第一節第六話 復活燃焼の炎
更新が遅れてしまい申し訳ありません。今後、こんなことがないようにします。
あれから何日が経ったのであろう。自分で思うのもなんだが、見るも無残な姿だ。両足首を鎖で留められて、顔は窶れ、髭が生え始め、髪はボサボサ。例えるなら、会社をリストラされたサラリーマンだ。
私は鉄格子の窓の外を見ながら、ただただ振り返る。なぜあの時、ヴァッサーにあんな事をしてしまったのだろうか、と。我を忘れていたとはいえ、あそこまで本音をぶつけ、痛めつけた。そして、殺そうとした。
「ああ……」
私は、大きくため息をつく。
今思っても、何でやってしまったのだろうか……。ヴァッサーは女性なんだ。悪の幹部で能力があるとしても、体は女性なんだ。それなのに私は、ワタシハ……。
「調子どうですか~、フランメさん? ちゃんぽん持ってきました――って、フランメさん! 何やってるんすか!」
雷の幹部・ドンナーが夕食のちゃんぽんを片手に持ちながら、鉄格子の扉を開ける。
私の状態を見て、ドンナーは驚いた。と同時に、持ってきたちゃんぽんを床に落とした。
「ああ、ずごじでもヴァッザーのぐるじみをあじわなげればどおもい」
「無理に喋らないで! ヴァッサーさんと同じことになりますよ!」
そう、私は左手を悪魔の炎の手に変えて、自分の首を絞めていたのだ。少しでも罪滅ぼしをしなければヴァッサーに申し訳ないと思った。ただそれだけの理由だ。
「わだじのごのおごないが、ヴァッザーをぐるじみがらがいほうでぎるのなら、私は幸せだ……」
私は幸福そうに言った。
しかし、そんな私の姿を見てドンナーはがっかりするようなアクションを見せた。言ってしまえば肩を落とした。あきれたのだ。
「フランメさんがそんなんでどうするんですか! ちゃんと反省しているなら良いんですが、罪滅ぼしに死なないでください! それじゃまるで、卑怯な逃げ方をする人間達と同じですよ?」
「では、今の私には一体何ができる? もう面会することも出来ないのだろう? そりゃそうだろう。ヴァッサーは自分を殺そうとした私なんか見るのも嫌なのだからな」
私は投げやりのように言葉を投げた。もういっそ人間と同じでもいい気がする。もうそれと同等の事を犯してしまっているのだから。
そんな私を見てか、ドンナーはため息をついた。
「……実はですね。あの後、ヴァッサーさんも後悔してたんですよ。「フランメに謝りたい。フランメに謝りたい」ってずっと泣きながら言ってましたよ。皆で必死になって励ましたんですけど。それでもずっと言ってきて。しまいには、能力を使って皆を拘束したりしたんですけどね」
ドンナーの口から出た知らせに私は驚愕した。真面目に驚愕した。
何だと? ヴァッサーが、ヴァッサーが私に謝りたいだと? もともとの原因はこちらだというのに謝りたいだと? 分からない。そこまでして私に会いたい理由が分からない。何故なんだ。何故そこまで私を愛せるんだ? 愛してやまないのか? 最低な行為をした私を何故そこまで好きになれるんだ? なぜ私の事が大好きなんだ? 何故なんだ?
「……ンメさん、フランメさん――」
ヴァッサー、私は君の事が大――
「フランメさん!」
「はっ!」
私はドンナーの呼びかけに気づき現実に戻ってきた。
ドンナーは豪く驚いている。何かあったのであろうか?
「フランメさん、なぜ泣いているんですか?」
「え?」
私はドンナーに指摘され、頬を触る。そこにはただただ細い水が流れているのであった。
私はこの時やっと理解した。
これが人を愛せる愛なのだと。
「ドンナー、頼みがある」
「はい何でしょうか?」
ドンナーは何かを悟ったように私に聞き返す。
「ヴァッサーに会わせてほしい」
美味しい所は次の話でやります。