街へ行こう! ~ラクロとルークの日常編~
ラクロ推しの皆様、お待たせしました!
ラクロの短編集第1弾です!
いやぁ、やっと書けました。
「先輩~~! 大変です~! どうしましょう先輩~~!! 助けて下さ~~い!!」
「……またか」
俺は溜め息を吐き、書類から顔を上げ、困りきった声を上げながら部屋に飛び込んできた男を見た。
男の名は、ルーク。
俺が教育係を務める、後輩の見習い天使だ。
この男は、三、四日に一度、こうして俺の部屋に奇声を上げながら飛び込んで来る。
手がかかりすぎて、正直、どうしてこんな奴の教育係を引き受けてしまったのかと思う事が多々ある。
……まあそれでも、以前は毎日こんなふうに飛び込んで来ていたのだから、その頻度が減った分成長はしているようだが。
「今度は、何をしたんだルーク? 要点だけを短く、簡潔に答えろ」
「はっ、はい! 華原さんの畑の作物を一部体の下敷きにして駄目にしてしまいました!!」
「…………ほぅ。華原さんの」
「はい! どうしましょう先輩!」
「そうだな。とりあえず、ルーク」
「はい! 何でしょう!?」
「覚悟はいいな?」
「えっ!?」
俺は立ち上がり、ルークの横に回ると、握り拳をつくり、ルークの頬にクリーンヒットさせた。
「痛ぁっ! ひ、酷いです先輩……!!」
「やかましい! ……駄目にした作物を撤去、その作物と同じ物の種を買って植え、成長促進の魔法をかけ元通りにしろ。以上だ、行け」
「はあい……うぅ、痛い……」
頬を擦りながら、ルークは出て行った。
「全くあいつは……また華原さんに迷惑をかけて……いつになったらつまらないミスをしなくなるんだ」
ブツブツと悪態をつきながら、俺は再び書類に視線を戻した。
この指示を、後で後悔する事になるとは、この時はまだ知らずにいた。
「……何だこれは」
「あ……! せ、先輩……!!」
華原さんの元に行き、ウォンを受け取った後、そのウォンを華原さんの家のペット小屋に置くと、畑にルークの様子を見に行き……俺は目を疑った。
畑の作物が全部、枯れていた。
「……ルーク……これは、俺の記憶違いだろうか? お前は、"一部の作物を駄目にした"と、言わなかったか……?」
「い、いえ、その……成長促進の魔法を、その……加減を、間違えちゃったみたいでして……それで……」
「……それで?」
「……しゅ、周囲の作物まで……巻き込んでしまいまして……えっと、先輩、怒ってます……?」
恐る恐るそう尋ねるルークに、俺はにっこりと笑顔を返し口を開いた。
「……俺が、怒ってるか、って? お前は、どっちだと思う? ルーク?」
「え……っ、ええええと……!!」
「ルーク。……覚悟は、いいよな?」
「えっ!!」
ルークの頬に、再び俺の拳がクリーンヒットした。
その後、帰宅した華原さんに謝り、華原さんの気が済むよう手助けした後、ルークを神様の元へ突きだした。
本当に、あいつはどうしようもない。
俺はいつの日か、あいつを一人前と認めて、教育係を卒業できる日が来るんだろうか?
今のルークからでは、そんな日が来る事などとても想像ができなかった。
「先輩!! 先輩~~~!! 大変です~~~!! 助けて下さい~~~!!」
「……チッ」
「痛ぁ!! ひ、酷いです先輩っ、まだ何も言ってないのに~~!!」
今日も今日とて、部屋にルークの声が響く。
俺はとりあえず、ルークの頬に拳をめり込ませた。