表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

月と花火と太陽と

月のあの子

作者: 卯侑

「キレイ」


 ぽっかりと夜空に浮かぶ、月に向かって呟いた。


 黒色と青色の絵の具を混ぜたような空に、白色と黄色の絵の具を混ぜたような月。


 ほぼ毎日見れる景色。なんだか偽物みたい。


「いいわね。……羨ましい」


 月は、きれいだ。

 花鳥風月とも言われるし、月とスッポンと例えられたりもする。



 ……月に勝とうだなんて、恐れ多い。

 けれど、言ってしまったのだ。彼に。


『月よりも、私の方がキレイになったら……私と、付き合って』


 ある種の賭だった。


 月に勝てるはずがない。そんなこと、分かってる。

 所詮は花火のように、一度きりで散っていくしかない私。


 ……だから、少しの可能性に賭けてみようと思った。


「一夜の夢でいいから……見せてよ」


 花火のような私だもの。見る夢は、散る前の一夜限りでいいわ。だって……、ねぇ。夢が見られるだけ、幸せだと思わない?


 どうせ、散るなら潔く散りたい。



 ……月に勝ったって、意味がないこと、分かってる。

 ただ、私は。それでも、月のように輝いているあの子に勝ちたかっただけ。


『あなたは月。私は花火。そうでしょう…?

私とあなたは違うけれど、おバカな所は似てるのね』


 彼の葬式で、あの子にぶつけた言葉だ。

 自分への皮肉でもあった。もう振り向いてもらえない彼。勝敗を決める前に勝手に死んでしまった彼。


『……それ、どういう意味よ』


 涙をためつつも、反抗的なあの子の目には月があった。その中に輝きはなくて。


『バカでしょう。つれない彼に、恋をして……』


 あの子には常に、輝きを分けてくれる誰かがいる。私みたいに、自分だけで輝かないで済む。

 こんな所にも、月と花火の特徴はあるのだ。本当に、どこまでも皮肉的。


「もう、いいわよ。独りでも……」


 もう、見られない夢など望まない。



 私は、ソコから飛び降りた。


ミニシリーズするかもです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 月のあの子、花火のわたし。光を受けて戸惑いながら輝く彼女と、一瞬の決断の中に飛び込んで煌めこうとするわたし。取り残されて悲しみの流れに沈む姿すら絵になる月に、どうしようもないことに抗い追い…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