13話 勝手に改造!?
(´・ω・`)子供の頃、私は仮面ライダーよりウルトラマン派でした
メタルヒーローシリーズって今無いんですよね……
今日も今日とて自動車に導かれ、異世界への扉を叩く転生業務のお時間です。
トラックは一体どれだけの若者を異世界へ導くのでしょうね?
その場合、元の世界では運転手さんには自動車運転過失致死罪が適用されてしまうのでしょうか?
さて、本日は北郷隼人さん16歳、学生さんですね。
「初めまして北郷隼人さん、私は貴方がたで言う所の神様です。突然ですが、貴方は本日8時25分に自動車に轢かれ死亡しました」
「え、神様? っていうか、死亡って……俺死んだのか?」
どうやら混乱しているみたいですね。
まあ、いきなり貴方は死にましたなんて言われて、受け入れる人なんて滅多にいないでしょう。
という訳で、いつもの転生マニュアルを参照ですね。
「はい……本来、貴方は死ぬ予定ではなかったのですが、こちらのミスで貴方を死亡させてしまいました」
「えっと、それで俺はどうなるんでしょう?」
「はい、貴方には2つの道があります。一つはこのまま魂を真っ新にして新たな人生を歩む道、もう一つが今の状態のままで異世界へ行って頂くという道です」
「あー、良くある異世界転生って奴ですね」
流石、この世代の方は云々以下略ですね。
今回はすんなり終わりそうですね。
「ご説明させて頂くと、【ようは異世界に行けばチート能力付けて転生させるよ!的な説明】という風にさせて頂きます」
「えーっと、なんか今、色々と端折られましたよね?」
「何を言ってるんですか。ちゃんと説明はしましたよね?」
「はい、平和な日本人が急に異世界に行っても戦えるわけじゃないから、その救済措置で色々と凄い能力をくださるんですよね?」
「何だ、やっぱりちゃんと聞いてるじゃないですか」
全く、私が担当する人は大概変な事を言って来るんですよね!
赫々云々で済ませてもちゃんと伝わるんですから、問題ないじゃないですか。
「という訳で、何か能力に要望はありますか? 最強の戦士になって女の子にモテたいとか、最高の魔法使いになって異性を侍らせたいとか、究極の料理人になって至高と対決したいとか」
「最後のは意味が分かりません」
「大阪城を破壊してもいいんですよ?」
「怪獣殿下!?」
いえ、村田源二郎さんの方です。
あと、大阪城って何気に破壊されまくってるんですよね。
鰻が名前の暴竜とかニューギニア産の冷凍怪獣とか、東京だと東京タワーが標的にされ易いですよね。
「そんな事より能力ですよ、話を脇へ逸らさないでください」
「いや、逸らしたのは神様の方じゃ……」
これだから最近の若者は~なんて言われるんです。
まあ、そのフレーズ自体は紀元前のエジプトの石版にも書かれていたそうですから、いつの時代も新世代というのは理解され辛いんでしょうね。
「それで能力は何が欲しいですか?」
「い、いきなり言われてもなぁ……そうだ、他にもこういう事ってなかったんですか? いたらその人がどういう物を望んだのか参考までに聞きたいです」
なるほど、そう来ましたか。
確かに今までに、もう数えきれないほどの人数を異世界へ転生させましたし、その都度、チート能力を差し上げた方も8割はいるでしょう。
だが許さん。
「ほほう……それはつまり、私がしょっちゅうミスって人を殺してる可愛いドジッ娘だって言いたいんですね?」
「い、いえ……そういう訳では……」
「酷い! 私は可愛くないんですね!?」
「だから誰もそんな事言ってないでしょう!?」
まだ(外見が)十代の私になんて酷い事を言うんですか!
生まれて間もないので実年齢だって若いんですよ!
神様は生まれた時から容姿が変わらないので、見た目もへったくれもないですけどね!
「本当に思い付かないんですか? あるでしょ、その年齢なら。 押入れの奥に仕舞い込んだ段ボールに封印したブラックヒストリー的な願望が!」
「うぐっ、た、確かにありましたけど、そういう事は既に卒業しましたし、いきなり言われても……」
「いいじゃないですか! 見ただけで人を殺せる魔眼とか、武器を創造する能力とか、時を止めるとか、望んだ牌を手元に引き入れる能力とか!」
「最後はなんか違いませんか?」
何がですか。
チートには変わりないでしょうに。
麻雀じゃあ最強に成れるんですよ?
「俺、麻雀とか知らないですし」
「大丈夫です。勝手に役が揃って勝手に上がってくれる能力もありますよ」
「いやいや、そもそも異世界で麻雀に強くなってどうするんですか」
えー、脱衣とか?
今から行く異世界に麻雀なんてないんで広める所から始めないといけないですけどね!
しかし、なかなか決まりませんねぇ。
「そうだ、決まらないならこういうのは如何です?」
そう言って取り出したのは、一抱えほどの大きさのサイコロだった。
六面にはそれぞれ芸能神の加護、黄金王の加護、雷槌神の加護、太陽神の加護、大蛇神の加護、悪戯神の加護と書かれていて、それぞれが特徴的な能力を持っている出しい。
困った時にはこれを使いなさいって転生神に言われました!
「サイコロですか?」
「はい、なんか石鹸会社が提供のトーク番組みたいですね」
「これって、内容が良く分からないんですけど?」
「当たり前ですよ。内容が分かっちゃったら、それが出るように狙って投げるかも知れないじゃないですか」
そういうのに滅法強い人って、極稀に居るんですよね。
「いやでも、黄金王? これは金に関する能力だよね……芸能神は芸? 一芸に秀でるんだろうか……雷鎚神って意味が分からない。雷の槌? どんな能力だ?」
「はいはい、サイコロを睨んでないで早く投げてください」
なんか嫌な予感がするので、早く能力を決めて異世界に送っちゃいましょう。
音楽を掛けてそれっぽい雰囲気を演出します。
「何になるかな♪ 何になるかな♪」
「急かさないでくださいよ……」
彼が思いっきりサイコロを放り投げた。
サイコロはバウンドしながらコロコロと転がって行き……消えた。
「あれ!? サイコロが消えた? 何で!?」
こんなシステム知らないですよ!?
私は慌てて原因を調べますが……あ゛!?
「む、向こうの世界で生き返させかけている?」
「え? これってどうなっちゃうんですか?」
ガッテム!
まさかそっちがあるとは!
これじゃ私の業績にならないじゃないですか!(逆ギレ)
「……どうやら、元の世界で貴方が生き返ろうとしているようです。全く、こんなこと想定外ですよ」
「え? 俺って死んじゃったからここへ来たんじゃあ……」
「ええ、完全に死んでました。心臓も止まって本来なら荼毘に付す筈でした……ですが、そうはならなかったみたいですね」
生き返るなら仕方ありません。
今までの作業は全部パァですね……アハハハ……ハァ。
「それでは本当に異例ですけど、貴方は元の世界に蘇ります」
「そ、そうですか! 良かった……」
いや~、これは良かったんでしょうか?
「それでは、新たな人生を頑張ってください」
「はい! お世話になりました!」
そう言って、彼は元の世界に帰って行った。
そして彼は……彼を轢いた科学者によって全身を改造され、改造人間・仮面リッターとなって悪の組織とは戦わずに、平和な日常と戦う日々が始まったのだった。
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。