常なまでの殺意を向けていることは、おかしく思っていた。
だがその理由が『お兄ちゃんどいてそいつ殺せない』だったと? ……理解できない、する気もない。
が、サブカルチャーに通じていた日本人の俺が、その状況を無理やり理解させていた。
「腑抜けた、と思い失望……いいや、絶望したよ。だが貴様の圧倒的な魔力を見て、分かった。貴様は未だ黒曜石の様に強く、蠱惑的に輝いているとな。……故に今ならば、許そう。そこを退け、その小娘を殺す。貴様の隣には私こそが相応しい……!」
一気に気が抜けた。いや、状況は依然として変わりない。ディルグロイクは変わらずエリナに殺意を向けているし、満身創痍のエリナではその決定に抗う事はできないだろう。
……それでも、俺は肩を落としてしまった。なんだか、今日は油断が多い気がする。
もう、今の俺は半分以上を『素の俺』が占めていた。
「まず、一ついいか」
「なんだ」
だが、これだけは、これだけは言っておきたい。
「別に、エリナとは番でも何でもない」
「コイツと番なんて、冗談じゃないわ……!」
後ろからも、その声は響いた。同じ意味を持った言葉は、瀕死のエリナから絞り出されたものだ。
死の淵にあってなお抗議する辺り、余程遺憾の想いがあったのだろう。
……そこまでされると少し傷つくが、言ったことは同じだ。目を瞑ることにする。
「なんと……!」
だがこれにはディルグロイクもびっくりであった。
天寵を得た伝説の狼には似つかわしくない、犬が面食らうような表情は、恐らく有史以来の初のものだったろう。
「だが貴様らは共に行動していたではないか! それをどう説明する?」
しかし自然界特有の理論だと、男女のペアで行動しているというのはもう番になるらしい。
確かに狼の群れでは何事もペア行動が基本になるというが……
「人間の世界では、番になるにはお互いが恋愛感情を寄せている状態で、それを伝える必要があるんだ。……断じて、共に行動するだけでは番にならない」
「早とちりか!」
「……そうだ」
早とちりが過ぎる。
それで殺されかけたエリナを思うと、何ともいえない気持ちになった。
ふと、後ろを見やると、エリナは最後の力を使い果たして気を失っていた。濡らしたハンカチは落ちており、目はつらそうに結ばれている。
……あまりのことに流されていたが、彼女が危険な状態にあるのは変わらない。出来るだけ早く下山し、本格的な治療を行う必要があるだろう。
「誤解が解けたのなら、もういいか? ……彼女を悪く思っていないのは本当だ。早く治療してやりたい」
話を聞く限りディルグロイクは俺に対しては悪い感情を持っていないように思える。
誤解を解いた今、彼……いや、彼女? はさほど脅威にはならないだろうと感じていた。
「いいや、まだだ」
だがディルグロイクは依然として臨戦態勢を続けていた。
俺も敵意を向けられると、目を細める。向こうが俺を悪いようには思っていなくとも、邪魔になるならば殺す。そういう思いがあった。
「ここで会ったのは何かの運命だろう? ヒトよ、私と契約しろ。私はお前と共に在りたい。そうすれば、小娘を助ける事を許してやる」
剣呑な雰囲気の中ディルグロイクが差し出してきたのは、交換条件だった。
「契約というのは『契約獣の契り』の事を指しているのか」
「然り。いずれは番になることを望むが、無理矢理は此方とて望まぬこと。今はそれでよい」
ディルグロイクが求めてきたのは──契約獣の契りであった。
契約獣とは、文字通りヒトと契約した魔物の事をいう。ヒトは名を教え、魔物はヒトより名を賜る。それを魔物が受け入れることによって成立するのが『契約』だ。
互いの命が失われない限り、互いを害することは出来ず、獣は何時でもヒトの元へと駆けつけることが出来る──しかし、契約を結べる魔物は例外なく一体だけ。魔物側のテレポートを除けばお互いに制約を架すだけの、魔術の中でも非常に特殊な魔術といえるだろう。
いわば、一体としか契約できない召喚獣の魔術である。
だがそれは認め、認められることで結ばれる絆の証明だ。契約獣は友であり、家族であり、戦友でもある存在。そんな契りを結ぶ魔術はその効果以上に、この国の人々にとってさえ、大切な意味を持っている。
それでも、番となるよりは大分ハードルの低い条件の持ちかけだ。
だが、一つ忘れてはいないだろうか?
