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世界シリーズ番外編

大男が降りた後の世界状態

作者: 448 23

 とくに警戒すべき点はないはず。

「お前、嬢ちゃんじゃないか」

「……誰でしたっけ?」

 断崖絶壁、つまりは崖っぷちに俺たちはいた。なぜこんな場所にいるのか。それは、あの坊主が消えてから1年経ったからという理由が大きいが、それはあまり関係無いのかもしれない。

 今まで世話になった仕事にキリをつけてから、俺はこの崖の近くの村に住み始めた。その村のやつらはとても楽観的なマイペース軍団だったため、俺の事情をすっ飛ばして仲良くしてくれた。何も聞いてこないのはよかった。まぁ、聞いてきても困ることは特にないのだが。それでも、過去を現すというのは少しだけ恥ずかしい。

「ははっ、嘘ですよ、ジェガスさん。ちょっとした悪戯ってやつです」

「ああ、そうかい。まあ、気にしてないがな」

「あれ、それは残念」

 どうでもいいことばかりぽつぽつと話して、なぜここにいるのかと聞いてみる。聞かなくても答えは分かる。こいつと坊主は、家族同然なんだから。

「へえ、意地悪ですね。キルのことを忘れたとでも?」

「んなわけねえだろ。ちょっとした悪戯ってやつだ」

 そう言うと、彼女はむすっとして、海を見つめる。1年前まで赤かった海だった。この海のど真ん中に生命の柱はある。危機に晒された晴天の柱を助けるために、生命の柱が放出した魔力は海に吸い取られていた。そして、青くきれいな海は、血のように赤い海へ。

 レスは持ってきていた花を海に投げた。青い花は海と同化していく。

「キルが言ってたよ」

「あ? キルが?」

「うん。×××、×××××××。だって」

「……へえ」




 これは、大男の物語。意味をなくしたことはどうでもいい。生きることに意味がある。


 キルからの言葉を聴いて、目尻が熱くなる。

 少女が去った後、花を飲み込んだ海を見つめる。

 いつか、飛び込もう。

 この海は、坊主のように心を包んでくれるだろうから。

 精一杯、生きるから。

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