幕間
『じゅうごのせいじんのぎをむかえたら、かならずむかえにきます』
俺は、約束をした。
必ず彼女を迎えにいくと。
あの頃の日々の記憶は、五年近くたった今でも、ひとつひとつがとても鮮やかだ。
あの日々は、彼女と過ごしたかけがえのない大切な思い出。
辛いとき、逆境にあるときに思い出せば、いつだって前を向いて進んでいく力になってくれた。
彼女と別れたあの日、本音をいってしまえば、俺は彼女を拐ってしまいたかった。
けれども、その気持ちをこらえて、また会うための別れだといえば、病床の彼女は、はにかむように笑ってくれた。眠りについてしまうまえに、かすかに微笑んでくれたのだ。
その微笑みが、俺の背中を後押しした。
―――彼女を迎えにいく。
その目標が、俺の五年間の主な原動力となった。
だというのに。
今になって、約束の日まであと少しだというのに。
今まででも一番最悪だといわれることが生じた。
しかし、俺は負けない。負けて、たまるものか。
俺に初めて笑いかけ、俺の立場ではなく、俺という個人を真っ正面から見てくれた彼女。何よりも、俺そのものを求めてくれた彼女。
もし彼女と出会っていなかったら。俺は上層部や周囲からの“いうとおり”にただ動くだけの人形となっていたはずだ。だから、彼女は俺にとって何にも代えがたい存在だ。彼女の代わりなど、けして存在はしないといいきれる。
だからこそ。
彼女ともう一度会うためならば、俺は四肢のひとつを失っても構わない。彼女ともう一度会えないことは、俺にとっては死と同意なのだから。
「―――かかってこい!!」
―――俺の邪魔をするやつは、赦しはしない。