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8話 病名:主に思春期に入り周囲の環境の大きな変動に伴い、価値観や思想の変化に対してアイデンティティの確立または主張を行う為に、自己を特別視または非日常的な事を望み、自らを少数派へ属したがる行動

※今回の話には難解な文章が多用されています

読み辛い言い回しや分かり辛い表現は仕様ですのでご了承ください

あと、彼は一般人です

 第三千百四十一世界階層、五百九十二時空海域、第六十五管理世界『リュウツェシン』。

 彼の虚無より生まれし破滅の魔王は、世界にその牙を突き立て平穏を打ち砕かんとしている。

 (ゆえ)に我は(いにしえ)因果(いんが)に従い、破滅を滅ぼす剣を選定する。


「覚醒の時だ。神に弓引く天使(ルシフェル)末裔(まつえい)、光と闇を超越(ちょうえつ)聖邪(せいじゃ)を兼ね備えた万象(ばんしょう)に愛されし英雄、混沌の力を司り救世を担いし原初の勇者よ」


「いや……あの、オレ普通の会社員なんっすけど」


「ふふ、分かっているよ全能なる混沌(マスターカオス)。全てを見通す我が右眼、万象貫く魔眼トゥルース・オーディンで全てお見通しだ」


増田(ますだ)(かおる)です。初めてそんな呼ばれ方しましたよ。あと見通すって2回言いましたね」


「おお、まだ我が名乗っていなかったな。我は悠久(ゆうきゅう)の時と無限の空間の狭間(はざま)揺蕩(たゆた)一片(ひとひら)の蝶。または叡智の大河(アカシックレコード)に彷徨う魂を覗く観測者(カウンター)也」


「ええっと……?」


 フッ、どうやら勇者はまだ覚醒していないようだな。

 だが、奴も能力(チカラ)に目覚め全能なる混沌(マスターカオス)の記憶と同期すれば己の使命を思い出すだろう。


「さぁ、今こそ偽りの姿を破り捨て、己が真の姿を思い出せ。そして破滅の魔王を倒す旅に出るのだ」


「無理だよ、オレ今年でアラサーなんだぜ? そんなゴッコ遊びなんてできないよ」


「ふっ、これは稚拙な遊戯(ゲーム)ではない。神魔が対立した神代の時代より続く聖戦(ジハード)。世界という箱庭を舞台とした神と魔の戦いの神話(マイソロジー)だ」


「さっぱりわからん。というか、ここどこ? オレはどうしてこんな所にいるんだ?」


 なるほど、どうやらコヤツは己の運命に目覚めぬまま、この場所へ流れ着いてしまった訳か。

 ならば未だに能力(チカラ)に目覚めていないのも頷ける。

 よし、ここは我が語ってやろう。


「思い出すがいい混沌を司る勇者よ。(なんじ)は偽りの姿として、愚かなる人間共が作り出した有象無象を閉じ込める牢獄の、哀れなる歯車の一つを演じていた頃を」


「うん、普通に会社員だったけど……あれ? 確か会社に泊まり込んで仕事やってて、ちょっと休憩に仮眠を……」


「うむ、幾ら混沌を司る英雄であっても、その器がただの人間では英雄の魂の容量に耐えきれなかったようだな。体が休息と共にその(ともしび)も消えて行った」


「えーっと、つまり? オレは過労が原因で死んだって事?」


「うむ、全く人の身は(もろ)くて適わんな。再び月が満ちるまで動いただけで壊れてしまうとは。やはり真の姿を取り戻し、英雄として覚醒せねばならん」


「え、待って、つまりここは死後の世界ってわけ? アンタは何者!?」


「先に言ったであろう? 我は我は悠久(ゆうきゅう)の時と無限の空間の狭間(はざま)を生きる傍観者。人は我を神と呼ぶ」


「か、神様だったのか……」


 何をいまさらな事を……

 そうか、今のこやつは人の身に引きずられて、真実を見抜く力を封じられているのか。

 今まで凡人として生きていたのではそれも仕方あるまい、だがここへ来たからには真の能力(チカラ)に目覚めて貰わねばならん。


「混沌を司る勇者、またの名を全能なる混沌(マスターカオス)よ。これより汝は真なる姿を取り戻し、破滅の魔王を討伐する為の旅に出るのだ。そして各地に散らばりし聖痕(セイヴァークロス)を持つ6人の守護者(ガーディアン)の転生体を集め、世界を救うのだ!」


