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11話 天災は忘れたい時ほどやってくる

(´・ω・`)日本の法律上、一般家庭で飼える最大の動物はキリンだそうです

相場は大体350万円~1300万円くらいだそうですが、私は動物園の檻の向こうからで十分です

出来る事とやれる事は意味が違いますよね……

中二(なかふ)緋陽(ひよう)……貴方は本日12時20分に交通事故に巻き込まれ死亡しました」


「し、死亡……?」


 まだ自分の現状が把握できない少年に語りかけた。

 ここで騒がれるのも面倒なのでとりあえず話し切ってしまおう。


「はい。しかし、貴方の魂にはあの世界では開花できない才能が眠っている事に気が付きました。そこでお願いがあります。現在、魔王が現われ危機に瀕している世界があるのですが、貴方にその世界を救って頂きたいのです」


 勿論、才能云々は嘘である。

 今回の世界神の要望が、容姿がそこそこ良くて頭が悪い子供なら何でも良いという事で、条件に合った方を偶々抽出しただけなんです。

 そんな事とは露知らず、興奮した様子で自分の手を見ながら「俺にそんな才能が……」とか呟いてます。


「それでチート能力は貰えるんだよね。そちらの都合で魔王を倒さなくちゃいけないんだから」


 まあ、そう言い出しますよね。

 向こうの異世界神も彼をゲームの駒にする気満々みたいですし、ちょっと意趣返しをしてやりましょうか。


「ええ、貴方の望む能力は何でも差し上げますよ」


「じゃあ、まずは最強の魔法の才能をくれ。魔力も無限にしてくれよ」


「分かりました。ただ無限というのは出来ないので、限界まで上げて差し上げましょう」


「じゃあ、あと武術の才能と時間を止める能力とベクトル操作、オンオフが自由にできる魔眼もくれ。気も使えるようにして、何でも入る異次元の倉庫も付けて。あと最強の武器とかも欲しい」


 詰め込んできましたね。

 まあ、最近の若者は強い能力だけ貰って無双したがるそうですね。

 きっと現代のストレス社会で色々と溜まっているんでしょう。


「構いませんよ。さらに成長限界を突破するスキルや見た物のステータスが分かるスキルも差し上げましょう」


「至れり尽くせりだな!」


 まあ、この辺は転生の基本スキルなのでどうって事ではありませんよ。

 ええ、何せこれは意趣返しですから、要望にはドンドン応えちゃいますよ。

 私の考えも知らずに、彼はどんどん思い付いた事を提案する。


「あとアレだな。奴隷ハーレムとか欲しいからそういう能力も付けて」


「ではモンスターテイムに人間も適用できるようにしたスキルを付けましょう」


 結構、流行っていますよね奴隷ハーレム。

 従順で主人公を絶対に裏切らず、主という立場から絶対優勢を保てるヒロインジャンルですもんね。

 異性と付き合った経験のない方には都合が良いのでしょう。


「あとクラフト系もいいなぁ。武器とか作りたい」


「いいですよ。ついでに欲しい知識はいつでも閲覧できるように、【知識閲覧(ライブラリー)】の魔法を固有魔法化してお渡ししましょう」


 たまに設計図も何もなしに、火薬に銃や日本刀とか作っている転生者がいますけど、技術系の勉強をしていた訳でもないのにどうやってそんな知識を持っていたんでしょうね?

