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ワルの幹部の感情恋愛 第一章  作者: 岩城ぱれす
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第一節第二話 炎は迷い舞い、白の出会いが起こる

「ふ、人間共。のんきに寝ていろ。今から私の業火が貴様らを永遠の眠りにつかせてやろう!」

 現在の時刻0時12分。この辺りの人間が寝るまで電線の上で腕を組みながら待っていた私だが、ようやく作戦実行する時が来たようだ。

 ヴァッサーから交換条件付きで教えてもらったことは、今夜0時から季節風が強くなり空気が乾燥するとの事。そこに、私の能力の炎を使うのだ。そうすればこの辺り一帯、私の素晴らしい業火で燃え尽きるだろう。

「では始めるとするか。目覚めろ、私の中の炎の悪魔、ヘルファイアよ!」

 私が自分で自分を高めるようにそう唱えると、私の左手が見る見るうちに焦げていく。そして、完全に焼け焦げた悪魔の手になった。

「うっ……やはり、制御が効かないか。だがそれでいい。今日は焼け野原にするためにここに来たのだから」

 私は左手を天に向け、炎の塊を大量に出現させた。そして、

「さあ、さらばだ人間! 絶滅しろ!」

 私は一気に炎を突撃させた。炎はどんどん家々に放火されていく――はずだった。

「なぜだ……なぜ、炎が点火されない!? 深夜0時から乾燥しているのではないのか!?」

 私は胸ポケットに入れておいた温湿度計を確認した。温度は7度、湿度は83%を指している。ここで今やっと自分の過ちに気付いた。

「もしや、まさか、この私が……ありえない……」

 そう、行く世界を間違えたのだ。本来ならば、今頃人間界で炎を放ち、人間たちを地獄に(ほうむ)っていたはず。だが、今は水透界(水の世界)で自分の業火を燃やしつくさないまま、水の世界で反省。これが、悪の幹部だとはこの世界の住人共はわからないだろう。

「くそ、やってしまった……。しかも、今月58回目。やはり、持っていくべきだったか」

 これが初めてではない。私は他の幹部、部下からこう言われる、『フラフランメ』と。あだ名の由来は、目的の場所に行くまでフラフラと道を間違えるからだそうだ。そしてなぜ今日に限ってナビを持っていかなかったのだろう。……わっ、私は決して認めたわけではない!誰がそんなあだ名を認めるか!そんなあだ名、気にいっているわけではない!断じて!

「しかし、このままではいずれ私が悪の幹部だと気づかれてしまう。一刻も早く出直さなければなら――」

 私は自分でもわからないが、慌てていたのだろう。そのままバランスを崩し、電線に感電しながら地面に落ちた。体中が独特の強烈なしびれでマヒしている。

「ぐっ、私としたことが。電線から滑り落ちるとは……」

 マヒしている体を無理やり起こし、その場にゆっくりと立つ。すると、家という家からサイレンが鳴りだし、灯がともった。

『なんだ! なにが起きたんだ!』

『サイレンが鳴ったという事は……』

『わーヤバい。悪の幹部がやって来たぞー』

『早く見つけ出して、シャチのえさにするぞ!』

「しまった……今の状態では……っ」

 私はその場から早く逃げ出そうとした。が、体がマヒしているせいなのか思うように逃げられない。もはや万事休すの状態だ。

「いたぞ! 悪の幹部だ!」

「もう見つかったか!」

「早くシャチを連れてこい!」

「無理です! シャチが眠っています!」

「ならシロワニだ!」

 シロワニとは、大型のサメで昼間は眠っていておとなしいサメ。だが、夜になると急変。夜の殺し屋と化す。なお、名前の由来は、サメの事をワニと呼ぶ地方があることからその名がつけられた。そして、メスの腹の中で行われる子供による共食いはとても有名。

 なんていう説明をしている場合ではない。私はここで最期を迎えてしまうのか。まだ何か策があるのではと考えながらもがいていた所だ。奥の塀の向こうから暴れザメとなったシロワニが連れてこられた。飼育者であろう男が必死で押さえているが今にも紐が切れそうだ。とフラグを立てた時だった。実行されてしまった。紐が切れたのだ。

