恋語りに至るまで 1
あれから、三年経った。
今日は再び、シヴァ君との契約が終わる日。
私達は奴隷商館を訪れ、灰色猫さんに会った。
「はい、これにて解放の手続きは終了です。次は、シヴァの保護者変更の手続きですね」
「そうね。これは私達に任せておいて、シヴァ君、クレハちゃん。ちょっと時間はかかるけれど、後腐れのないようにきっちりやっておくから」
「はい、よろしくお願いします、アイリーン様、灰色猫さん。じゃあシヴァ君、家に帰ろう! これからは名実共に、契約奴隷としてじゃなく、家族のように、友達のように楽しく暮らそうねっ!」
「はい、クレハ様。……いえ、クレハ。これからも、よろしく」
「うんっ!」
今後シヴァ君は、保護者という名の後見をアイリーン様に変える事になった。
だからもう、父親に売られる事はない。
父親との話し合いは、アイリーン様と灰色猫さん、そしてお役所の人がやってくれるらしい。
保護者を変更する課程で一度だけ、父親から酷い扱いを受けていた事を関係者全員の前でシヴァ君本人の口から話す必要はあるらしいけど、シヴァ君は、その時以外、父親に会う気はもうないと言っていた。
シヴァ君がそう決めたなら、私が言う事は何もない。
シヴァ君の家族には、私達がなればいいんだしね!
私はシヴァ君の手を引いて、奴隷商館を出た。
「あっ、クレハ様、シヴァ君!」
「やぁ、ちょうどいいタイミングで出てきたね。こっちも買い物、終わったよ」
「あ、ありがとうございます、フレンさん、ギンファちゃん!」
「では帰りましょう。イリスさんが待っています」
奴隷商館の前でフレンさんとギンファちゃんが合流し、私達は家へと帰路につく。
「さぁ、今夜はシヴァ君が奴隷から解放されたお祝いだよ! 腕によりをかけてご馳走作るからね!」
「はい! お手伝いします、クレハ様!」
「イリスちゃんも張り切ってたよ。今日はちょうどフェザ様達も魔物討伐から帰る予定の日だし、賑やかになるね」
「あの、やっぱり俺も手伝い」
「「「 それは駄目! 」」」
「シヴァ君は今日の主役なんだから、手伝いはいいの!」
「そうですよ! ゆっくりしていて下さい!」
「僕の役目はシヴァが手伝わないようにする事たからね。帰ったら夜まで、僕の相手をしてもらうよ?」
「…………はい」
私とギンファちゃん、フレンさんから揃って止められて、シヴァ君は複雑そうな表情を浮かべながらも頷いた。
そして、その夜。
魔物討伐から戻ったフェザ様達に、アイリーン様やライル君、アレク様にアージュ、セイルさんにミュラさんも加わって、久しぶりに大勢で賑やかな食事になった。
皆が笑顔で、ご馳走を囲む。
何よりも大切なこの時間は、きっとこれからも、続いていく。
何年か経って、進む道が別れたとしても変わらずに、時々こうして皆で、集まって。
皆となら、そう、信じられる。