 まあ、凄腕の技術者がいればニュアンスだけ伝えるだけで作ってしまう場合もありますけど。


「他にはありませんか?」


「う~ん……もう思い付かないかな」


「では、転生の準備をしますね」


 私は彼の要望通りのスキルに少し色を付けて(・・・・・)付加する。

 転生の為の魔法陣が彼の足もとに展開される。


「うはっ、リアル魔法陣キタコレ!」


「突然、人里に召喚すると混乱を招く恐れがあるので、少し離れた場所へ召喚します。道中は色々と(・・・)気を付けてくださいね」


 召喚で消えて行った彼を、私は計画が上手く行った笑みで見送った。

 人の命を弄ぶ様な神の計画など、壊れてしまえば良いのです。



 ――中二(なかふ)緋陽(ひよう)SIDE


 光が治まり目を開けると、丘の上だった。

 見下ろすと遠くの方には、城壁に囲まれた如何にもファンタジーに出てくる街が見える。

 神様からのプレゼントを確認する為、「ステータス」と唱えると目の前にゲームのメニュー画面のようなアイコンが出現した。

 そこに書かれた俺の能力値を見てニヤリと笑う。


「本当にチート能力が手に入ってる……よし、まずは街に行って冒険者になるぞ!」


 崖は結構な高さがあったので、ステータス上は大丈夫だろうが飛び下りるのはちょっと怖いので、どこか下りる所を探そうと振り返った瞬間、目の前に光る物が向けられた。


「よう兄ちゃん、こんな所に居ちゃあ危ないぜ?」


「そうそう、こわーい人に襲われちまうよ? 俺たちみたいなのによう! ギャハハハハ!」


 そこにいたのは些か汚れた装備の男たち4人組だった。

 風呂どころか体を綺麗にするのも億劫なのか、無精髭は生やし放題、そこかしこが泥で汚れていて気のせいかハエが(たか)っている気がする。

 俺はチート能力の丁度いい実験台が向こうからやってきた事にニヤリと笑った。


「その見た事もない服と、有り金全部置いて行きな。そうすりゃ殺さないで置いてやるよ」


 月並みなセリフを吐く盗賊のリーダーらしき男。

 俺は初級魔法でちょっと脅かしてやることにした。

 俺の手に魔力が集まり、光り出したのを見て盗賊たちが動揺し始めた。


「こ、こいつ魔法使いだったのか!」


「だが、この距離なら剣の方が有利だ! 全員でかかれ!」


「それはどうかな? くらえ、【ファイア】!」


 次の瞬間、俺の前に光の線が現われた。

 所謂ビームが俺の手から伸び、轟音と熱風を撒き散らしながら遠くに見えた山に当たった。


「ははは、何処を狙って……」


 俺が唖然とした顔を見て不思議に思ったのか、盗賊たちが背後を振り向くと、遠くに見えていた綺麗な三角形を描いていた山が、何故か台形になっていた。


「こ、コイツ……山を削りやがった! しかも、無詠唱でこんな超上級魔法を使った癖に汗一つ掻いてねぇ!」


 ごめんなさい。

 今のは最下級の【ファイア】なんです。

 消費MPなんて1しかなかったんです……もう回復しっちゃいましたけど。


「こ、殺される!」


「やべぇ! 逃げるぞ!!」


 盗賊たちが蜘蛛の子を散らしたように逃げて行った。

 すると、視界の端にメッセージアイコンが現われたので開いてみた。


― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

[スキルが使用されたので、情報を開示します]

魔法才能EX:最強の魔法の才能を保有

 一般人の保有量が樽なら、貴方はダムです。

 出力も保有量に比例します。

 回復量も1秒間に最大MPの30%程度回復します。バカじゃないの?

― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


「はぁ!?」


 表示されたおかしな文章に、慌ててメニューを開いて他のスキルも確認する。

 すると、出るわ出るわと明らかにさじ加減を間違えているチート能力の数々。

 アリを踏みつぶすのにミサイルを持ち出すような、頭に悪さに叫ばずにはいられなかった。


 その後も出来る範囲で検証しまくった。

 禍々しいオーラを放ち文字通り何でも斬れる神剣魔剣の数々、正しく自分以外(・・・・)を停止させてしまう時間停止スキル、気流や重力などの複雑な計算が要求されるのでベクトル操作は使えず、魔眼は使った瞬間に目と頭が潰れるかと思った。

 気は練り上げた瞬間にぶっ倒れた。

 どうやらHPを使用するらしく、レベル1の俺では体力が足りない。

 異次元の倉庫は神剣魔剣が理由で封印。


 モンスターテイムをその辺の虫で試した所、モンスターまでは問題なかった。

 そうモンスターまでは。

 ヘルプの説明によると、このスキルは知性を従順な動物(・・・・・)レベルにする(・・・・・・)スキルのようで、虫などの知性の劣るモンスターならば能力を底上げできるが、人間などの知性が高い相手に使用した場合は獣レベルにまで下がってしまうのだ。

 しかも、1度使用すれば危険防止のためにテイムした相手と同レベルになるまで解除できない。


「確かにチートは望んだけど、こんな核爆弾のスイッチたちは望んでねぇ!」


 これが後に剣を振るえば海が割れ、魔法を唱えれば山が消えると言われ、『最悪の天災』『特級EX指定危険生物』『来るな、寄るな、近づくな』『暴れ竜より迷惑な男』などの二つ名で呼ばれる俺の冒険の第一歩だった。

最後まで読んで頂きまして、ありがとうございます

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