恋語りに至るまで 3
「クレハちゃん、皆。僕、ちょっと世界を見てくるよ」
「「「「「 え? 」」」」」
ある日の朝いきなり、旅装に身を包んだフレンさんが、そんな事を言った。
突然の事に意味がわからず、私達は目を瞬かせる。
フレンさんの手には、一冊の本。
タイトルは、"世界の名所案内"。
「暫く色々な場所を旅してくる。結構長く留守にすると思う。ごめんね」
「え、ちょ、ちょっと待って下さいフレンさん! 何で突然!?」
「突然でもないよ。少し前から考えて、旅費を貯めてたんだ。で、結構貯まったから。クレハちゃんの護衛には、シヴァ君やギンファちゃんは勿論、今やフェザ様達もいるから心配ないし、旅をするなら、若いうちにしないとね。だから、行ってくる」
「と、突然ですよ! 暫く会えないんなら、ミュラさんの時のように皆を呼んで……!」
「その必要はないよ。僕は旅行に行くだけだから。ちょっと長いけど、そのうち帰ってくるから。シヴァ君同様、僕の家は、ここだからね」
「フレンさん……」
「シヴァ君、ギンファちゃん、イリスちゃん。留守の間、クレハちゃんをよろしく。フェザ様達にも、そう伝えておいて。じゃあ、行ってくるよ」
そう言って、フレンさんは突然、旅立って行った。
時々、手紙が届いて、フレンさんの無事と旅路の楽しさを伝えてくれる。
最初の頃は寂しくて、土地の名産品が添えられた、楽しそうな内容の手紙が届く度複雑な気持ちになったけれど、今では手紙からその場所の風景を皆で想像して、楽しんでいる。
いつかフレンさんが帰ってきたら、手紙には書ききれない程の旅のお話を、目一杯して貰うんだから!