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9話 つよくてNew転生

 今日の転生業務はある意味とっても楽で、ある意味とっても気まずいです。

 本日の業務は、良くある魔王が発生したので勇者を派遣して欲しいとの事です。

 ただ、結構ややっこしい事態になっているようで、例えるなら前門の魔王軍、後門の人間連合って所でしょうか。

 権力っていつの時代も人を狂わせるんですね。


 そんな訳で、そんな状態の所へ勇者なんて送れば、どんな扱いになるかなんて目に見えています。

 そこで緊急処置として取られている手段が……


「またですか」


「はい、またなんです……」


 本日の転生者は異世界からお越しの納戸茂(なんども)英雄(ひでお)さんです。

 はい、皆さまもお気づきかも知れませんが、彼はこれが5回目の異世界転生になります。


「まあ、寿命で死んだ後に連れて来られるだけ良心的……なんですかね?」


「基本的にはお題をクリアされた方には願いを一つ聞くというスタンスを取らせて頂いているので、魔王を倒せばすぐ終わりって言うのはあまりないですよ」


 ただ世界にもキャパシティがあるので、勇者を維持できるほどの余裕が無い場合は強制退場も止むを得ないんですけどね。

 でも、たまにそういう事をされる方って意地で異世界に渡っちゃったりするんですよね。

 ロマンチックだとは思いますが、そうされる度に見て見ぬ振りをしなくちゃいけないので大変です。


「今回のクリア特典は何をご要望ですか? 前回は安全な家が欲しいとの事でしたので、持ち歩きできるセーフティハウスを差し上げましたが」


「ああ、アレは良かったよ。野宿する時とか、国に追われてる時なんかは所有者以外は見つからないし入れないから隠れるのに最適だったよ」


「それはよかったです。それで何かお望みな物はありませんか?」


「う~ん……強いて言うなら足が欲しいかな。ほら、異世界って基本的に馬かモンスターに騎乗するだろ? でも生き物だから、世話は必要だし途中で置いて行く訳にも行かない。アイテムボックスには生き物は入れられないから連れてもいけないしね」


 なるほど、森や悪路などの馬では侵入できない地形になると、どうしても置いて行かざるをえなくなりますしね。

 無機物ならアイテムボックスで持ち運べますし。


「では自動二輪車のような物で構いませんか?」


「いいよ。あと出来れば魔力で動くようにして欲しいね。ガソリンなんか手に入るか分からないし」


 では魔力を動力にしたオートバイクにしましょう。

 基本破壊不可にして、ダメージ回復機能と障壁展開機能も付けましょう。

 素材は異世界製の物を、ボディは神鉄でタイヤはドラゴンの皮を使いましょうか。

 ぶっちゃけ神様でも持ってませんよこんな頭悪いアイテム。


「分かりました。では魔導バイクを前回のクリア報酬として差し上げます。続いて今回の転生内容ですが、前回に引き続き全ステータスの弱体化及び、大半のスキルを封印。弱体化は一定のレベルに達した時点で解除、スキルについては再度取得するか弱体化が解除された時点で解放されます」


