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転生業務日誌 ~転生神はつらいよ~  作者: 酔生夢死


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5話 スライム転生ってそういう……

※残酷描写があります。

 は、はじめまして、今日も懲りずに転生業務始めます……

 今日の転生者は、水上(みながみ)善治郎(ぜんじろう)さん、34歳で会社員の方ですね。

 では、張り切って参りましょう!


 ……突然ですが、既に心が折れそうです。

 正直申しまして、暫くお肉が食べられそうにありません。


「なんでよりにも因って、肉体ごと転生する直前に事故に遭っちゃうんですかぁ」


 それも、たまたま休日にドライブに出かけたら、運悪くトラック同士の衝突に巻き込まれるとか……しかも死傷者が彼1人なだけに、運が良いのか悪いのか……


「しかし困った事になりました……このままでは転生させてあげられません」


 今回の私の権限は、肉体の強化と能力の付与である。

 つまり、こんなにまでなってしまった彼の身体を直す(すべ)がないのである。


「一部の欠損とか、病気程度なら治してあげられたんですけど……ここまでぐちゃぐやだと元の姿に戻せないですよぉ」


 幸い、彼の身体には元々魔力があり、それがこんなになっても魂を引き留めていたお陰で、体さえどうにかできれば復活できますがぁ……

 私では人間の体を1から作り出す事なんて権限が無いので、正直手詰まりなんですけど。


「すでに内臓などを判別するのは不可能……そうだ! それが関係ない体になればいいんだ!」


 ひらめいた時は天啓を得たと思いました。神様ですけど。

 正直この時の私は混乱の絶頂にいた為、それがどういう事かすら良く考え得ませんでした。



「ふう、骨格も内臓も必要ない体で、あの状態から唯一復活できる体と言えばこれしかありませんよね」


 私の目の前にはボーリング玉サイズのスライムがいる。

 身体を失ってしまった彼を助ける為にはこれしかなかったのだが……ハッキリ言って失敗だったかもしれない。


「考えてみれば、人間とスライムじゃあ持っている器官も能力もまるで違うじゃないですか!」


 スライムは全身が脳であり感覚器であり消化器官なのです。

 当然、人の感覚のままでスライムの身体を扱いきれるかは不明だし、何より倫理的な嫌悪感もあるでしょう。

 私だっていきなりスライムになって、草や虫を食べろって言われたって無理です。


「い、今からでもキャンセルってありでしょうか……いやでも、そうしたらこの人を見殺しにしてしまう訳で……」


 仕方ありません。

 可能な限りの能力を付けてサポートして異世界へ送りましょう。

 というよりも、そうするしかありません。


「という訳で、何か質問はありますか?」


(目が覚めたらスライムになってた件。すみません、色々いきなりすぎてコメントが無いです)


「ですよね~。じゃあ、お身体の方はどうですか?」


(不思議な感じですね。普通にしていると丸くなるけど、伸ばそうと思えばどこまでも伸びて行くし、腕?の形も安定しないですね)


 目の前のスライムが確かめるように、体の一部を細く伸ばして腕を振るような仕草をする。

 ただ、動かす為の魔力の関係かすぐに引っ込んでしまいました。

 魔力はスライムにとって筋肉であり電気信号であり感覚器であり脳と同じ働きをしています。


「気を付けてくださいね。スライムは魔力で体を維持しているだけなので、体の体積が減ると体が維持できなくなって死んじゃいますよ」


(うっす、というか脳味噌とかどうなってるんですかね。骨格が無いからウネウネと動かし放題で落ち着かないんですけど)


「慣れてください。レベルが上がって強くなれば、人型にもなれますから」


(スライムからレベルアップって、果てしなく長い道程(みちのり)な気がしますけど)


「れ、レベル20ぐらいになれば、スライムでもスキルも使えるようになりますし、魔力を蓄えれば別のスライムに進化も出来ますよ!」


(現時点のレベルが1なんですが)


「い、生き残れるようにこちらで極力サポートはしましたから! 頑張って生き残ってくださいね!」


(雑魚の代名詞にあんまり期待しないでください……まあ、やるだけやって見ます)


 ここで私は考えました。

 彼を同じレベルのモンスターが場所に送るのは簡単ですが、それでは彼の成長は望めません。

 そこで、魔力の塊である魔石がある場所に送るべきではないかと思い付きました。

 魔石がある場所は必然的に、空気中の魔力量が増える為、生息するモンスターのレベルも跳ね上がりますが、それ位のリスクを冒さないとレベルアップは望めません!

 運が良ければ高レベルモンスターの死体とかあって、レベルアップできるかもしれませんしね!


「いいですか、スライムの特性は吸収し消化して取り込む事です。色々食べて体に取り込むのが攻略の近道です!」


(なるほど……)


「さらにモンスターを丸ごと捕食する事が出来れば、そのモンスターに擬態する事が出来るようになります。若干性能は下がりますけどスライムよりは強くなれます!」


(おお、それは良い能力ですね!)


「その他の分からない事は、『大百科』スキルを付けるので参照してみてくださいね」


 『大百科』スキルとは知りたい情報を自動で検索して教えてくれるスキルである。

 他にも進化促進や成長限界突破なんてスキルを付加している。

 正直、いつもより物凄いスキルの選別に悩みました。

 何せスライムに転生させるなんて初めての事ですし……


「それじゃあ、今から送りますけど……死なないでくださいねっ」


(まあ、スライムなんて雑魚モンスターの代名詞だから生き残れるかは不安ですけど、これだけのスキルがあれば何とかやっていける気がします)


 彼の身体が光に包まれる。

 ゆっくりと体が薄くなり、体から細い触手を伸ばしてこちらに向かって左右に振ってくれたので、私も笑顔で振り返しました。

 何か重大な事を忘れている気がしてならないですけど……なんだったっけなぁ。


(よぉし、まずは同じ雑魚を片っ端から食って、レベルアップしてやる!)


 そして、彼が呟いた独り言で私は全身から汗が噴き出た。

 彼に転送先の事を伝え忘れてた!?


 その後、彼がスライム初の魔王になった事を知り、その時の事を恨んではないかと暫く夜も眠れませんでした。

最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。

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