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プロローグⅢ

 俺、衛藤颯大『えとうそうた』は人より特殊な家庭で生まれ、ここ間桜町の山林地のぶっちゃけ怪しげな家で育った。

 それは過去に魔法を生活の為にではなく戦いの為に使っていた時代に名を上げた魔王の一族だ。ぶっちゃけ言えば魔族である。

 なのでこの俺も魔族の血を引いているの確かだ。そう遠まわしに言うには訳がある。俺の爺さんの代から魔族の血は人間と混ざった。はっきり言えば人間の女の人と結婚したのだ。そして、俺の父親も人間の女性と結婚し俺が生まれた。ということで俺はほとんど人間と変わらない。というより人間寄りなのだ。

 魔王といえば第一印象が悪行を重ね世界征服を目論む悪の化身とされているが、それは大昔の話になる。

 簡単に言えば、曾祖父さんの代に最後の世界征服を目論んだらしい……らしいのだが、それは勇者を中心に組織された者たちにより阻止され、砕かれた。伝承によれば、魔王だし一回くらい世界征服にチャレンジしないとご先祖に馬鹿にされそうじゃん? という余りにも負ける気まんまんの軽い言葉が残されている。そして、どういうわけか、その代を皮切りに魔王一族による悪事というものがバッサリと無くなったとされている。う~ん、さすがは俺のご先祖様。なんとまぁ、シビアな考えの持ち主だ。

 魔族も魔族で次々と人間世界に溶け込んでいく者たちが増え、今となっては正式に魔族と判断されているのは魔王の一族である衛藤一家とその家臣達だけになった。なんとまぁ、絶滅危惧種という訳だ。

 そして、驚くべきは俺の父親は魔王の家名アルバトールを捨てて今の母方の衛藤家に婿養子として入籍をした。なので、この魔王の一族の筈の俺の名前が純日本人の名前になったということだ。

 歴史ある家名より、恋に生きるのが父さんの生き方なのだっ! と父さんは二カッと素敵な笑顔を見せてくれた。父さんは今も母さんに首ったけである。

 まぁ、父親の恋路でアルバトール家は滅びたが、魔王の一族というのが衛藤家に移行しただけで

魔王が居なくなった訳じゃない。ただ、俺が受け継いだ時に異変は起きた。


 儀式は成功したけど、魔王だという証の刻印が俺には受け継げられなかった。それは、俺の代で魔王の血は途切れたということらしい。


 つまり、魔族の王が消滅した事を表していた。俺の中には予想以上に魔族の血がなかったらしい。そして、魔王の一族とされていた衛藤家は事実上、普通の人として一般人になった。


なので、俺は魔王ではあるが、魔王ではないのだ。刻印が魔王と認めなかった。まぁ形式上は最後の魔王なんだけど、人間たちの基準は刻印があるか、ないか、だから。


そういうこともあり国からの監視もなくなり父さんは、真剣な顔でそれは(俺が知る限りの父さんの最後の魔王としての顔だった思う)俺を含め家臣達にこう言った。


『魔王の一族に忠を尽くした者達、今日ここに衛藤一族の解散を宣言する。各自、自身の人生に悔いのないように幸せに生き抜いてくれ』


泣く家臣達を確認してから、父さんは母さんの肩に腕を回して呑気さ丸出しの顔にコロっと変わったと思うと、こう付け加えた。

 

『というのうはカッコイイ建前なわけで、衛藤家の財政がヤバくてな。オメェら家臣に払える金がねぇーんだわ(笑)』


その時の凍てついた空気はおそらく今後一切感じられない貴重なものだったろう。あー怖かった。


いい潮時だわな。アハハハッ!! 盛大に笑う元魔王を見て愕然とする魔王一族の家臣達。それもそうだろう。まさか魔王の一族が滅んだ本当の理由が経済破綻だというのはかっこ悪すぎるしな。


『まぁアレだ。退職金みたいなもんは家具とか、絵画とか家を売り払う事で払うつもりだから、安心しな。それに関しては新しい魔王が責任を持って請け負う、後は颯大に任せた』


あははは、あの時は本当に泣きそうになった。その場を父さんと母さんは、父さんの『さらばだっ!』という言葉を残して息子を置いて行方暗ますわ。豹変した家臣たちに殺されないように均等に退職金?を払い。気づいたら俺の手元にはマジで全てがなくなったちゅー訳ですよ。


アハハハッ!! 絶対殺してやるあの親だけは……


という訳で、今の極貧魔王が出来上がったわけですよ。どうだ? アホらしいだろう?

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