「俺が貴様に許可を得る必要があるとでも?」
魔力を発し、凄んで見せると、気を失ったエリナが身じろぎをするのが見えた。
闘ってわかったが──ディルグロイクは強い。しかし俺の方がまだ強い。
許可を得ずとも、ここを押し通る事はできる。殺意をもって相対されるのは、ディルグロイクとて望むところではないだろう。
「時は一刻を争うのではないのか?」
……が、逆にそう聞き返されると、俺は言葉を失った。
そう、闘ってもいいが──簡単にはいかない。その間に、エリナの容態が手遅れになる可能性もあるのだ。
それでも俺が凄んでみせたのは、契りを交わすことを避けたかったからだ。
天寵を得た伝説の魔物と契約を結んだ? そんな事が知れたらザウル=エリンを喜ばせてしまうに決まっている。……あるいはそれさえも奴の思惑のうちにあったとしたら──
嫌な考えが頭に浮かぶと、俺は首を振る。
言葉に詰まってしまった以上、悩んでいる暇はない。
本当はこんな厄介な存在を抱え込むのは避けたかったが、同僚の命には代えられない。
「……名前はディルでいいか?」
「嫌だ。男のような名前ではないか、私は雌だぞ? それに貴様は人間の子にヒトと名を付けるのか?」
儀式に必要な名を決めるために問うと、拒否された上にダメ出しまでされてしまった。
……犬に名前を付けたことはあるが、名付ける予定の動物に拒否される経験は中々出来るものではないだろう。
だが確かに、適当過ぎたのは悪かった。大切だからこそ、契約獣の契りにおいて名前が重要な役割を果たしているのだ。
とはいえ、長々と悩んでいる暇はない。
何かないか……と思案すると、他でもないその漆黒の毛が目に映る。
「クロ、でどうだ」
発音したのは、ここではない遠い国の言葉。
言うまでもない、黒だ。
「クロか。……それでいいだろう。では──主よ、名を」
地球ではペットの名前としてメジャーだと伝えたら、彼女はどんな顔をするだろうか。
少し気になったが、ここに存在しない星の名前を伝えても、意味は無いだろう。
それに、その名前が悪いとは思わなかった。彼女の姿を表すに、これ以上の言葉はないだろう。
「我が名はユーリ=ロマノフ。汝に名を与える──汝の名はクロ。契りを以て、汝と永久を過ごす事を誓う」
名という最も重要な存在の証明に、魔力を通わせていく。すると、足元から淡い桜色の魔力が吹き出してくる。
契りの魔術が、準備を完了したのだ。あとはこれに魔物が応じれば、契約は完了する。
「承った。我が名はクロ。これよりユーリ=ロマノフを友とし、主としよう。……よろしく頼むぞ、ユーリ」
ディルグロイク──いや、クロがそう言葉を発すると、淡い光はクロを包んでその体に収まっていった。
これで彼女は『クロ』となり、正式に俺との契約を完了させた。
俺とクロは互いを傷つけることは出来ず、どちらかが望む限り、クロは直ぐに俺の元へと駆けつけることが出来る。意思の疎通を円滑化する効果もあるようだが、言葉を話せる彼女にそれは必要ないだろう。
……生涯を通した友。契約獣はそう呼ばれる。だとすると──彼女は『俺』の人生で最初の友人ということになるらしい。
「では、下山するとしようか」
「……着いてくるつもりか?」
「当然だ。まあ案ずるな、人の世はよく学んでいる。迷惑はかけん」
着いてくる気満々か。
一緒に行動しているだけで番とみなすようなクロの言葉に、不安が漂う。
だが問答をしている暇もなく、俺は諦めてエリナを背負った。
……とんでもないのと契約をしてしまった。人質を背景にした要求は、見事だったといえるだろう。
こうして、俺は新たな苦労を背負い込んだ。彼女との付き合いが長いものになるのは──考えなくても、判るだろう。