「待った待った待った! 全然話が見えない! 専門用語詰め過ぎ! そういうのって読者に分かりやすいように簡素で簡潔に分かり易くしてくれ!」


「む……真言では覚醒もしていない汝には難しすぎたか」


 なるほど、魂の階層が神創級(ジェネシス)に達していない故に真言が理解できないか。

 せめて伝説級(レジェンド)に達していれば、我が語る真実の破片を拾う事も出来たであろうに。


「仕方あるまい。時間が惜しいので簡潔に言えば、先に起こった神魔による大戦にて封ぜられた破滅の魔王が、時を経て蘇ってしまったのだ。故に汝には再び勇者として、魔王を倒して欲しいのだ」


「よしよし、大分わかり易く……なってない!? 神魔に大戦? 魔王が復活? あー、つまりあれか。ゲームか漫画の話みたいに、アンタは神様で魔王が復活したからオレは勇者になって戦えって事か?」


「ふん、わかっているではないか」


 たったあれだけの情報で、我が真言を理解するとは流石は混沌を制す勇者だ。

 人の身に堕ちても、その魂に刻まれた記憶を覆い隠す事は出来んのだな。


ピロリン♪[かみさまからのこうかんどが あがった!]


「あれ!? なんか変なメッセージまで出てきた!?」


「ふっ、やはり汝は覚えていなくともその魂は間違いなく全能なる混沌(マスターカオス)と呼ばれた英雄の物。腦にその記憶がなくとも魂に刻まれた記録(メモリー)は分かっているようだな」


「いやいや、そんなの無いです」


「しかし、一時とはいえ人の身であった事は問題だ。急激な覚醒は破滅を(もたら)す。故にリミッターを付け少しずつ肉体を慣れさせる事にしよう」


「ええっと、つまり強くなる為に色々やるけど、慣れる為に少しずつやりましょうって事か?」


 成長の限界を超える力(オーバーリミット)世界の言語を紐解く力(バベルワード)異次元の宝物庫(アイテムボックス)、そして物の真実を見抜く魔眼(ステータス・アイ)を与えよう。

 始めから伝説級(レジェンド)武具(アーティファクト)を持っていても成長の妨げになるだろうから、装備は一般の冒険者の物で良かろう。

 最後に万人に好かれる能力(スキル)を付けて終わりだな。


「待たせたな勇者よ。これより異世界へと汝を送り出そう」


「あーうん、もうオレに拒否権とかないんだね」


「分かっている皆まで言うな。これより始まる己の伝説に打ち震えているのだろう? 我も伝説の始まりに立ち会えるとは、言葉では言い尽くせぬ感動があるな」


「もうそれでいいよ」


 展開した魔法陣より漏れ出た魔導の光が勇者を包み込み、勇者の身体が徐々に希薄になって行く。

 気負いしていない、堂々とした出で立ちは王者の気風すら漂うな。

 勇者の旅立ちには実に良い日だ。

 実に頼もしい限りだが、張り切り過ぎないか心配であるな。

 あまり張り切られては、話が膨らまず読者に飽きられてしまうからな。


「勇者よ、くれぐれもやり過ぎてくれるなよ?」


「オレはお前の根拠のない自信が良く分からないよ。まあ、第二の人生だと思ってボチボチやるわ」


 転送が終わり、魔法陣と共に勇者は消えた。

 静かになった神の間で、我はここから始まる彼の英雄譚を残す為に神代の秘文書(ブラック・ノート)を開いた。

最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。


ちなみにタイトルの内容は作者の実体験と周囲を観察した感想なので、

確実にこうだと断定する物ではありません。

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