3話 お前が死んだ今日は、昨日誰かが……もういいや
勢いって大事です
とりあえず勢いで走り出して躓くことは多いですけど
これも深夜のテンションと勢いだけで書いてます……
「バッカじゃねーの?」
俺は今日の転生者、鬼龍院零夜の顔を見てそう言わずにはいられなかった。
「何を考えたら高層ビルの屋上から飛び降りて大丈夫だと思ったの? 何、距離測って「いける!」って? 行ける訳ないじゃん、頭の中には糠味噌でも詰まってるの?」
「おっかしいなー。イケる!って思ったんだよあの時は」
「お前、生身の人間の体にどこまで可能性感じてんだよ」
心の底から不思議そうにしているこいつは、首を傾げながらそんな事をほざきやがった。
あ、気付いているとは思うが、今日の転生神は男性型の俺が担当だ。
「言っとくけど、お前あの後に潰れたトマトだからな? 少しは清掃業者さんの身にもなってみろよ」
「知らんなぁ。というか神様チェンジで、こういう時って女神さまかお爺さんがお約束なんじゃないの? 何で金髪イケメンが神様で出てくんだよ」
「良かったな。男性型は全体の5%位しかいないから結構レアなんだぜ? 女性は大小あるが美女ばかりだけどな!」
「嬉しくねぇよ! チェンジで! 絶対神様チェンジで!」
「ここはそういう店じゃないからチェンジは出来ないよ。あと、異世界に転生した後もサポートとして会話できるから、いつでも話しかけてきていいぜ?」
「ゼッテーしない」
ちなみに神様と会話できる機能は結構高ランクの能力だったりする。
その場合、俺はコイツをサポートしている間は転生神から異世界神に肩書が変わり、所属部署も変わる。
「それで、まあ予想はついてると思うが俺は転生神。お前を異世界へ転生させる為にここへ呼んだ」
「へぇ、じゃあやっぱりここは死後の世界って訳か。それで? 俺に何して欲しいわけ?」
流石そういうジャンルに詳しい奴は話が早い。
「実はある世界で、魔力の不循環が発生しててな。前にはその循環器の役割を果たして貰いたい」
簡単に言えば植物の光合成である。
その世界の魔力は消費されると二酸化炭素のような物になる。
それを星という名の循環器が濾過して元の魔力に戻していたのだが、人口の増加と魔法の発達の所為で循環が追い付かなくなり、このままでは魔力が枯渇して星その物が駄目になりそうなのだ。
「そこでお前にはその二酸化炭素を消費して魔力を生み出す術を与える。ソイツをバンバン使って星の魔力を活性化させてくれ」
「いいねぇ。何してもいいのか?」
「ああ、星ぶっ壊すとか人類を敵に回すとかじゃなきゃな」
世界を救いに行くのに世界を敵に回してたら本末転倒だ。
まあ、コイツがそんな奴じゃないのは調査済みだし、あと一押し二押しで落ちるな。
「じゃあさ、獣人とかエルフっているの? ああ、勿論獣人は獣耳と尻尾だけの奴ね。俺ケモナーじゃないから」
「いるいる、チョーいるよ。あと奴隷制もあるから奴隷ハーレムなんかも出来るね」
「おお、ヨッシャ!」
その辺は男のロマンだからなー。
ただ今回の世界だと、獣人の発情期にはタフな獣人の雄ですら枯れるほど搾り取って来るし、女のエルフはプライドが高い上に独占欲が強いから、亜人ハーレムなんか作った日には多分干物になるんじゃないかな性的な意味で。
「他にもロリBBAドワーフとか、ほぼ全裸ニンフとか、リザードマンとかもいるよ。雄はアレだけど雌はみんな人間に近い設定になってるし」
「お約束だな!」
ちなみに「勝ちたければ男は戦場、女はベッドの上で戦え」とはその世界の言葉である。
そんなでも出生率は高くないので、勢力的には人族を下回っているので中々バランスは取れている。
それと言えば、人族が異種族で番になるというのは中々ない。 何故なら子供が出来にくいのと体が持たないから。
ただ亜人の雄は減少傾向にあるから狙い目ではある。
「じゃあ、お前の希望はハーレムな訳?」
「ああ! 男なら一度は夢に見るだろ!?」
真っ直ぐなキラキラした目が見て居られなくて、俺は勝手に絶倫とその手の技能スキルを追加した。
幾らなんでも担当した奴が腹這い死なんて俺が嫌過ぎる。
「そうだ、それでどんな能力をくれるんだ?」
「ああ、その説明を忘れてたな。簡単に言えば、何でも作れるスキルだ」
「チート能力キター!」
下手をすれば神に匹敵する高ランクスキルである。
但し物凄く使い勝手が悪く、作る物がどういう物かを明確にイメージしないと何故か手から心太が出てくる。
しかも掌からニョキニョキ出て来るので、拳を握り締めてた日には指の間から噴水の様に吹き出すのだ。
誰だこんなくだらない仕様にしたのは。
「注意事項だが、お前は一切魔力を持っていないから創造魔法以外は使えない。また不老にはして置いたが不死じゃないから気を付けろ」
「ヘイヘイ、分かってるよ!」
コイツの軽口が果てしない不安を煽る。
本当に分かっているんだろうか?
「それと草原にいるエルフにはくれぐれも気を付けろ。いいか、森と街中以外でエルフの女を見つけたらまず逃げるんだ」
「な、なんだよ。そんな怖い顔して……」
草原を活動範囲にしているエルフは恐ろしいのだ。
森の狩人+狩猟民族は最強に見える……というよりある意味で最強なのだ。
「ええっと後は……ああそうだ、向こうは所謂剣と魔法の世界でレベルスキル制だ。ゲーム好きなら違和感なく入り込めるだろ」
「まあ、分かり易くて良いな」
「それと、お前は常人よりレベルやスキルが上がり易くなっている。やり方はあとで教えるが、パーティーメンバーを組めばお前の恩恵を仲間にも与える事が出来るから、どんどん仲間は作っとけ」
「パーティー=ハーレムでもOK?」
「……まあ、いいんじゃないか?」
死にたければ。
「じゃあ……こちらからは以上だ。なんか質問は?」
「ねぇよ! よっしゃ~、ここからレイヤ様の伝説が始まるぜ!」
暢気なセリフを聞きながら、俺は転生の魔法陣を展開する。
魔法陣から光が溢れ、レイヤの身体がゆっくりと消えて行く。
「そっちと通信できるまでに5日ほど掛かるから、それまでに死ぬなよ?」
「ハッ、それまでに強くなってハーレム作っといてやんよ」
レイヤはそう言い残して消え去った。
この時点で俺は言い知れぬ不安感を拭いきれなかった。
そして3日後、その不安はズバリ的中し、奴と俺は同じ場所で再会するのだった。
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。