愛しい人の腕に抱かれて
処女作です。誤字脱字など指摘していただけると嬉しいです。
クルカの街には今日も奇麗な青空が広がっていた。
「う~ん、今日もいい天気。ねえ、ルーク。お腹すかない?」
そう言って、隣を歩く愛しい人に尋ねる。
「そうだね、可愛いリディア。何か食べよう。」
「可愛いだなんて、もうっ、そう簡単に言わないでよ。」
真っ赤になりながら彼を見上げる。ああ、なんて素敵なんだろう。サラサラとした髪は奇麗な金色で、こちらを見つめる穏やかな瞳は空のようなきれいな青。まるでおとぎ話に出てくるような王子様だ。そんな素晴らしい人が私のの恋人だなんて、今でも信じられない。でも彼はいつも一緒にいてくれる。そう、永遠に。絶対居なくなったりしない。大丈夫。・・・・・ホントウニダイジョウブ?
「どうしたんだい、リディア?大丈夫かい?」
「ねえ、ルークは居なくならないよね?ずっとそばにいてくれるよね?」
「ああ、大丈夫だよ。永遠にそばにいるよ。君が望む限り。」
絶対大丈夫だ。彼が約束を破るはずがない。
「リディア、そこの店に入ろうか。いいにおいがするよ。」
彼が指さす店に入る。たしかにいいにおいがする。当たり前だ。彼が嘘をつくはずがない。二人でカウンターに座り、一緒にメニューを見た。
「私は、本日のランチにしようかな。ルークはどうする?」
「僕もそうするよ。可愛いリディア。」
穏やかにほほ笑む彼を見ていたら、周りからの視線が気になった。いくら彼が素敵だからといってじろじろ見すぎだ。子供じみた嫉妬心がわきあがる。
「可愛いリディア。君は僕だけを見ていればいいんだよ。愛しい人、大丈夫だから。」
ああ、なんて彼は素晴らしいんだろう。彼だけを見つめていたら、本当に周りの視線が消えた。
「僕もお腹がすいてきたよ。早く食べようか。」
そう言われるまで何のためにここにいるかを忘れてた。いけない、早く注文しなきゃ。
「すいません、本日のランチを二つください。」
お店の人にそういうと、かなり驚いた顔をされた。
「お二つでよろしいんですか?」
その言葉にムッとして答える。
「ちゃんと一人前くらい食べられます。大丈夫です。」
お店の人は何とも言えない顔をして、わかりました、と厨房に戻って行った。いくら貧相に見えるからって、そんなこと言わなくてもいいじゃない。どうしよう、私は彼に相応しくないくらい貧相な小娘なんだろうか。
「可愛いリディア。君は世界で一番可愛い女の子さ。なにも心配することはないよ。」
そう、大丈夫。なにも心配しなくていい。だって彼はけして嘘を言わないから。
料理はおいしかった。彼は私と同じように食べながら料理をほめていた。私も相づちを打つ。
「おいしかったね。」
「うん、とても。今日は僕がおごるよ。」
「駄目よ、今日は私が払うわ。大丈夫、お金ならちゃんとあるから。」
彼と話していたら、会計の女性がいぶかしげにこちらを見ていた。私が彼と恋人同士なのがおかしいのだろうか。こういった反応を示す女性は少なくなかった。イラついて、お金をたたきつけるように払うと店を出る。
「可愛いリディア。ああいう態度はよくないよ。」
彼は素晴らしい人だ。さっきの私の態度に愛想を尽かしてないだろうか。
「何を考えているのか、顔に書いてあるよ。愛しい人。大丈夫だよ。」
大丈夫、大丈夫。彼が言うのだから間違いはない。彼を見つめていたら、近くで声がした。
「お嬢さん、大丈夫かい?さっきから一人で何を言っているんだい?」
お爺さんがこっちを向いて話しかけている。誰に行っているのだろう?ああ、私の後ろに立っている少女に向けてか。少し驚いたけど私には関係ない。
「ねえ、帰ろう?ルーク。私、疲れちゃった。」
「そうだね、帰ろうか。」
ルークの手を取り歩きだすと、お爺さんがギョッとした顔でこっちを向く。多分彼の声に驚いたのだろう。そのままどこかへ行ってしまった。お爺さんを気にすることなく家に向かって歩いていると。今度は街の警備兵がこちらに向かって話しかけてきた。後ろには、先ほどのお爺さんがいる。
「お嬢さん、ちょっと、一緒に来てくれるかい?」
警備兵に呼び止められるようなことをしたのだろうか。少し不安になると彼は、
「大丈夫、僕がそばにいるよ。」
と言ってくれた。彼がいてくれる。安心して私は言った。
「ルークが一緒ならいいですよ。」
当たり前だ。彼が一緒じゃないなど考えられない。しかしそういうと警備兵は難しい顔をして後ろのお爺さんを見た。お爺さんも難しい顔をしてうなずくと、警備兵は私に向かって言った。
「気がくるっているのか、幻を見ているようだな。とりあえず、連れて行こう。」
・・・キガクルッテイル?・・・マボロシヲミテル?ナニヲイッテルノ・・・・・・コワイ
すると急に警備兵は、私を担ぎあげ歩きだした。
「助けて!ルーク!」
しかし、すぐに助けてくれるはずの彼は動かない。ただそこに立っているだけ。違う、動かないんじゃなくて動けないんだ。他に警備兵が彼を足止めしている。ほら彼をつかんでいるのが見えた。
