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プロローグⅦ

「はぁ、天野さんにはほんと敵わないよ」


「恐縮です」


 といった具合に俺は白旗を上げて降伏宣言。まいったなぁ、最後ぐらいこっちのペースにして天野さんに勝つつもりだったんだけど、この人は素でスペックが高すぎる。

 

「ふぅ……じゃあ、これ」


「? なんですか?」


一息付けてから俺は何枚かの封筒を天野さんに手渡した。それを手に取り天野さんは小首を傾げた。


「君たちの退職金。少ないけどね」


 俺的には家臣達ではなくて召使い達に多く支払いたかったけど、現実そういうわけにはいかない。彼女達の面倒を見てくれるために家臣たちにはそれなりの事をしないといけないし。まぁ大人の事情と言うやつだ。


「よろしいのですか? このお金、颯大様の手取り分から出されたお金でしょう?」


「……」


 流石は天野さん伊達に俺オンリーで心を読めると豪語することはある。でも、ここは主として自分の我を通させてもらう。


「ちがうよ? ちゃんと家財を売ったお金から君たち様に置いといたお金」


「……」


 おっ、天野さんのあの目、超疑ってるな。まぁ家臣に払える給料がないから滅んだ様なもんなのに召使いに退職金を払うってなかなか矛盾してるしな。でも、こうでもしないと今までお世話になった召使いさん達に申し訳ないし。問題は頑固な天野さんが素直に受け取ってくれるか、だけど


「無理はしていませんか? このお金を払うことによって颯大様のこれからの生活に影響は出ませんか?」


 案の定、天野さんは食いかかってきた。鋭い質問だ。正直言えば、かなりキツイ。天野さんは自分の今後の生活の心配ではなく。俺の心配をしてくれてる。その純粋な誠意を裏切るのは心苦しいが俺にも魔王としてではなく男としてのプライドがある。


 だから、俺は嘘をついた。


「大丈夫大丈夫。俺はさ、これでも衛藤家最後の魔王だよ? こういう事態を見越してたから、しばらくは生きていけるぐらいの貯蓄は貯めてある」


 そう、貯蓄は確かにあった。でも、そのほとんどは、天野さんの言うとおり、召使いさん達の退職金に当てている。当然、、資産が多少余ればそちらを当てるつもりだったけど、そう上手くもいかなかった。となれば、俺の懐から出すのが筋だろう。召使いさんの中には子供も入れば、家族を養っている人達もいる。それに比べて俺は一人だし、まだ若いからこれからの生活は何とかなる。

 そもそも、俺自身を天秤にかける事は無い。俺は後回しだ。こうなった原因は衛藤家にあるのだから。


「……颯大様は優し過ぎます」


「ん? 何か言った?」


「……いえ」


 天野さんが何か言った気がした。でも、それは天野さんにしては珍しく小さな声だったので聞こえなかったけど、本人が言ってないと言うんだからまぁ、大したことではないんだと思う。


しばし沈黙が続き、天野さんは、はぁとため息をついた。俺が折れないと見て諦めたのだろう。


「わかりました。では、こちらの退職金は私が、責任を持って他の者に渡して参ります」


「頼むよ」


「はい、では失礼致します」


 天野さんは空になったカップとティーセットを片付け、一礼をしてから扉を開けてその場を後にした。

 ふぅー何とかなった。ここをクリアすればもう問題無しだ。天野さんが受け取ってくれなかったら、他の召使いさんもいい人ばかりだから、受け取ってくれないだろうしね。


「颯大様」


机に向き直そうとした時、そんな声がしたのでその方向を見ると部屋を出た天野さんがこちらを見ていた。


「どうしたの?」


「一つ言い忘れた事がございました」


「?」


 どうしたのだろうか? 一度、渋々でも納得してくれた案件を天野さんが覆すはずは無いと思うんだけど……。

そんな事を考えながら、天野さんが口を開くのを待っていると


「下着は可愛いフリル付きでございます」


――ドスッ! 再び放たれた天野さんのフォークを食らい、見事に椅子から床に落ちた。

満足そうな天野さんの顔をゆっくり閉まっていく扉の隙間から見て取れた。――パタン


「ま、まさかここで繋げてくるとは! って、関心してる場合じゃない! 天野さん、俺は君の主として言わなくちゃいけないことがある! 天野さん? 天野さん!カムバッークッ!!!」


 結局最後の最後で彼女のペースに巻き込まれてしまった。急いでドアを開けて、姿を探したが、天野さんの姿はまるで何もそこには居なかったかのように忽然と消えていた。

くそぅ、まるで忍者だ。天野さん……次の職場に慣れてくれたらいいけど。いや、天野さんより、家臣が心配。


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