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始まりは猫でした。
猫を助けた。
それも自分の命と引き換えに、だ。
いや、この際そんなことはどうでもいい。
助けた猫が黒と金のストライプとか云う訳の分からん色をしてることも、突っ込んでくるトラックが黒と金のストライプとか云う訳の分からん色をしてることも、どうでもいい。
トラックにぶつかる直前、助けた猫をチラッと見ると、それはもう厭らしい笑顔でこっちを見ていた。
動物に表情があるのか、という話になるが、俺は断言しよう。
動物に人間程の表情はない。
別に何も可笑しなことではない。
普通に考えてみて欲しい。
地球上の動物で、ある程度の感情を何かしらの方法で表現できる動物は存在するけど、あそこまで明確に笑う猫が存在する訳がない。
そうなんだよ。
そんな猫は居るはずがないんだよ。
つまり、あれは普通の猫なんかじゃない。
まあ、黒と金のストライプの時点で普通なんかじゃないんだけど。
ストライプってなんだよ、せめてボーダーだろ。
―だけど、もうそんな思考は意味がない。
なぜなら、次の瞬間にはトラックと衝突していて、俺の意識は暗転したから。