「大丈夫、必ず迎えに行くから。」
彼がそう叫んでいるのが聞こえた。きっと大丈夫。彼はうそをつかない。
私はそのまま白い部屋に入れられた。ベッドもあるし、食事も出る。犯罪者として連れてこられたわけではないようで安心した。しかし、ルークはどうなのだろうか。警備兵に逆らったりして捕まってないだろうか。食事を運んできた人に聞いたら、ルークという人間が捕まったという報告はないそうだ。よかった。きっとそのうち迎えに来てくれる。
彼のことを考えながらぼうっとしていたら、優しそうな印象のおじさんが入ってきた。何しに来たんだろうか。
「君の名前はルディア・ステリオ、16歳でいいかい?」
自分の名前にうなずいた。いつ調べたんだろう。
「君のご両親から捜索願いが出ている。連絡を出したから3日後には迎えに来るだろう。一人でここまで来るのは相当危なかっただろうに、よく無事だった」
両親が迎えに来る?おかしい、ちゃんとルークと一緒に行くって言ったのに。それに一人でここまで来たんじゃない、ちゃんとルークと一緒に来たのに。
「ルディア、確かにつらいことかもしれないが現実を見なさい。ルークはもういないんだ。わかっているだろう?」
ルークがいない?何を言っているのだろう、この人は。笑い飛ばしてやろうとしたが体が動かい。・・・ルークガイナイ・・・モドッテコナイ・・・・
なぜか涙が出てきた。泣くことなどないはずなのに。
「それでいいんだ、リディア。ゆっくり休みなさい。」
その声に身を委ねるように眠りに落ちた。
悪夢を見た。
落ちてきそうなほど暗い曇りの空、どこからか血のにおいがした。
「イヤ、嘘でしょう。ねえルーク、ルークってば。どうして、目を開けてよ。ルーク。」
悲痛な声で叫んでいる少女が見える。少女はもう動かない愛しい人を抱きしめて泣き叫んでいるようだ。
「ルーク、どうして?ずっと一緒にいてくれるって言ったじゃない。帰ってくるって言ったじゃない。どうして・・・」
いくら、少女が泣き叫んでも現実は変わらないのに、少女は叫び続けている。
「・・ィア、落ち着きなさい。こんなところにいたら風邪を引いてしまう。」
「イヤ!ルークと一緒にいるの!」
「リディア!」
泣き叫んでいた少女が振り向いた。こちらを向くその顔は・・・・ワ・・・・タ・・・・・シ?
「イヤ!」
自分の叫ぶ声で目が覚めた。イヤな夢を見た気がする。たしか夢では・・・・
「イヤ、思い出したくない。きっと大丈夫。ルークは迎えに来てくれる。」
そう、きっと大丈夫。だって彼が嘘をつくはずがないもの。彼は私を迎えに来て言うのだ、「可愛いリディア、もう大丈夫。僕がそばにいる。君を一人にしないから。」と。
すでに陽は高くまで昇っていた。彼のことを考えていたら急にドアが開いた。彼が迎えに来てくれたのかと思い振り向くと、そこには久しぶりに見る両親の顔があった。二人とも今にも泣き出しそうな不思議な表情をしている。そうか、心配してくれたんだ。たしかに相手が彼とはいえ、娘を男と二人で旅に出すのは心配だったに違いない。
「お父さん、お母さん、久しぶり。でも、そんなに心配しなくてもよかったのに。ルークが一緒なんだよ。危ないわけがにじゃない。」
私がそう言うとお母さんは泣きだしてしまった。あれ、なんでだろう?
「リディア、君には休息が必要なようだ。ゆっくり眠りなさい。」
イヤだ、眠りたくない。そう叫ぶ間もないうちに、薬を嗅がされた。夢も見ない深い眠りにおとされていく。
遠くから声が聞こえる。
「先生、娘は大丈夫なんでしょうか。」
父の悲痛な声が聞こえる。
「あまりの精神的なショックに幻覚を見ているのでしょう。ゆっくり治療を続けてけばきっと大丈夫です。よくなりますよ。」
「そうですか。娘をよろしくお願いします。」
だんだんと声が遠くなっていく・・・・・
朝はすっきりと目が覚めた。とてもいい天気だ。ルークの目の様な快晴。ルークが迎えに来てくれる気がした。
・・・・・・君には休息が必要だ・・・・・・イヤだ・・・・娘は大丈夫なんでしょうか・・・・・イヤだ・・・・・精神的ショックで幻覚を・・・イヤだイヤだイヤ・・・・
「イヤ、嘘でしょう。ねえルーク、ルークってば。どうして、目を開けてよ。ルーク。」叫ぶワ・・・タ・・・シ
イヤだ、助けてルーク!!
「大丈夫だよ、可愛いリディア。ごめんね遅くなってしまって。迎えに来たよ。」
目の前には愛しい人が手を広げて待っている。ああ、やっぱりルークが嘘をつくわけがないじゃない。ほら、ちゃんと迎えに来てくれた。
「ルーク・・・ねえ、ずっと一緒にいてくれるよね?」
「もちろんだよ、愛しい人。永遠に君のそばにいるよ。」
飛び込んだ愛しい人の胸はとても温かく、そして冷たかった。
今にも泣き出しそうな曇天の日、クルカの街の病院の一室で一人の少女が死んでいた。彼女はまるで何かを抱きしめたかのように腕を広げ、とても幸せな表情で死んでいたという。