 紐が切れ、押さえつける者が無くなったシロワニは、飼育者の男の腕を噛みちぎった。

「ぐギャアアア!!! 腕が! 腕が!」

「みんな逃げろ!」

「おい! 見捨てるつもりか! 俺が食い殺されてもいい――」

 男の周りにいた奴らは全員置き去りにし、それぞれ風になったかのように自分の家に帰っていた。

 男は助けを求めて叫んでいたが、途中で心臓があるであろう部分を食いちぎられ、そのまま残骸が地面へパタリと落ちていった。空気中には、血が大量に舞い血っている。私もこの世界に初めて来たから知らないが、おそらく空気中には常に五感で感じ取れないぐらい薄い水が浮いているのだろう。だから血が浮いていると考えた。

「次は私か」

 シロワニはボロボロになって噛み食べ飽きた肉の塊を吐き捨て、こちらをギロリとにらんだ。そして、こちらに方向を変え巨体からは考えられない速さで寄って来る。

「こっちに来るな!」

 私はマヒしている悪魔の左手をシロワニに向け、今出せる最高火力の炎を発射した。

 だが、シロワニはそれにひるまず、速さを変えず、左手に噛み――つかなかった。というよりも、シロワニが塀に突き刺さっている。胴体には素晴らしいぐらいに長く美しい白いランスが突き刺さっており、シロワニはぴたりとも動いていない。

「死んでなくてよかった」

「君は……」

 そこにいたのは、全身白のバイクスーツと白のヘルメットをかぶった白づくめの少女だった。身長はそこまで高くないが、すらっとした体型で、腕や足は特に目立つくらい細く、モデル並みだ。

「わたしは……愛と! 勇気と! バイクで悪を撃つ! 人呼んで、冒険ガール! 空間飛び越えて、悪をバイクで蹴散らし――てもらいましたが、それがなにか?」

「バイクではなく、ランスで貫いた気が……」

 彼女は一体何者だ?いきなり正義の味方が登場してから数秒もかからないうちに決めゼリフを言うかのように名乗ったが、いったい何者なんだ?それに、最後の所の寒暖差がすごい。あれだけノリノリで名乗っていたが、いきなり第一声の時と同じような声になった……。

「わたしのバイクはそのランス。名前はランスのバイク」

「……」

 絶句した。ややこしすぎて絶句した。この幹部一冷酷かつクールな私をここまで絶句させるとは彼女、いや冒険ガールやるな。

「それよりはやくランスに乗って。この世界から、脱出する」

「ランスだと? あのランスのことか?」

「ちがう? とぼけないで」

 いきなり怒られた。わからないことを怒られてもこちらが困るだけだ。なぜ怒られたのだろう。全く謎だ。謎すぎる。謎すぎるぞ冒険ガール。

 冒険ガールはシロワニに突き刺さったランスのバイクを引き抜き、

「次、人を襲ったら一族全員ディ○りますよシコ○コとした歯ごたえでおいしいシロワニさん?」

 魚類相手に、危ない言葉を交えながら捨てゼリフを吐いた。

「では、ランスに乗って帰りましょう」

「で、どうやって帰ろうというのかね?」

「こうやって」

 彼女はポイっとランスのバイクを放り投げた。するとどうだろうか。どう見ても変形してもバイクになるはずのないランスが見る見るうちにバイクになっていくのだった。その速さ、驚きの0.1秒。

「では、乗ってください」

「今のは一体?」

「世界には知らない方の事がいっぱいあります。ちなみにこの子の名前は、バイクのランスです」

 いい加減そのややこしい名前をやめてほしい。訳がわからなくなる。やはり侮れぬ、冒険ガール。

「で、どちらまで?」

「とりあえず、人間の世界まで」

「では、メットを被ってください」

 冒険ガール、君の冒険心はどのくらいあるのだろう。彼女は今まさに敵である悪の幹部を。行き先間違え、九死に一生を得た悪の幹部を、終わらせようとしていた世界に運ぼうとしているのだ。とんでもないぞ冒険ガール。優秀な正義の味方だ。

「では()びます」


「すいません、行き先を間違えました」

「なっ……」

 本日二度目の絶句だった。こればかりは声が出なかった。なぜなら彼女が連れてきた世界は、見慣れた黒い雲に赤い空、枯れた草木、カラスが群がる空家、そうここは、


悪魔界だったのだから。


「あれ? 早かったわねぇ、フランメぇ。どうだった?」

 突如どこからかわからないが、ヴァッサーが現れた。まずい。今日の中で一番まずい事になりそうだと実感した。彼女は、先程のような姿ではなく、マントをつけていない。外回りの最中らしい。

「フランメ? すいません、この人の名前ですか?」

「えっ……どうしてここに、


正義の味方がいるの?」


 ヴァッサーは目を丸くして驚いた表情だった。ここで、私は実感した。


彼女も方向音痴なのだと。


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