「うん、その辺はいつもと一緒だな」


「それではステータスをご確認ください。ユニークスキルに追加いたします」


 現在、彼には5つのユニークスキルが付いています。

 1つは先ほど追加したばかりの『魔導バイク召喚』です。

 これはバイクが置ける空間ある所でのみ、“頭の悪い”使用の魔導バイクを召喚できるスキルですね。

 何せ整備不要、動力は魔力なので補給の心配が殆どなし、本人以外動かせないので盗難の心配もありませんし、素材が超上級素材ばかりなので破損の心配も滅多にありません。


 2つ目は最初のクリア報酬で得た『愛の絆』です。

 これは愛した人と共に有りたいというご要望で、転生後に出会った伴侶を精霊化して、現在の自分の年齢の頃の姿で召喚できるというスキルです。

 正直言ってチート過ぎるスキルですよ。

 何せ彼は1回の転生で平均7人は嫁を貰っていますから、序盤では召喚するMPの関係上、多用できないのが幸いですが、後半になると前世の知識や戦力使い放題ですからね。


3つ目は、その次の時に得た『持越しバッグ』です。

 これは前世に入れて置いた物を次に転生を行った際に持ち越せる旅行鞄です。

 と言っても、持ち越せるのと破壊不可である事を除けば普通の旅行鞄なので、使い道は殆どないと言っても良いものですけどね。


4つ目は、前世で困ったという事で『セーフティハウス』です。

 魔王を倒す途中で良く国に喧嘩を売って隠れる場所が欲しいとの事でしたので、所有者とその仲間の方以外は決して見つけられず入れない隠れ家をアイテムです。

 見た目は小さなカプセルですが、空き地に向かってぽいっと投げ込むと家が出現する仕掛けになっています。


5つ目の物は転生時の調整という事で『弱体化』というスキルが付いています。

 これは別世界で学んだ魔法やスキルがそのまま流用できるとは限らないので、勇者をその世界に慣れさせる為の応急処置です。

 勿論、一定の強さに達すると解除される仕組みになっています。

 ぶっちゃけて言えば、物語を盛り上げる為の演出道具ですね。


 以上のユニークスキルに加えて、通常の異世界セットを付けて転生を行います。

 ちなみに、彼は普通にクリア報酬の条件をクリアしていますけど、これって毎回魔王を倒す+魔王の被害を復興+αの貢献が必要で、結構難しい筈なんですけど……


「そういう意味では根っからの英雄体質なんでしょうか?」


「いやー、あははは……」


 私の言葉に照れ笑いしながら頬を掻いています。

 チッ、ちょっと前まで冴えないオタクだったのが、こんな爽やかイケメンオーラ出しやがって……いえ、失礼。


 英雄は人に倒される物で、真の英雄は布団の上で穏やかに死ぬ物だって何かで読んだ気がします。

 彼の場合、何かあると勝手に動いてキッチリ成果を出すから、味方でも敵でも性質悪いですね。

 まあ、その所為で国に追われる羽目になった場面も多々あるんですけどね。


「別に特別な事をしたつもりはないよ。というか、俺ってバカだから難しい事は全部嫁さん任せにしてるだけだよ」


「その嫁の所為で国に喧嘩売ったり、怪しげな組織を壊滅させたり、伝説の怪物と対決したりしたんじゃないんですか?」


 また彼はそういうタイプの異性を引き付ける隠しスキルでも持っているのか。

 転生する度に厄介事を抱え込んでいる女性と出会い、その人の為に奔走して、破ってきた訳ですよ。

 まあ、見ている方は冒険活劇みたいで面白かったですけどね。

 特に処刑されかけて振り下される斧を粉砕して颯爽と現れたシーンや、儀式の所為で心を奪われた少女に必死に呼びかけて取り戻すシーンは手に汗握りましたね。


「止めて……あの時は夢中だったから気にならなかったけど、思い出すと今でも恥ずかしいんだ……」


「恥ずかしがらなくてもいいんですよ? ほら、政略結婚させられそうだったお姫様の式場に乗り込んで、大勢が見ている前で熱烈な告白してたじゃないですか」


「こ、後悔していない事と恥ずかしいと思う事は別問題なんだよっ!」


 安心しなさい。

 普段の貴方も傍から見れば結構恥ずかしい事言ってますよ。

 自覚が無いって恐ろしいですね。


「私的に一番好きなシーンは、最初に仲間になった獣人の冒険者の方に告白シーンですね。あの初々しくしどろもどろになりながら『君が傍に居てくれないとダメなんだ!』って言った時は、まさに青春って感じでしたよね」


「待って! 何でそんな事まで知ってるんだ!?」


 そりゃあ、見ていたからに決まっているじゃないですか。

 基本的に転生神は送り出すだけですけど、ここって娯楽が少ないですからエンターテイメントとして、有望な方の情報は逐一入ってくるようになっているんですよ? 具体的に言えばテレビに映ってる感じで。

 私が色々な意味を込めてニコリと笑うと物凄く微妙な顔をされました。


「神は何時でも貴方を見守っていますよ」


「そういうのは出歯亀って言いませんか?」


 知らんなぁ。

 ちなみに出歯亀の語源は出っ歯の亀太郎が由来らしいですね。


「っと、無駄話もコレくらいにして転送を始めますね」


「うん、率先して逸らしてたのは神様の方じゃあ……」


「例によって貴方が行く先々には危険が待っています。生きるか死ぬか、貴方を守るのは貴方自身です。成功を祈ります」


「強引に話を持ってきましたね。いえ、行きますけど」


 彼の足元に転送の魔法陣が展開し、魔力の光に包まれる。

 転送される直前、彼に伝え忘れた重要な事を思い出した。


「そうだ、今回結婚するのは7人までにしてくださいね。私、35人に来月の給料を掛けてるんで」


「人の結婚で賭け事をしないで!?」


 これで臨時ボーナスは貰ったも同然ですね。

 ちなみに結果は……ええ、まさか魔王の部下まで嫁にするとは、この転生神の目を持ってしても見抜けませんでしたよ。 ちくせう。


最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。


4/25 誤字を修正しました

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